京都大学医師会との懇談会 10.31 京都大学

「医師の働き方改革」について議論

京都大学医師会と府医執行部との懇談会が10 月31 日(木),京都大学で開催され,京都大学医師会から医師8名・看護師・事務9名の計17 名,府医から11 名が出席。「医師の働き方改革」について,課題と問題点などの情報共有がなされるとともに活発な議論が行われた。

医師の働き方改革について

京大病院の取組み

実態調査を実施

2017 年11 月に労務諮問会議を創設(委員長:労務担当副病院長 宮本享氏(現病院長))し,「院内労務管理の実態調査」および「他施設の事情調査」を実施。

その結果,労務管理が標準化されておらず,労務に関して医師が無知であることが判明。

改善に向けた取組みの開始

労務管理に関する病棟医長会議を開催し,働き方改革による労働時間の上限規制,36 協定の説明,超勤申請ルールの周知・標準化に向けた説明会を実施。

システム化された勤怠管理方法の導入に向けた検討を開始。

医師の処遇を改善するため,時間外,休日の緊急手術等に対する手当支給の検討を開始(2019年4月より支給開始)。

厚労省の示す緊急取組み課題への対応

2018 年1月15 日,厚労省の「第6回医師の働き方改革に関する検討会」において「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組(骨子案)」の一つとして「医療機関の状況に応じた医師の労働時間短縮に向けた取組」が示された。

  1. 勤務時間外に緊急でない患者の病状説明等の対応を行わないこと
  2. 当直明けの勤務負担の緩和( 連続勤務時間数を考慮した退勤時刻の設定)
  3. 勤務間インターバルや完全休日の設定
  4. 複数主治医制の導入

等,各医療機関・診療科の特性を踏まえた取組みを積極的に検討,導入することとされ,病院としての方針整備を行い,①はすぐに対応し,病棟各階の掲示板や入院案内,ホームページで周知した。また,宮本病院長が診療科長であった脳神経外科では以下の取組みを実施。

  • 大学院生の当直参加による部分シフト制の導入 (宿直翌日のスタッフ勤務を減らす)
  • 院外からのカルテ閲覧導入(脳神経外科・SCU のみ)
  • 救急入院症例の主治医は翌日決定(業務の集中を防ぐ)
当院の検討体制の整備

病院執行部による方針策定のための会議体を設置。

  • 労務諮問会議(2017 年11 月)
  • 医師の宿日直WG(2017 年11 月)
    →医師の働き方改革WG(2018 年3月)
    職員によるボトムアップ型の会議体を設置。
  • 医師,メディカルスタッフ,事務職員による3つの働き方改革WG(2019 年4月)
医師の労働時間の適正化

医師の労働時間を客観的に把握する方法の導入を検討し,取組みを実施。

【目的】

  • 勤務時間の実態把握を踏まえた36 協定の見直しについて検討するため →
    全職員同一の36 協定から,次年度は診療科別3パターンの36 協定を検討
  • 今後,臨床系助教への専門業務型裁量労働制の適用について検討するため
  1. 総合医療情報システム端末上で,出勤時と退勤時に打刻するアプリケーションを導入。診療業務に従事する常勤教員や,医員,研修医などの非常勤職員を対象に打刻の義務化を開始(2019 年6月)。
  2. 医師の勤務時間の管理方法の検討を開始。医師(教員)の勤務時間状況に関する調査を実施(2019 年10 月)。
タスクシフティングの推進

医師以外の医療従事者への業務移管を実施。

医師事務作業補助者,薬剤師,IV ナース,術前外来。

医師が働きやすい勤務環境の整備

働き方と保育環境等の面から,医師が働きやすい勤務環境を整備。

  • 26 時間託児(週1回),お迎え託児,臨時託児の3つの託児サービスを実施,利用者も年々増加している(2016 年4月)。
  • 週30 時間以内で各個人の勤務時間の設定を可能とし,キャリア支援診療医の称号を付与する制度を開始。現在25 名の医師が活用している(2015 年10 月)。
質疑応答

◇府医から「働き方改革で労働時間の制限を受けると,院外でのバイト等は困難になるのではないか」と質問が出された。

診療科によって異なると前置きした上で,法的規制が行われた際に,外勤も労働時間に含めるとなれば,地域医療に多大な影響を及ぼすと懸念を示した。

また,自己研鑽のあり方について,自己研鑽のために電カルを閲覧する場合に電カルを開けば業務にカウントされると自己研鑽すら阻害されると苦言を呈し,ある大学では電カルを開く際には業務か自己研鑽か選択してから開くようなシステムになっていると紹介した。


◇ 府医から「かかりつけ医機能の部分は大病院が担うのではなく,医療の社会的な役割として,かかりつけ医と大病院の機能分化が必要」と意見が出された。

地区からは,紹介のあった患者は逆紹介しやすいが,病院としてもどこに紹介をすれば良いのか困っていると現状が述べられた。

また,府医からは,「今後は機能をより明確に分けていかなければならず,かかりつけ医としても機能強化に取組んでいるものの,病院から患者を引き受ける際には専門的な指導がなければフォローが難しいため,連携パスや紹介状への注意書き等の活用を求め,かかりつけ医としても均一なレベルになるように努力しなければならない」と述べた。また,地域で顔の見える関係性を構築するためにも,勉強会など地域連携の会の継続開催を依頼した。

また,患者は大病院に対する信頼度が高く,機能分担していくためには断固たる結束がなければ難しいとの意見を述べた。

さらに,医療連携のための多人数の会も必要だが,診療科ごとの連携を検討していくワーキンググループのような会を作るべきではないかと見解を述べた。

地区からは,「医療は普通の商品と違いフリーアクセスであるため,説得をするのに時間と労力がかかる。患者側から急性期が終わったので地元に帰りたいというのはなかなか聞かない。医療のシステム自体も検討しなければ,働き方改革の推進は困難ではないか」との考えが示された。

2020年2月15日号TOP