勤務医通信

新型コロナウイルス感染について(当院の対応を中心に)

京都岡本記念病院 腎臓内科

鹿野 勉

 今回の新型コロナウイルス感染に関して,当院の対応も含めて思ったことを書かせていただきます。
 日本では,2020 年2月3日にダイヤモンド・プリンセス号の横浜入港で,世間のコロナに対する注目度は一気に上がりました。京都ではまだ孤発例があったぐらいでしたが,中国などの状況をみて,2月下旬,院長を本部長としたコロナ対策本部が院内に立ち上がりました。
 私は医局長の立場で当初から本部会議に出席していましたが,始めはそれほど身近にコロナを感じてはいませんでした。その後3月に入ると,大阪のライブハウスでのクラスターや,イタリアでの都市封鎖が報道され,これは本気で対策しないと大変なことになるとの認識を持つようになりました。
 3月初旬に,新型コロナ感染症疑いの患者を外来診察するにあたり,受診者からのウイルス持ち込みによる院内感染を防ぐ目的で,屋外の職員駐車場の一画にプレハブ小屋を建て,そこで疑いのある患者および発熱患者を診察する専用外来を開設しました。プレハブ診察室には,エアコンを設置し,電子カルテも使えるようにしました。その後,ほとんど症状のない疑い患者の診察も増え,症例によっては,感染予防の観点から専用外来の目の前の駐車場に止めた自家用車内で患者を診察し検体採取を行うドライブスルー診察を始めました(その様子は4月後半から5月にかけて何度かテレビの取材を受け,放送もされました)。
 4月初めに,初めてコロナ感染を強く疑う肺炎患者が受診し,入院が必要な状態でしたが,当院にはまだ十分隔離できる病床が整っていませんでした。幸いその患者のかかりつけの他院が受け入れてくださることとなり,当院の救急救命士2名と私が宇宙服のようなFull-PPE 姿で救急搬送しました。この経験もあり,当院でもコロナ患者の入院を万全に行うことが必要との認識で,4月20 日から8床のICU のうち,陰圧室2床をコロナ専用ICU 病棟とし,他の6床は隣のHCU に機材を移してICU として運用することとなりました。4月21 日に初めて当院での診断例が入院し,その後,他院の院内発症患者を受け入れるなどで数例の入院を受け入れました(7月現在は,新型コロナウイルス感染患者の減少を受けて通常のICU に戻しています)。
 それ以外の対策としては,病院出入り口での検温実施,入院患者の面会全面禁止,外来患者の電話再診,学生実習受け入れ中止,新研修医を含めた新規採用希望者のWEB 面談開始,検診・人間ドックを中止し検診部の職員にコロナ対策に従事してもらう等の対策を行いました。
 新型コロナPCR 検査は,当初は民間の検査会社に委託し,大型連休前には新規入院患者全員に新型コロナPCR を行うようにしました。その後,元々PCRに熟練した技師が就職しており,機器もそろっていたため,5月下旬には院内で検査する体制が整いました。入院時全例のPCR 検査は現在も継続しています。


 原稿を書いている今は7月中旬です。当院では5月1日を最後にPCR 陽性者はいなかったのですが,7月になり,またPCR 陽性者が見られます。明らかに第二波のようです。この原稿が掲載される8月に第二波が収まっているのか,または医療崩壊に向かっているのか,わかりません。ただ,私たち医師は,目の前の患者を救うために最善のことをするしかないと思います。今回のコロナに対するかかわり方で,とても納得できた同僚の医師の考え方があります。それは,コロナ禍を災害と考えたとき,我々医師全員が被災者なので逃げられないという考え方です。これは,コロナ患者を担当する医師をどうやって選ぶかという時の言葉です。コロナ診療が地震時のような災害救助医療なら,自ら望まなければ無理に参加しなくてすみます。しかし,現状は,各施設が被災施設であり,京都で医療に携わる者はすべて自分たちでこの災害に立ち向かわなければなりません。どこかに助けに行くわけではない,逆に他府県も同じ状況なので,助けにも来てくれないということです。この考え方を聞いたとき,自分の中で,この未曾有の災害において医療者すべてが当事者,被災者であり,一人一人がするべきことをしないといけないと納得できたのでした。

Information

病院名 京都岡本記念病院
住 所 京都府久世郡久御山町佐山西ノ口100 番地
電話番号 0774-48-5500
ホームページ https://www.okamoto-hp.or.jp/oka2/

2020年8月15日号TOP