亀岡市・船井医師会との懇談会 1.11 ガレリアかめおか

「このままどんどんジェネリックを増やしていく方向だけでよいのか」,「実効性のある医師偏在対策はあるのか?」,「医薬品の安定供給と適正使用」について議論

 亀岡市・船井医師会と府医執行部との懇談会が1月11 日(土),ガレリアかめおかで開催され,亀岡市医師会から10 名,船井医師会から7名,府医から5名が出席。「このままどんどんジェネリックを増やしていく方向だけでよいのか」,「実効性のある医師偏在対策はあるのか?」,「医薬品の安定供給と適正使用」について,活発な議論が行われた。

このままどんどんジェネリックを増やしていく方向だけでよいのか

推進の意義・目的(厚労省の視点)

 後発医薬品(ジェネリック医薬品)は,先発医薬品と治療学的に同等であり,一般的に研究開発に要する費用が低く抑えられることから,先発医薬品に比べて低価格である。 後発医薬品を普及させることは,患者負担の軽減や医療保険財政の改善に資するものであり,ひいては限られた医療資源の有効活用を図り,国民医療を守ることにつながる。

国の取組

 厚労省は,ジェネリック医薬品の数量シェア増の目標達成に向け,平成19 年10 月に「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」を発表。①安定供給,②品質確保,③後発品メーカーによる情報提供,④使用促進に係る環境整備,⑤医療保険制度上の事項の5項目について国および関係者が取組むよう策定。さらに,平成25 年4月に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を公表し,上記アクションプログラムの5項目に加え,⑥ロードマップの実施状況のモニタリングを策定し,この結果に応じて追加施策を講じるという流れになっている。また,⑤の一環として,平成30 年度診療報酬改定では,ジェネリック医薬品の使用促進に一定の効果があるとして,後発医薬品使用体制加算等の見直しと点数引上げを実施。薬局においても同様に診療報酬を改定した。

現状

 上記施策の効果もあり,後発医薬品の数量シェアは年々増加(2019 年9月:72.6%)しているが,諸外国と比較するとその割合は少ない。厚労省は2020 年9月までに数量シェア80% 達成の目標を掲げている。
<厚労省の調査結果(H29.6)>
・外来後発医薬品使用体制加算の算定状況 (加算1と2を合算)
院内処方の診療所:22.4%,
院内処方率が80% 以上の診療所:28.2%
・医療機関が後発医薬品を採用の際に最も重視 することは,①メーカーの品質への情報開示, ②先発医薬品と同一の適応症,③十分な在庫 確保-が多数を占めている。
・院外処方せん発行の施設では,後発医薬品を 「積極的に処方する」,「薬の種類によって積 極的に処方する」,「患者によって積極的に処 方する」の3つを合わせると80% 超。
・一方で「後発医薬品を積極的に処方しない」 と回答した医師(約9%)の85%以上がそ の理由の一つに「品質に疑問がある」と回答 した。
・後発医薬品に不信感を抱いたきっかけとして, 「先発医薬品との効果・副作用の違い」,「処 方していた後発医薬品の品切・製造中止」と の回答が多数あった。

安全性の問題

 昨年のラニチジンの発がん物質混入の件やセファゾリンの製造国,供給欠損の問題について,地区から,情報の少なさや安全性への疑問等,意見が出された。これについて府医は日医の見解を次のように述べ,今後も安全性の担保について厳しく追及していくと説明。
①  後発医薬品の品質有効性,安全性は先発医薬品と同等という説明を受けて日医は促進政策に協力してきた。しかし今回のように品質や患者の安全が担保されない状況においては,安心して医療が行えない。
②  厚労省の医薬品医療機器統制会議と制度部会において,引続き患者の安全を守る視点で新薬から製剤まで医薬品の製造・流通に関係する企業の責任についても厳しく議論を行っていく方針である。

実効性のある医師偏在対策はあるのか?

 平成31 年4月1日の医療法・医師法改正で医療計画に新たに「医師確保計画」および「外来医療」に関する事項の記載が求められることになったとして,京都府の医師確保計画(中間案)と,日医・地域医療対策委員会中間答申の概要を説明した。

京都府医師確保計画(中間案) 

 国が示した医師確保計画策定ガイドラインに基づき,京都府が医師確保計画(中間案)を策定。医師少数区域の丹後医療圏,南丹医療圏を医師確保の重点区域とするとともに,中丹医療圏,南丹医療圏のへき地診療所の周辺地域を医師少数スポットとして指定。これらの区域の医師確保のための短期的,長期的施策の方向性を定めた。
 外来医療についても,①診療所の充足状況等を可視化し情報提供,②在宅医療等の研修を実施-など医師偏在対策への取組みを策定した。
 京都府では,他府県と比べて比較的医師会の意見が取り入れられている。2月開催予定の医療審議会で最終審議→府議会で最終答申→策定となる。

日医・地域医療対策委員会中間答申

 平成30 年11 月の第1回委員会以来,検討を重ねた結果を各地域の現状を踏まえて取りまとめられており,「医師確保計画策定ガイドライン」,「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン」に関する要望書を提出。概要は以下のとおりである。
 「医師偏在指標」,「外来医師偏在指標」は制約のある条件下で策定されたものであり,その「指標」に基づいて都道府県が画一的,機械的に医師確保計画を立てることは地域の実情にそぐわない懸念がある。結果的に現在の医療提供体制を後退させかねない。
 「医師偏在指標」ならびに「外来医師偏在指標」はあくまでも参考値であることを改めて確認し,それぞれの地域の取組みを制限するものではないことの明記を要望する。

質疑応答

◇「 地域枠で府内の大学に入学しても,制限をかけないと研修時のマッチングで他府県へ流出し,医師不足地域には医師を確保できないのではないか」と質問が出された。
 今後の策として緩やかな制限をかけるのか,効果的な誘導策(学費等)を検討するか,今後の医師確保計画に盛り込まれていくと考えられる。少数スポットへの医師確保は,大学個々でなく京都全体で集約して検討すべきであると回答した。
◇「 全国の病院を統合する政策が断行されようとしており,京都府内で3つ,市内で1つの病院が名指しされている。医師偏在対策と逆行しており,郡部の在宅医療は守られるのか」と意見が出された。
 日医は猛反発しており京都府知事も反対の立場を取っているが,国は計画を進める方針であり,法律等制定されれば従わざるを得ない。そうならないように医政活動が重要であるとした。

医薬品の安定供給と適正使用について

  医薬品(静注抗菌薬,解熱鎮痛剤,ワクチン等) の供給が不安定な状態が続いており,現在府医で実施している対策を説明。また,経口抗菌薬の適正使用や,外用薬のヒルドイド等の保険適用外使用や適正使用量の問題について説明した。

医薬品の安定供給対策

  ワクチンに関しては,年一回のワクチン確保検討会で京都府,メーカー,卸業者と議論しているが,ワクチンの供給不足は毎年議題に取り上げられている。本年度はB型肝炎ワクチン,インフルエンザワクチン,MR ワクチンの供給不足について議論。特にB型肝炎ワクチンについては厚労省の見積もりが甘く,定期接種以外にも任意接種(実習生,病院職員など)があり,定期接種用が不足している。これらの現状に対して,府医はメーカーと京都府に不安のない供給計画とワクチンの確保を要望するとともに,京都府に対して定期接種の期間延長を要請中であると説明した。

  解熱剤,抗生物質の薬剤に関しては,確保検討会は現在未開催であるが,アセトアミノフェンのような供給停止の問題は絶対に避けねばならない。このようなケースが増えれば開催も検討するので,事例があれば報告してほしいと要望した。

医薬品の適正使用について

  経口抗菌薬の不適切な使用等を背景として,薬剤耐性菌が増加。耐性菌による死亡者は年8,000 人以上に上っている。厚労省では2016 年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」を立ち上げ,医療機関に対しては適正使用への対策が求められている。

  アクションプランの成果指標である抗菌薬販売量(DID)は減少傾向だが,2020 年度の目標達成にはさらなる対策が必要である。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌,フルオロキノロン耐性大腸菌の分離率も目標値達成は厳しく,これらの菌の誘導には特に経口薬のセファロスポリン,キノロン, マクロライドの使用が関与している。また,日本で使用される抗菌薬の約9割が経口薬であり,そのうちこれら3つの薬剤の使用割合が極めて高い。

  外来での抗菌薬適正使用への取組みとして,「抗微生物薬適正使用の手引き」を改訂し,乳幼児への項目が追加された。また平成30 年度診療報酬改定において,小児抗菌薬適正使用支援加算の新設と,かかりつけ医機能を評価した管理料等の要件に,上記の手引きを用いて抗菌薬の適正使用の普及・啓発を行うことが追加された。

  府医ではアンケートを実施し,外来での「かぜ診療」での抗菌薬への意識や使用状況等を調査。結果集計後,感染症対策委員会等で具体的な対策を検討する意向を示した。

外用薬の保険適用外使用

  以前から中医協でもヒルドイド等の美容目的での使用や適正使用量について議論されており,「保険適用除外にすべき」との意見も出ている。前回の中医協委員会でも問題になっていたが,ヘパリン類の保険適用は継続,処方量の制限も見送りになった。

  どの程度の量が美容目的になるかは,最終的には審査に委ねられているが,現在の処方量の上限は,都道府県によって開きがある。美容目的での処方が散見される状況が続くと,保険適用除外になる可能性もあり,本当に必要な患者に必要な量が処方できなくなる。適正使用は地域全体で取組む必要があると説明した。

質疑応答

◇「 兵庫県の急病診療所では,複数の医師が同じ 診療に対する採用薬を制限したり,医師ごとの薬の使用状況を調査,フィードバックして,医師間で共有している。京都市の急病診療所で同様の取組みはあるのか」と質問が出された。

   休日診療の抗菌薬処方の総量,内容の把握等は可能だが,薬の規制まではしていないとして, 多剤の処方は確かに問題もあるので,今後検討すると回答した。

保険医療懇談会

  支払基金と国保連合会双方における審査の平準化をはかるために開催している「基金・国保審査委員会連絡会」の状況について解説するとともに,個別指導における主な指摘事項についての資料を提供した。

  また,療養費同意書交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書発行に理解と協力を求めた。

2020年4月15日号TOP