「令和6年のトリプル改定」,「オンライン資格確認に係る機器を維持するための公的補助」,「外国人留学生に対するHPVワクチン接種」等について議論

 京都北医師会と府医執行部との懇談会が令和5年11月15日(水),京都ブライトンホテルにて開催され,京都北医師会から10名,府医から7名が出席。「令和6年のトリプル改定」,「オンライン資格確認に係る機器を維持するための公的補助」,「外国人留学生に対するHPVワクチン接種」をテーマに議論が行われた。

〈注:この記事の内容は令和5年11月15日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。〉

令和6年の診療報酬,介護報酬および障害福祉サービス等報酬のトリプル改定について

 令和6年度診療報酬改定については,すでに中医協において,10月から第2ラウンドとして本格的な議論が開始されており,今回,最も影響があるのは,改定の時期が4月改定から6月改定に後ろ倒しになったことであると考えている。
 これまで3月上旬に告示・通知が示され,4月までに医療機関やベンダーが改定作業を余儀なくされ,短期間に非常に大きな負荷がかかることが課題であったため,3月上旬の告示・通知は従前のまま,改定が6月となったことで,改定内容の周知や作業期間に時間的余裕が生まれる。日医は,この改定時期の変更によりベンダーが大きな恩恵を受けることから,保守費用やリース料などの引下げを求めている。なお,薬価改定は従来どおり4月改定であり,介護報酬の改定時期については現時点では未定である。
 次に,外来医療については,特定疾患療養管理料等の生活習慣病への対応が議論されたほか,外来管理加算の取り扱いについても議論の俎上に上がっている。支払側は,外来管理加算の算定要件が曖昧で評価の妥当性に疑問を呈しており,特定疾患療養管理料や地域包括診療加算等との併算定も理解しがたいとして廃止を主張している。これに対して,長島日医常任理事は,詳細な診察や丁寧な説明を全否定するもので,全く容認できないと猛反発し,「対象疾患が同じであれば医師の労力も提供される医療も同じだからまとめろ」という意見は暴論だと強く主張している。
 また,入院医療については,これまでと同様に7対1入院基本料の取り扱いが焦点となっており,平均在院日数の短縮や重症度,医療・看護必要度の評価項目の見直しなどによる厳格化の提案や,高齢者の救急入院受入れを問題視する意見が出されている。
 診療報酬改定に向けて,府医では基本診療料の引上げを近医連などの場で強く訴えるとともに,日医にも提言しているところである。物価高騰や光熱費等の上昇,スタッフの賃金アップ等に対応するとともに,新型コロナに限らず新興感染症への対応も含め,平時の感染症対策が重要であることから,多くの医療機関において適切な感染対策を講じるためにも基本診療料の引上げが必要であると考えている。
 府医としては,平成22年度改定で財源の制約を受けて,診療所の再診料が71点から69点(消費税対応で現在は73点)に理由なく引下げられたまま,現在に至っていることを一貫して問題視しており,元の点数に戻すことを強く主張している。
 しかしながら,財務省はトリプル改定への厳しい対応を求めており,一般診療所の医療費を受診延べ日数で除した「1受診あたりの医療費」を「単価」として,その「単価」が一貫して増加していると指摘した上で,2019年度から2022年度にかけて,近年の物価上昇率を超えた水準で急増していると主張し,診療報酬のマイナス改定,さらには診療所の初・再診料の引下げを求めたことに対し,松本日医会長は,受診延べ日数は年々下がっており,コロナ禍で急減して以降,十分に回復していないことと併せて,「1人あたり医療費」は近年の物価上昇率を下回っており,「1受診あたりの医療費」が上がったからといって経営状況が良くなったとは言えないと指摘し,コロナ禍で収入が落ち込んだ2019年度・2020年度をベースに比較することは極めて恣意的であると反論した。
 府医では,引続き改定の議論の状況や,医療保険制度に係る政府の動きなどについて,医報等により情報提供に努める考えである。
 また,今期より府医役員と外部の識者などで医療に係る様々な課題について議論する場として会内に医療政策会議を設置した。今後,議論した内容を会員の先生方にもお知らせするとともに,識者による講演会なども企画し,医療制度などに理解を深めていただく機会を設けたいと考えている。

オンライン資格確認に係る機器を維持するための公的補助について

 オンライン資格確認の義務化にあたって,費用補助は導入時のみで,保守費用に対しては補助されておらず,オン資確認導入医療機関が算定可能な「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」についても十分ではない状況であることから,府医としても補助が必要であると考えている。
 システム上のトラブルも数多く報告されており,医療機関のみならず,広く国民にとっても安心して利用できる状況とは言い難いのも事実であるが,国は医療DXを推進する姿勢を明確にしており,今後,電子処方箋,さらには電子カルテ情報の標準化を進め,全国医療情報プラットフォームを構築するとされている。
 府医としても,医療DXに関する考え方は日医と同様であり,医療DXそのものには反対しないが,それにより医療提供に混乱・支障が生じては本末転倒であって,医療現場の状況をよく確認しながら有効性と安全性を確保した上で,利便性・効率性を目指すべきであると認識している。この立場からも,費用負担が医療提供の支障となることがあってはならないと考えており,オンライン資格確認に関する会員アンケートを実施し,その実態を日医に報告したところである。
 サイバーセキュリティに関しては,システム全体のみならず,個々の医療機関においても懸念される状況であり,特に診療所レベルではインフラ面でも知識面でも対応が難しいと考えている。日医は,サイバーセキュリティ対策を重要な課題と捉え,「サイバーセキュリティ支援制度」を整備し,医療機関をサポートする姿勢を示しているが,すべての医療機関が安心して医療DXに参画できるよう,国策として推進される医療DXに係る費用は全額,国が負担すべきであると明確に主張している。医療関係者の総力を結集し,日医を通じて政府に医療現場の状況をしっかり理解してもらうことが重要である。

外国人留学生に対するHPVワクチン接種について

 定期予防接種については,予防接種法上,当該市町村に居住する者に対して実施する責任を負っており,基本的には住民票の登録がある者とされている。留学生等の外国籍の方(中長期間在留する方)についても,住民票の登録が行われるため,予防接種の対象年齢の方は,制度上,接種を受けることが可能である。
 一方で,接種にあたっては,コミュニケーションを取れることが重要であり,十分でない場合,万が一,有害事象が発生した際にもトラブルに発展する可能性が高くなることも危惧される。十分な説明や理解が難しい場合は,予診票上の医師署名および本人自署ができないものとなるため,結果的に接種が行えないことも考えられる。
 医療機関に予約等の相談があった際,十分な説明や理解が難しいことが予想される場合は,接種希望者に「知人などの通訳」といった理解できる方法があるかを確認の上,そのような対応が難しい場合は,接種できない旨をお伝えいただく必要がある。
 本来の接種対象(小6~高1)に戻るまで,当面は各医療機関でこういった対応が必要になるが,可能な限り予防接種事業にご協力いただくようお願いしたい。

保険医療懇談会

 基金・国保審査委員会連絡会合意事項について解説するとともに,個別指導における主な指摘事項について資料提示した。また,療養費同意書の交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書の発行に理解と協力を求めた。

2024年1月15日号TOP