2020年2月15日号
京都北医師会と府医執行部との懇談会が10 月30 日(水),京都ブライトンホテルで開催され,京都北医師会から14 名,府医から11 名が出席。「マイナンバーカードに保険証機能をもたせるという政府方針」,「在宅医療の課題 地区医師会の役割(厚労省の本音)」,「ワクチンの諸問題」をテーマに活発な議論が行われた。
厚労省は,マイナンバーカードに保険証機能をもたせて,オンライン資格確認が可能となるシステム構築を目指して,本年10 月1日に「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律」に基づき,医療機関でのシステム整備や機器導入などの初期導入経費を補助するなど整備を行っている。
これに対し,日医は医療機関窓口でマイナンバーカードを取り扱うことによる個人情報のセキュリティーやカード紛失などのトラブルを危惧し,「保険証廃止によるマイナンバーカードへの一本化」には断固反対している。
オンライン資格確認では,顔認証付きカードリーダーで資格確認ができ,医療情報の共有の円滑化や医療事務業務の効率化が期待できる。また,既存のオンライン請求のインフラを活用したオンライン資格確認の仕組みが構築される予定となっている。
しかし,現状では,初期導入費用の対象範囲が不透明である,個人情報の取り扱いに対するリスクが高い,紙カルテを利用している医療機関を考慮していないなど様々な課題がある。
府医としても普及率の低いマイナンバーカードを活用することは現実的ではなく,すべての医療機関が一律に対応するよう強要するものではないと考える。また,機微性の高い医療情報をマイナンバーカードに紐づけることは,紛失した際のリスクが高いだけでなく,情報を国が一括管理できる状況もあり同意はできない。
電話再診料は,原則「患者又は看護に当たっている者からの治療上の意見を求められた場合に必要指示をした場合に限り算定する。」こととなっているが。「看護に当たっている者」の定義が不明確な部分もあるが,単に電話があっただけでは算定できないので注意が必要。
在宅時医学総合管理料については,算定要件や手続きが複雑なわけではないが,医療機関がどの施設基準区分(1.強化型在支診・在支病,2.在支診・在支病,3.その他)に該当するかによって算定できる点数が異なる。「1」,「2」については,24 時間対応可能な体制を確保し,連絡担当者の氏名,担当日,緊急時の注意事項等について,文書で提供している患者に限り算定できるなどの要件があるため,それぞれの施設基準を満たす必要がある。ケアマネとの連携により対応する場面も多いことから,日常的に顔の見える関係を構築しておく必要がある。
在宅医療を始めるにあたり,自身の診療に関わる制度や仕組みを把握した上で,他職種とお互いの役割を共有し,理解し合うことでより連携を深めることができるのではないかと考えられる。
今後も府医では,研修会や地域医療構想調整会議を通じて多職種連携を進める上で必要な知識・制度等の情報を共有し,他職種との相互理解や連携を推進していく。
地区からは,厚労省が整備を進めている「地域包括ケアシステム」で示されている「自助・互助・共助・公助」のうち,自助の定義として患者の子どもによる資金援助や介護が含まれていることから,ケアマネへのニーズ減少や介護関係の管理料が大きく減少するのではないかとの懸念が示された。府医は,徐々に介護の領域でも「自分でできることは自分でする」という考えが浸透しつつあるものの,家族だけでできる介護・医療の範囲には限界があるとの考えを示した。
近年,毎年のようにワクチン不足が発生しており,都度,府医,行政,病院団体,メーカー,卸売業者による「ワクチン確保検討会」を開催しているが,一向に改善が見られないことから,ワクチンの流通を管理できるシステムの構築を厚労省や京都府に要望している。
毎年,不足しているものの,今年度は需要に見合った流通量を確保できる見込みである。また,ワクチン不足に陥らないよう,卸業者は前年度の使用実績から各医療機関への流通量を決定しており,厚労省は返品率が高い医療機関を実名で公表する意向を示している等,様々な対策が行われている。
昨年度から「風しんの追加的対策」が施行され,昭和37 年度~昭和53 年度生まれの男性を対象とした抗体検査と風疹第5期予防接種が行われている。
京都府内では,現在,およそ対象者の5%ほどしか接種しておらず,ワクチン流通量への影響は少ないものの,厚労省は積極的な接種勧奨を行うよう市町村に求めていることから,今後,接種希望者が増え,深刻なワクチン不足に陥る危険性も考えられる。
B 型肝炎ワクチンのヘプタバックスⅡ(MSD社)の原液製造の上流工程で断続的に規格を満たせないケースが生じ,製造中止となったため,ビームゲン(KMB 社)が11 月から増産を予定しているものの,増産量が公表されていないため,厳しい出荷制限をせざるを得ない状況にある。厚労省は,ワクチン不足に陥ることはないとの考えを示しているが,病院で実習する学生による任意接種分等が考慮されているか疑問である。
従来,ワクチン不足が発生した際には,府医から接種優先順位を示してきたが,B 型肝炎については,任意接種と定期接種の優先順位がつけがたいため,今回は示していない。今後,深刻なワクチン不足に陥った場合は,行政および厚労省に対し,定期接種対象年齢の枠を超えたとしても,定期接種として認めるよう提言していく。
医療機関に対しては,ワクチン不足に陥らないよう必要最低限の発注にとどめ,ワクチン不足の際は複数の卸業者を利用する等の協力を求めていく。
2013 年以降,副反応が多数報告されたことから,積極的な接種勧奨が差し控えられるとともにマスコミが大きく取り上げたことから,現在に至るまで接種に反対する意見が多く,接種率が低迷している。
また子宮頸がんは年間約1万人が罹患,約2,900人が死亡しており,自見はなこ参議院議員をはじめとする議員団が問題提起したにもかかわらず,厚労省として問題に取組む姿勢が見られないことから,各医師が接種の重要性等を保護者に説明し,理解を得ていくしかないとした。
一方で,日医は独自に周知等HPV ワクチンの接種勧奨に取組む意向を示している他,岡山県でも専用ホームページを作成し,すでに他団体で接種勧奨が行われていることから,府医でも独自に活動するべきか検討する必要がある。