2020年12月15日号
京都大学 循環器内科
木村 剛
第84回日本循環器学会は新型コロナウイルス感染拡大のためにオンライン開催を余儀なくされました。7月1日から3週間にわたり事前収録を行い,7月27日からは“The Week for JCS 2020”として1週間のライブ開催を行いました。一般演題も含め対面で予定していたほとんどのセッションを実施するということで,737セッションという史上空前の規模のオンライン学術集会となりました。準備の過程ではオンラインでスムーズに発表できるのか,議論は盛り上がるのか,インターネット回線やサーバーはダウンしないか,どれだけの方にご参加いただけるのかなど不安だらけでした。しかしながら蓋を開けますと参加登録者総数は16,800人超と予想をはるかに超える皆様にご参加いただきました。またオープニングセレモニーは1,900名に及ぶ皆様にご視聴いただいたことをはじめ,心房細動アブレーションの適応を考えるセッションは夜9時前の開始にもかかわらず聴講者は900名におよび,その他トップテンのセッションはすべて700名以上の皆様にご視聴いただくなど,多くのセッションで従来の対面開催の学術集会に比べ遥かに多くの皆様にご視聴いただきました。情報拡散という意味でオンラインの威力をまざまざと見せつけられました。またオンラインには,忙しい診療の中で学会に行く必要がなく,スライドは見やすく,オンデマンド配信では巻き戻しも含めて繰り返し視聴できるなど多くのメリットがあることが良く解りました。今後はオンライン学術集会を進化させることが後戻りのできない方向性であると強く感じました。一方,参加者からは久しぶりの学会に参加している感覚を楽しみつつ,新たな情報が収集でき,今後の診療,研究に刺激を受けたという嬉しい反応をいただきました。
JCS2020で打ち出したキーワードはChange Practice,適応を考える,Shared Decision Making,患者の価値観尊重,ライフスタイルを変える,社会への情報発信などでした。今後,我々はこれらの実践をミッションとして継続していかなければなりませんが,JCS2020は,僭越ですが,少なくともその先駆けの役割を果たすことができたのではないかと考えております。
新型コロナウイルス感染拡大で,必要なことにも,したいことにも大きな制約を受けている苦しい時代であり,また,病院経営の現状が想像以上に厳しいということも確認されました。JCS2020における議論を通じて,我々,医療従事者はコロナ診療,救急医療,国民の健康増進に必要不可欠な医療を粛々と実践しなければならないということを改めて強く認識いたしました。
Information
病院名 京都大学医学部附属病院循環器内科
住 所 京都市左京区聖護院川原町54
電話番号 075-751-4255
ホームページ http://kyoto-u-cardio.jp/