2020年4月15日号
左京医師会と府医執行部との懇談会が1月18 日(土),ウェスティン都ホテル京都で開催され,左京医師会から32 名,府医から8名が出席。「商業施設内での診療所開設」,「乳がん検診と特定健診の出務医師」,「診療報酬改定の見通し」について,活発な議論が行われた。
商業施設や医療モールなどでの医療機関の新規開業については,医療機関の経営コンサルタント(デベロッパー),金融機関,事業主(地主)の思惑が先行して,建物などが先にでき上がるため, 地区医へ入会希望の医師が出てきて初めて知ることとなる状況は府医でも同様で,仮にイオンモールなどの大型ショッピングモールであったとしても,事前の情報入手は厳しいと現状を説明。
平成28 年度以降,開業医の府医入会率が約70%という事実は,開業に際して医師会には入会しなくてもよいという指導を行っているコンサルタントが相当数いるのではないかとの考えを示した。
結果として,過大な投資による経営困難や,不適切な名称による地域医療の混乱などを招く懸念があるため,周囲に開業を考える医師がいる場合には,必ず事前に地区医に相談がなされることが望ましい。また,府医では融資の斡旋,個人医療機関の行政手続き代行などの開業支援を行っているとし,府医,日医にも入会するよう適切なアドバイスを依頼した。
大型ショッピングセンターや医療モールでは, 常に不特定多数の利用者が訪れるため,感染症対策の重要性は高いとしつつも,自由開業性の原則の下,不特定多数の人が利用する施設での開業規制はできないと回答した。
大型ショッピングセンターや医療モールでも, 基本的な感染症対策の講じ方は同じであり,各医療機関で院内感染対策マニュアル作成など必要な対策を講じるなど適切な対応を依頼した。
地区からは,大型商業施設内に医療機関があるために一般客の他に,感染症患者が出入りすることで,感染症が拡大することに対し危惧する声が挙がった。また,同施設内でパンデミックが起こり,施設閉鎖となれば,医療機関が経営困難に陥る危険性が高く,医療機関に対して責任転嫁された場合には今後同地での開業が難しくなるのではないかと意見が出された。
府医からは,商業施設内だけでなく,医療機関内での感染症対策も同様に検討していきたいとの考えを示した。
左京区花脊,鞍馬,広河原,久多地区における乳がん検診と特定健診の出務医を1名で兼ねることについて,先生方の負担を考えると大きな問題と認識しており,京都市に対応を求めてきたと説明。
放射線技師法に医師の立会いが義務付けられているが,京都市から厚労省へ検査種別ごとに1名必要かと問い合わせた結果,「体制までは定めない。特定健診,乳がん検診を実施する上で問題がないのであれば可能」との回答があった。
それを受け,京都市(乳がん検診担当:健康長寿企画課,特定健診担当:保険年金課)で検討され,要望があれば1名の出務で可とするとの回答を得たと報告した。
地区から,「先日,京大の防災訓練に参加し, 院内のBCP がメインであったが,災害時には, 京都大学,左京区,左京医師会が協力しなければならない。防災面でも京都市に動いてもらえるよう依頼してほしい」と要望が出された。
府市協調で様々な検討が進められているものの,他の政令都市でも同様であるが役割分担の問題では,災害発生時の人的被害に対する救済支援は都道府県が担い,公衆衛生は市町村が担うので, 訓練にどこまで行政の関わりが得られるかは難しいと回答した。
また,熊本地震の際は,熊本市が政令指定都市になったばかりという理由はあったが,熊本県が先導していたので,災害に境界線はないため,広域で京都府が全体を見ながら対応するのが望ましいとの見解を示した。
令和元年12 月17 日, 政府は, 令和2 年度の診療報酬について,改定率を診療報酬本体+0.55%,うち0.08%は救急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応とすることを決定。本体0.08%分の公費約126 億円とは別に地域医療介護総合確保基金から公費約143 億円が充てられる。薬価・材料価格は▲ 1.01%(薬価▲ 0.99%, 材料価格▲ 0.02%)とされ,全体ではマイナス改定となった。
基本認識として,①健康寿命の延伸,人生100 年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現,② 患者・国民に身近な医療の実現,③どこに住んでいても適切な医療を安心して受けられる社会の実現,医師等の働き方改革の推進,④社会保障制度の安定性・持続可能性の確保,経済・財政との調和を掲げ,基本的視点には「医療従事者の負担軽減,医師等の働き方改革の推進」を重点課題に位置付けた。
具体的方向性では,医師等の長時間労働などの厳しい勤務環境を改善する取組みの評価のほか, かかりつけ医の機能の評価や地域包括ケアシステム推進のための取組みなどが示されている。
議論の整理は,上記の基本方針に即して項目立てされ,①では,救急医療体制における重要な機能を担う医療機関への新たな評価や医師等の勤務環境改善に向けた常勤配置に係る要件・専従要件の見直しなどが挙げられている。
②では,かかりつけ医機能の評価として,「地域包括診療加算」や「小児かかりつけ診療料」に係る要件見直しのほか,紹介元医療機関,学校医への情報提供を新たに評価することなどが挙げられている。特に遺伝性乳がん卵巣がん症候群の症状である乳がんや卵巣・卵管がんを発症している患者におけるBRCA 遺伝子検査,遺伝カウンセリング,乳房切除および卵巣・卵管切除について評価するなど,予防的な評価がされるのは初めてである。
③では,複数の医療機関が連携して行う訪問診療料の6か月制限の緩和や電話等による再診時に救急医療機関の受診を指示した際の必要な情報提供について「診療情報提供料」の算定可能などが挙げられている。
④では,後発医薬品使用体制加算等の要件・評価の見直しや一般名処方加算の評価見直しのほか,ポジトロン断層撮影を受けるための他医療機関の受診の評価の見直しなどが挙げられている。特に超音波検査について,胸腹部の断層撮影法で対象となる臓器や領域により検査の内容が異なるので実態把握のために要件見直しがなされ,主な所見等を報告書または診療録に記載するよう要件が見直されるので注視が必要である。
中医協ではこれらの項目に基づいた議論を経て,2月中旬を目途に答申予定である。
地区から,「妊婦加算が廃止されたが,在宅医療の補助金のように診療報酬以外で手当てをして患者負担が増えないような施策はいかがか」と意見が出された。
妊婦加算については,ルールを無視した廃止であると苦言を呈し,小児の医療費と同じように妊婦についても公的な補助で対応を行っているところもあり,何らしかの手当ては付けるべきであり, 今後は必要なところがきちんと手当てされるようメリハリを付けることがポイントであるとし,負担と給付の議論は避けて通れないとの考えを示した。