2020年12月15日号
2020年11月30日
京都府医師会新型コロナウイルス感染症対策チーム
新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の6月下旬からの第2波は,8月第1週をピークとして一旦収まる様相を見せていたが,ゼロになることがなく,10月以降に増加傾向となり,11月になってから感染者数が漸増し,第3波といえる感染拡大の状況である。特に,北海道,東京,大阪,愛知においての増加が顕著で,全国的な感染増加に繋がっている。クラスターは,歓楽街以外に,会食や職場,医療機関や福祉施設等の事例があり,多様化や地域への広がりがみられる。京都府においては,特別警戒基準を超えた。新型コロナウイルス感染症対策分科会(分科会)は11月下旬から約3週間という短期間での感染拡大の沈静化に向けた提言を政府に対して行った。
11月1日から集合契約医療機関を「診療・検査医療機関」として京都府が指定し,発熱患者をかかりつけ医が診る医療体制がスタートした。従来の帰国者・接触者相談センターは解消して新たに「きょうと新型コロナ医療相談センター」となり,これらに合わせて京都府・医師会京都検査センター(府医PCR検査相談センター)の運営方法が変更となった。かかりつけ医のない発熱患者が漏れなく診療,検査を受けることができるための方策を試行中である。
COVID-19ワクチン開発が進み,mRNAワクチンの2社が臨床3相試験の結果で高い有効性があることを発表し,今後の実用に向けて動き始めている。日本においての接種体制を整える準備が間もなく始まることになる。
11月の1か月間の動向について述べる。
なお,本文中に記載した数値や対応策等は,11月30日時点でのものであり,今後の動向により変化することを予めお断りしておく。
夏の感染拡大は収束へ向かうことなく横ばい状態であった。11月以降に新規感染者数の増加傾向が強まり,2週間で2倍以上の伸びとなり,過去最多の水準となった。大きな感染拡大が見られない地域もあるが,特に北海道や首都圏,関西圏,中部圏を中心とした顕著な増加が見られ,全国的な感染拡大に繋がった。特に東京都は500人を超える日が11月下旬に目立った。感染拡大のスピードが早まり,急速あるいは爆発的な感染拡大に繋がる可能性があり,極めて厳しい状況である。検査陽性者数は,11月28日の2,674人がピークでその後減少傾向がみられた。但し,PCR検査実施数の関係で日・月曜は陽性者数が減り火曜から増加に転ずることを今までも繰り返しており,11月29日30日に減少していることは今後の減少とは言えない。12月に再度増加する可能性があり油断できない。
政府が4段階(ステージ1~4)で定める6つの感染状況の指標(病床利用率/療養者数/陽性率/1週間の感染者数/感染者数の前週比/感染経路不明者の割合)は,大都市圏を中心に悪化が目立った。
11月1日の全国の実効再生産数は1.15であったが,その後も1.1~1.4前後が続いていた。感染拡大地域の北海道,東京,大阪,愛知での実効再生産数も同様の数値で推移しており,2.0を超えていなかった。12日の1.42のあと漸減し29日1.01,30日0.97となった。感染拡大が続けば12月には再び1を上回ると思われる。
感染拡大の原因となるクラスターは,地方都市の歓楽街に加えて,会食や職場および外国人コミュニティー,大学生などの若者,医療機関や高齢者施設などにおける事例などの多様化がみられ,地域への広がりに繋がっている。また潜在的なクラスターが想定され,感染者の検知が難しい「見えにくいクラスター」が感染拡大の一因になっていると思われる。こうした感染拡大の要因を断定することは困難であるが,基本的な感染予防対策がしっかりと行われていないことや,人の移動の増加,気温の低下による影響も考えられる。
人の移動がウイルス拡散に影響を与えているという観点から,政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会(分科会)は11月20日に,感染予防を徹底できない場合は,感染拡大地域との往来を自粛するよう呼びかけた。分科会の尾身会長は25日の会見で,「無防備な人の接触を減らすという重要な対策が十分に共有されていなかった」ことが,感染が拡大し続ける理由のひとつとして述べ,「皆が行動を変えれば感染拡大を下火にできる。この3週間に集中して都道府県が政府と連携して対応してほしい」と短期決戦を呼びかけた。
感染者の中で60歳以上の占める割合は10月からほぼ横ばいで推移しているものの,感染者数は増加しているため,入院者数・重症者数が増加してきた。そのため病床占有率の上昇が続いており,このままの状況が続けば,第1波の時と同様に予定された手術や救急医療の受入等の制限に結びつくなど,通常の医療との両立が困難になることが懸念される。病床の数字以上に逼迫しているのは,人的体制の不足であり,医療現場のみならず,保健行政の人的体制の不足は深刻である。感染者の積極的疫学調査とクラスター対策により,感染拡大地域での保健所の業務が激増している。これらの人手不足の懸念があるため,26日に菅首相は,感染拡大地域に派遣する保健師ら専門職を1,200人確保したこと,各地に派遣して応援することを表明した。
京都府内の感染者数は10月と比べて倍増し,その4分の3以上が京都市内の陽性者であった。11月11日~17日の新規感染者が1日当り24.1人となり,特別警戒基準に達した。24日には最多の1日99人の検査陽性者となった。感染経路不明者の割合が37.4%から42.3%に増加した。第1波(1月30日~6月15日)では高齢者の割合が高かったが,夏から秋(6月16日~10月21日)にかけて若年者の割合が増加した後,11月には高齢者の割合が再び増加している。20代以下の若年層はまだ30%程度を占めており,京都市では特に20代の大学生の感染が増加している。また大阪府の陽性者との接触者数が増加していた。京都府,京都市とも70代にピークがみられるが,病院や高齢者施設等での集団感染が複数発生したことによる。また同居家族からの感染が増加しており,この家庭内への感染持ち込みの原因は会食が最多であった。11月の重症者数は累計5人で,死亡者は7名であった。
京都府の実効再生産数は,上旬~中旬は1.5~1.1で徐々に微減傾向を示し,25日以降は1.0をわずかに下回る数値となった。しかし30日に1.78と急増しており,12月に再び感染者数が増えることが推察され,注視しなければならない。
京都府陽性者
京都市陽性者
1.分科会から政府への提言
11月20日の分科会の提言を受けて,営業時間短縮やGo Toトラベル事業の一時停止について,政府と都道府県での迅速な対応が求められた。しかしながら,第1波の段階よりも医療提供体制は着実に向上しているとはいえ,感染拡大のいくつかの都道府県では医療提供体制と保健所への負担が深刻化しており,すでにステージⅢ相当の対応が必要であり,介入が遅れるほどその後の対応の困難さや社会経済活動への影響が甚大となるため,迅速かつ集中的な対応が求められる。分科会は,短期間(3週間程度)で感染拡大を沈静化させるため,11月25日に政府へ以下の提言を行った。
Ⅰ.この3週間に集中して都道府県は政府と連携してステージⅢ相当の対策が必要な地域には早急に強い措置を講ずるために,
(ア)飲食店の営業時間の短縮要請
(イ)夜間の飲食店等の自粛
(ウ)必要な感染防止策が行われない場合は,ステージⅢ相当の対策が必要な地域とそれ以外の地域との往来はなるべく控える
(エ)Go Toトラベル事業の一時停止。当該地域からの出発分も要検討。Go To Eat事業の運用見直しやイベント開催制限の変更
Ⅱ.医療提供体制および保健所へのさらなる負担を防ぐため,ステージⅢ相当の対策を要する地域においては,
(ア)高齢者施設等の入院・入所者等を対象に,特に優先して検査を実施し,全国どこの地域でも,高齢者施設等で感染者が1例でも確認された場合は,迅速かつ広範に検査を行い,重症者の発生を重点的に予防する
(イ)高齢者であっても比較的症状が軽い場合は,基礎疾患も考慮して,宿泊療養または自宅療養をお願いする。感染拡大の前から軽症者を受け入れる宿泊施設の準備を確実に行う
(ウ)ステージⅢ相当の対策を要する地域の中でも,特に医療提供体制および保健所機能が厳しい状況にある地域に対し,今後数週間で感染状況が悪化することを前提に,患者搬送および医療従事者の派遣等の支援について,自衛隊の活用も含めて政府は早急に支援を検討すること
(エ)厳しい勤務体制で診療を続ける医療従事者に対する誹謗中傷が未だにみられ,離職の増加が懸念されるため,誹謗中傷を防止する啓発を継続すること
Ⅲ.特にこの3週間に集中して「感染リスクが高まる「5つの場面」」およびマスク着用を含む「感染リスクを下げながら会食を楽しむ工夫」について,統一感をもって分かりやすく発信する
Ⅳ.これらの対策の実効性を高めるために,財政面を含め,医療・経済・雇用等への一層の支援が必要
Ⅴ.この3週間の対策の効果をCOVID-19対策アドバイザリーボードおよび分科会で評価し,万一効果が不十分であった場合は更なる対策を行う必要あり。
2.COVID-19ワクチンの開発状況
COVID-19ワクチンで臨床3相試験を行っていたワクチンのうち2社(ファイザー,モデルナ)から相次いで11月中旬に報告が発表された。正式な論文ではなく,プレスリリースであるため,詳細な内容については論文発表が待たれる。両社ともに非常に高い有効性が示されたが,薬事承認までには,様々なデーターが出てくる見込みである。いずれもmRNAワクチンであり,アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンより一歩リードした形となった。
(ⅰ)ファイザー社:11月9日にプレスリリースで臨床検査結果の中間報告を公表し,90%以上の発症予防効果が確認できたとした。43,530人にワクチンあるいはプラセボを投与して,94人にCOVID-19の発症が確認された段階で,この発症者を調べたところ,94人中ほとんどがプラセボ群であり,ワクチン群は8人以下だったとすることから導かれた数値であった。ファイザーは発症者が164人になるまで臨床検査は継続するとしていたが,19日には発症者170人の結果を最終報告として発表した。これもプレスリリースであるが,プラセボ群162人に対してワクチン群8人で,有効率は95%であった。65歳以上の成人の有効性は94%以上であった。有害事象のgrade Ⅲとしては,倦怠感3.8%,頭痛2.0%であり,重篤な有害事象はないと発表した。ファイザー社は米食品医薬品局FDAに緊急使用許可を申請した。早ければ年内に供給が始まると思われる。
ファイザーのワクチンはマイナス70℃の冷凍庫で最長6か月の保存が可能であるが,一旦解凍すると2~8℃の冷蔵庫では5日までしか品質が保てないこと,解凍して希釈すると6時間以内に使用する必要があることが,CDC(米疾病対策センター)諮問委員会の公開資料で明らかにされている。
日本国内のワクチンで冷凍保存が必要なものはなく,またマイナス70℃以下のディープフリーザーを保有する医療機関はほとんどない。ファイザー社は,冷凍保管の問題解決のために,工場を出荷する際にドライアイスを敷き詰めた専用の保冷ボックス「サーマルジッパー」にワクチンを梱包してマイナス70℃の状態を保って輸送することを計画している。サーマルジッパーにドライアイスを途中で充填すると15日間マイナス70℃を維持でき,一時的な保管庫としても使用できる,としている。厚労省は,マイナス70℃での保管が可能な冷凍庫3,000台を補正予算の予備費で確保する方針であり,またサーマルジッパーへの補充のためのドライアイスの提供を行う予定としている。サーマルジッパーで保管して接種する方法だと,ファイザーの工場から出荷されて医療機関に届くまで5日かかるとすると,保存期間は残り10日となる。さらにCDCの公開資料によると,ボックスを開けるのは1日2回で毎回1分以内しか開けることができないので,ドライアイスの取り扱いが難しくなる。輸送と保管の問題が大きい。
(註:12月2日に英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)が使用承認し7日から接種開始)
(ⅱ)モデルナ社:mRNA-1273の中間解析の結果,94.5%の有効性を示したと11月16日に発表した。臨床3相試験(米国で3万人超が対象,国立アレルギー感染症研究所NIAIDと国立衛生研究所NIHなどと共同で実施)で,2回のワクチン投与から2週間後にCOVID-19感染症と確定診断された95人のうち,プラセボ群が90人に対し,ワクチン群では5人であり,統計学的有意差を示したと報告した。また感染者のうちの重症者11例はすべてプラセボ群で,ワクチン群ではゼロであった。有害事象は,ワクチン1回目接種後は,注射部位反応2.7%,2回目接種後は倦怠感9.7%,筋肉痛8.9%,関節痛4.5%,頭痛4.5%,痛み4.1%,注射部位の紅斑/発赤2.0%としており,試験参加者の約10分の1に副作用がみられたが重篤な安全性の懸念は認められなかったとしている。モデルナ社は追跡期間が2か月超となるCOVID-19の確定診断を受ける症例が151人になるまでフォローアップして最終解析を行う方針である。
モデルナのワクチンは,2~8℃で30日間保存できるということも発表されたが,普通の冷蔵庫やクーラーボックスで保存できるため,このことはファイザーよりも優位な点である。
いずれのワクチンも,副反応のうち,接種部位の腫張・疼痛・発熱については,季節性インフルエンザワクチンのそれと比べて高めであるため,多くの健常者への接種が始まってから,副反応が問題となる可能性があり,また報告された副反応以外の重篤な有害事象が出現する恐れもある。
(ⅲ)アストラゼネカ社:臨床試験は全世界で6万人規模の実施をするが,日本では8月から18歳以上の約250人で抗体量などを約2か月かけて調査している。9月に海外で試験対象者に有害事象が疑われたため一時中断したが,10月上旬から再開した。臨床試験の結果は12月から1月にかけてまとめられるようであるが,海外では平均70%の有効性を確認しつつあり,こうしたデーターを活用して承認申請をするとみられており,欧州の一部では年内に使用許可が得られる見通しとなっている。
(ⅳ)中国のワクチン:世界で臨床試験の最終段階にある11種類のワクチンのうち4種類が中国のワクチンである。中国では1月からワクチン開発を急ピッチで行い,シノバック・バイオテックとシノファームの2社が牽引してきた。シノバックのワクチンは,弱毒化したウイルスを用いる従来からの手法である。両社とも7~8月に,最終試験の途中にもかかわらず,中国国内での緊急投与を開始した。シノファームは,9月時点で約35万人に接種したが,11月18日には100万人近くに達したと発表した。しかし,シノファームは最終試験の詳細なデーターは公表しておらず,接種後の検証内容とその結果が不明であり,検証が不十分であると考えられる。一方,シノバックは,初期段階の臨床試験データーを分析した論文をランセットに掲載した。試験結果から,「抗体は,COVID-19感染から回復した人のレベルより低い」として有効性を「中程度」と評価していた。有効性が90%以上のファイザー/モデルナ,70%とするアストラゼネカなどの最新技術を駆使した欧米のワクチンと比べてやや劣るものの,抗体が確認されて安全性に問題がないとしている。11月25日にはシノファームが中国国家薬品監督管理局にワクチンの販売許可を申請し,一般向け販売の準備に入った。11月下旬時点でインドネシアやブラジルなどの少なくとも13か国で最終試験を実施しており,まずはこれらの国に供給すると思われる。
3.日本国内でのワクチン接種の体制
「令和2年度一般会計新型コロナウイルス感染症対策予備費使用について」(令和2年9月15日閣議決定)が決定され,COVID-19ワクチンを迅速に多くの国民への接種を目指す趣旨から,10月23日付で「新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業の実施について」と「新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業の実施要領について」が厚労省から各都道府県へ通知された。COVID-19ワクチンの迅速な接種を行うための準備事業の実施を円滑に進めるため,「新型コロナウイルスワクチンの接種体制確保に係る第一回自治体説明会の開催について」が11月26日に事務連絡された。この自治体説明会の対象者は,都道府県および市町村においてCOVID-19ワクチンの流通・管理,接種会場運営等に携わる行政の担当者である。12月18日午後にZoomを用いたオンライン形式で開催されるが,収録動画は別途視聴できるアーカイブ配信も実施される予定である。この各自治体への説明の後に,各市町村から具体的な接種体制について各地区医との協議の場が持たれることになろう。
(註:12月2日衆議院本会議で改正予防接種法が成立,国の費用負担で無料の接種が決定,年度内に接種開始の可能性が高まった)
11月の地区医との懇談会は,中京西部,乙訓,上京東部,伏見,相楽,宇治久世とで行い,すべてWebで開催した。COVID-19に関するテーマとオンライン資格確認が主たる協議内容であった。また年に一度の専門医会会長会議は11月14日にWeb開催した。テーマはCOVID-19関連のことが中心となった。
インフルエンザ流行期に備えての診療体制整備に関連して行政と以下の協議を行った。
①11月9日に京都府薬務課・検査キット取り扱い会社・卸売販売業者と府医とで「ワクチン確保検討会」を開催しCOVID-19抗原定性検査キットの流通について情報交換を行い,3社の検査キットが月産10万キットであること,卸販売業者に各医療機関から発注すること,在庫があれば速やかに納品,在庫が無い場合でも発注後7日~10日で納品が可能であることを確認した。
②11月26日に京都府と「きょうと新型コロナ医療相談センター」(新型コロナ相談センター)の役割の確認および府医PCR検査相談センターとの連携等について意見交換を行った。従来の「帰国者・接触者相談センター」は解消された。京都市の帰国者・接触者相談センターは,事務的な対応しかできないコールセンター(遠隔地に設置)であったために,第1波のときからその対応についての不満が会員から多く寄せられていた。11月から新しくなった新型コロナ相談センターは京都府・京都市の別ではなく,府・市で一本化され,看護師が対応するようになった。しかしながら,センターに電話相談した患者は「かかりつけ医にまず相談してください」という従来の帰国者接触者相談センターと変わらない対応となり,結局患者さんが行き場を失うという事例がみられた。これは,従来の京都市のコールセンターが一部残っている(契約上京都市がすぐに解消できなかった)ことと,新型コロナ相談センターと府医PCR検査相談センターとの連携が曖昧なままであったためである。この点を改善するために今回の府医と京都府との意見交換の場で協議した結果,(i)夜間・休日で,濃厚接触者を含めて症状の悪化した人や入院・治療が必要と思われる人は新型コロナ相談センターから「接触者外来」の医療機関に誘導して診療と検査へ繋げる調整を行う,(ii)府医PCR検査相談センターが開いている平日の時間帯には,新型コロナ相談センターからの連絡を受けて,府医相談センターから「診療・検査医療機関」で紹介患者を受け入れる医療機関へ繋げる調整を行う,という大筋が決められた(後述)。
11月27日に日医の第19回都道府県医新型コロナウイルス感染症担当理事連絡協議会がWebで開催された。(1)COVID-19の直近の状況等:全国の「診療・検査医療機関」の指定は11月10日現在で24,629医療機関となり,その後も増加している。COVID-19ワクチンの日本における薬事承認はこれまで行われてきた手続きで行われることになる。集団接種を行う体制構築が今後の課題。(2)医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業:日医から厚労省への申し入れで,日常診療業務にかかる費用も幅広く補助の対象となることが明確になり,殆どの医療機関が上限額の補助が受けられると思われるため,会員周知を早急に行う。(3)インフルエンザ流行期に備えたCOVID-19に係る診療報酬上の取り扱い:唾液検体でインフルエンザウイルスとCOVID-19を同時に検出できるPCR検査が11月11日に保険適用(保険点数は外部委託1,800点/自院実施1,350点+微生物学的検査判断料150点が公費)となった。「診療・検査医療機関」として指定される以前より標榜していた診療時間を超えた場合には時間外とみなされる,「診療・検査医療機関」は,休日加算・深夜加算の算定が可能な医療機関とみなされる。(4)日医休業補償制度の創設:日医の会員が開設または管理する医療機関の医療従事者がCOVID-19に感染し,一時的に閉院等を行った際の休業損害を補償することで,地域の医療提供体制を支援することを目的として創設された。(5)COVID-19対応医療従事者支援制度:12月募集分で,診療所4,569,病院515が加入した。(6)「外来診療を行う既存小規模医療機関を対象とする換気および暖冷房について(第1版)」(一般財団法人健康・省エネ住宅を推進する国民会議):診療所の改修などをする際の参考にする,の6つの説明と協議が行われた。
ホテルヴィスキオ京都において,府医会員のご協力を得て運用している。
11月に入り,陽性者は少しずつ増加傾向となり,新入所者数は11月7日頃から5名を超える日があり,22日の12名をピークに1日平均5.3名のペースで入所があった。11月1日から11月30日の総入所者数は159名であった。
家族内感染が増えたことにより,祖父母は入院,若い親子や兄弟での家族入所が増えた。精神疾患のある親子の入所者で,母と娘の発症日の違いで娘が先に退所することについて,母がTV電話に出ないため,退所の日程調整が困難な事例があった。
入所中の症状増悪により,健康管理医の適切な判断により転院した者が,11月中で2名いた。
11月30日現在の総入所者数は676名となったが,11月中に入所した159名のうち,11月30日時点で,退所者は144名,転院者は2名,自宅療養に切り替えた者2名,入所中の者は11名であった。年代別では,10歳未満が2名,10歳代17名,20歳代68名,30歳代22名,40歳代25名,50歳代23 名,60歳代2名であり,居住地では京都市内117名(73.6%),京都府内が42名(26.4%)であった。自宅からの入所は158名(99.4%),医療機関からの入所は1名(0.6%),平均入所日数は約7.1日であった。
検査実施時に症状のある者は116名,無症状は43名であり,症状の内容は,発熱,咳,咽頭痛,頭痛,関節痛,味覚・嗅覚障害,倦怠感であった。
11月のPCR検査実施については別稿を参照されたい。
府医が京都府から委託を受けて運用する府内のPCR検査の会場が11月から増えた。それまでの3会場に加えて,11月11日から西京地区会場,12月1日から山城南会場の運用を開始し,また中丹会場も12月22日には運営開始の予定となった。いずれの会場も,当該地域の地区医と保健所と協議を進めてこられたが,府医としては地域の要望に応じる形での協力を行うことと,また検査センターの稼働については府医PCR検査相談センターの枠組みの中で実施することを提案してきた。当該地区医の会員の先生方の熱意とご尽力に感謝の意を表したい。
前述のように,京都府との協議の中で11月から府医PCR検査相談センターでの対応を変更することになった。
(ア)府医PCR検査相談センターへの情報提供書の改訂,簡素化(従来のチェックシートの記載が面倒だとの会員からの意見あり)
(イ)新型コロナ相談センターからの情報提供を受けて,PCR検査あるいは診療・検査医療機関に繋げる
(ウ)自院で診療や検査ができない医療機関からの依頼を受けて,自院以外の患者を受け入れる診療・検査医療機関に繋げる
(エ)府医相談センターでは,PCR検査の必要性の医学的判断を午後から出務医(担当理事)が行っていたが,送付されてきた情報提供書を基にして午前中から稼働する
(オ)依頼医師あるいは新型コロナ相談センターからの情報提供書で,ドライブスルー欄で「可」の場合は検査センターでのPCR検査に,「否」の場合は紹介可能な診療・検査医療機関に紹介する
11月から実際に稼働して浮かび上がってきた問題点と課題がある。
PCR検査の依頼を受けることが府医PCR検査相談センターの本来の目的であったが,患者を診療に繋げるために医療機関を紹介する業務が新たに加わった。実際には府医相談センターから紹介して受けていただける診療・検査医療機関が少ないことが判明した。診療・検査医療機関として指定を受ける前の京都府への意向調査で「紹介を受け入れる」と回答した医療機関に,府医相談センターから発熱患者の受け入れをお願いすると,府医相談センターからの紹介は想定していない,受け入れる体制が整備し切れていない,等々の理由で断られることが少なからずあった。そのため,自院以外の患者を受け入れるとした診療・検査医療機関に対して府医から改めて意向確認を行うことにした。また自院の患者のみとした診療・検査医療機関であっても受け入れ可能とする医療機関があることから,ここに対しても府医相談センターからの紹介患者を受け入れ可能かどうかの意向確認も行う。
従来のPCR検査の依頼の割り振りに加えて,新型コロナ相談センターからと自院で診療・検査を行わない医療機関から紹介された患者の診療へ繋げる作業は,現在の府医相談センターの事務処理体制では,このままではかなり負担が大きくなる可能性が高い。
地区医で診療・検査の連携のためのネットワークづくりをしているところ(伏見,山科)があるが,多くの地区医でこのネットワーク作りが進めば府医相談センターの負担が軽減される。また,従来から季節性インフルエンザを含めて発熱患者を診療しているすべての医療機関が地域の発熱患者をみることになれば,患者は迷うことなく安心して医療機関を受診することができて,また医療への信頼感が高まると考えられる。
また年末年始の体制については,府内の各医師会を中心とした前述のPCR検査体制が稼働することになっているが,問題は京都市内の体制である。多くの医療機関は年末年始に休診となるため,発熱患者が京都市急病診療所(急病診)に殺到することが予想される。第1波以降,急病診の内科ではインフルエンザ患者を含めて発熱患者等への対応については,入口に表示して受診患者への理解と協力を仰いできた(京都医報4月15日号)。その後市内の医療体制等の状況の変化もあるが,特にこの年末年始での対応策は早急に決めねばならない。但し,季節性インフルエンザの流行状況,あるいはCOVID-19の感染拡大,その他の発熱疾患の流行で対応が変わると思われるが,急病診での診療と検査体制をどのようにするか,現在協議中である。
COVID-19検査を行政検査として実施できる集合契約医療機関が,京都府から「診療・検査医療機関」として指定されることになった。京都府に対して10月に意向確認の調査票で回答した集合契約医療機関は11月1日からの指定となり,指令書(指定通知書)が送付された。また,「新型コロナウイルス感染症等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)入力に必要なIDやURL等は指定医療機関へ送付され,11月24日から運用が可能となった。新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(G-MIS)については,京都府が指定医療機関の情報を11月中旬に厚労省に送付しており,厚労省からG-MIS入力のためのID等の通知が医療機関に届くのは12月上旬以降になる予定である。11月末時点で,京都府内の集合契約医療機関は665件,診療・検査医療機関として指定されたのは503件である。
11月9日~15日の季節性インフルエンザの発生状況は,全国約5,000の定点医療機関からの合計報告数は23件となっており,昨シーズンの同時期(9,107件)と比較して100分の1以下となっていた。この状況を踏まえて,COVID-19の感染拡大地域においては,発熱患者等が診療・検査医療機関を受診した際に,他の疾患の疑いが強い場合を除いて,積極的にCOVID-19検査を実施するよう,厚労省対策推進本部から要請があった。季節性インフルエンザとCOVID-19検査必要性については,臨床所見,地域の感染状況等により医師の判断に委ねられるべきものであることは言うまでもない。また単純に昨シーズンと比較できる数値ではなく,検査の実施頻度が激減していること,受診控えなどの要因もあるが,今冬に季節性インフルエンザ流行がどの程度になるかは,11月時点では予断は許さない。
なお,「自院の患者をみる診療・検査医療機関」は,自院をかかりつけとしている患者のみを対象とすると誤解されている節がみられるが,「自院に相談があった患者をみる」ことであり,初患の患者であっても受け入れて,地域医療を支えていただきたい。初患の患者を門前払いにした場合は,医師法に定められた応招義務に抵触することになる,と厚労省は明確に述べている。仮に診療ができない場合であっても,相談してきた患者からの相談に乗り,周囲の医療機関へ紹介する等その患者を診療に結びつけるようにすれば,応招義務違反にはならない。
発熱等患者の外来診察
(集合契約医療機関の協力体制)
<資料>
#「京都市急病診療所 内科診療について(令和2年3月13日時点)」(京都医報4月15日2171号)
#「緊急提言 感染状況を踏まえた,より一層の対策強化について」(11月9日,第14回分科会)
#「新型コロナウイルス感染症に係る行政検査におけるPCR検査の取扱いについて」(11月11日,厚労省健康局)
#「“対話ある情報発信”の実現に向けた分科会から政府への提言」(11月12日,第15回分科会)
#「新型コロナウイルス感染症に係る感染症法上の入院措置の対象者について」(11月13日,厚労省対策推進本部)
#「医療機関,高齢者施設等の検査について(再周知)」(11月16日,厚労省対策推進本部)
#「早期探知しにくいクラスターの防止に向けた情報発信等の取組の一層の推進について(要請)」(11月17日,事務連絡,厚労省対策推進本部)
#「私たちの考え―分科会から政府への提言―」(11月16日,第16回分科会)
#「クラスターの早期探知・早期介入のための取組みについて」(11月20日,厚労省対策推進本部)
#「クラスターが複数発生している地域における積極的な検査の実施について(要請)」(11月20日,事務連絡,厚労省対策推進本部)
#「季節性インフルエンザとCOVID-19の検査体制について」(11月20日,事務連絡,厚労省対策推進本部)
#「現在の感染拡大を沈静化させるための分科会から政府への提言」(11月25日,第17回分科会)
#「最近の感染状況を踏まえた今後の対応について」(11月27日,京都府)
#「新型コロナウイルス感染症対応『日本医師会休業補償制度』について」(11月30日,日医)
#「外来診療を行う既存小規模医療機関を対象とする換気及び暖冷房について(第1版)」
(一般財団法人健康・省エネ住宅を推進する国民会議)