2020年12月15日号
第51 回全国学校保健・学校医大会が11 月14日(土)に富山国際会議場(富山市)で開催された。本年は昨今の新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ,ハイブリッド方式(現地開催およびWeb 開催の併用)にて開催され,府医からは現地参加6名,Web での参加が3名であった。
午前は「からだ・こころ(1)」,「からだ・こころ(2)」,「からだ・こころ(3)」,「耳鼻咽喉科」,「眼科」の5分科会で合計34 の演題発表が行われ,午後は式典のあと,「健全な学校生活にむけて~医療と教育の連携~」をテーマとしたシンポジウムと,緊急メッセージとして「新型コロナウイルス感染症から子どもたちを守るために~本当の敵はどこにいるのか~」と題した,富山大学医学部小児科学講師 種市尋宙氏からの講演が行われた。氏は疾患としての問題を一切認めなかった症例から子どもの復学に向けての問題点を提起し,共通認識や相互理解を深めることの重要性を説き,子どもたちの本当の敵はウイルスなのか社会なのか,メディアなのか医師なのか教師なのかという視点からの新型コロナウイルス感染症への取組みを紹介した。
午後からは式典に続いて「健全な学校生活にむけて~医療と教育の連携~」をテーマとしたシンポジウムが行われた。シンポジウムでは,富山大学医学部長・学術研究部医学系小児科学講座教授足立雄一氏が「学校における食物アレルギーの最近の話題」と題した基調講演を行った。講演では対応すべき食物の多様化や複数の食物にアレルギーのある児の増加等,教育現場においてのアレルギー対応が大きな負担となっている現状が述べられた。続いて学校医として,多大なストレスにさらされる学校関係者の不安を緩和するための医学的見地からの指導の必要性等,有意義な知見が紹介された。
その後,4人の演者による学校保健に関する問題が紹介され,まず,富山県立中央病院小児科部長の五十嵐登氏が,「子供の健康管理プログラム」の事後対応マニュアルを策定し,その運用結果の解析と課題を報告した。
次に,JCHO 高岡ふしき病院小児科部長 宮崎あゆみ氏からは,「高岡市小児生活習慣病予防健診の実際と全国実態調査報告」として小児生活習慣病予防健診の実際についての紹介があり,近年の肥満児の増加傾向と昨今のコロナ禍による運動不足への懸念が指摘された。また,全国の郡市区医への小児生活習慣病予防健診実施に関するアンケート結果の分析報告を基に,「先制医療」の考え方を以て全国一律の実施を求める意見が述べられた。
富山県立中央病院小児科部長 藤田修平氏は,「学校生活における児童生徒の心原性失神」について述べ,運動時や運動直後の失神発作は命にかかわるような失神の可能性が高いと認識することが重要とした上で,学校心臓検診における心疾患の適切な抽出と,いざというときの速やかな心肺蘇生処置の必要性を強調した。
最後に,富山県議会議員・富山県医常任理事 種部恭子氏より「子宮頸がん予防ワクチン接種率向上に向けた取組み」が紹介され,市町村保健担当者向けの研修会や自治体議員への勉強会,医師会からの要望書や請願によって対象者への通知が再開されたことや,行政を動かすことの必要性から自身も県会議員として立候補に至ったことについての報告があった。また,接種を躊躇する保護者の後押しのためのリーフレット作成による啓発の効果もあり,県内の接種率がわずかながら向上している結果が示され,今後のさらなる接種率向上を目指すことが述べられた。
続く特別講演では「神の鳥,ライチョウを未来へつなぐ」と題して富山市ファミリーパーク園長の石原祐司氏による特別講演が行われ,来年度の開催県である岡山県医会長からの挨拶を以て第51 回大会は無事終了した。