地区だより 京都大学医師会 心安らぐ空間を赤ちゃんとご家族へ京都最大規模の高機能NICU 京都大学医師会事務局

 京都大学医師会が事務局を置く医学部附属病院は、2019年に創立120 周年を迎え、同9月に新病棟(中病棟、次世代医療・iPS 細胞治療研究センター)を竣工しました。産科部門と新生児部門からなる総合周産期母子医療センターも中病棟に移転し新しくなりました。今回はその新生児部門をご紹介します。

 当院の未熟児センターは、旧第1病棟に始まりました。その後、北病棟への移転を経て、2003年に初めて6床のNICU(NeonatalIntensiveCareUnit)認可を取得しました。2009年には9床に増床し、さらに今回の移転により、NICU12床、回復病床(GCU;GrowingCareUnit)12床の計24床を保有する新生児病棟へと生まれ変わりました。NICU12床は京都府内最大のベッド数となります。年間入院数は200名程度で、合併症妊娠・緊急母体搬送から出生した児や、胎児異常・早産児などの診療にあたっています。手術を要する重症児も多く、多数の診療科と力を合わせて診療にあたっています。

 ベッド数以外にも大きな変化がいくつかあります。第1はベッド当たりの床面積の拡大です。従来の1.5~2倍の面積をとることで、水平感染の防止はもちろん、面会家族が気持ちよく過ごせる空間の創出にも心を配りました。とりわけ、NICU3床、GCU4床は半個室とし、赤ちゃんを囲んでご家族がゆっくりと過ごせるようになりました。

 第2は陽圧・陰圧を切り替えることのできる個室を設けたことです。陽圧にすれば、赤ちゃんとご家族が過ごせるプライベートな空間になり、陰圧にすれば空気感染するような感染症児の隔離室としても使用できます。日ごろは面談室としても活用でき、種々の配慮を施した高機能室となっています。

 第3はNICU、GCU 内の壁面に描かれている様々な動物や植物たち、京都芸術大学による「HAPii + Project」の一環で制作されたホスピタルアートです。当院と京都芸術大学は2019 年4月に包括協定を結び、「芸術による医療環境の改善事業」に取組んでいます。本プロジェクトには、50名の学生が参加し、全24 種類のモチーフを描きあげました。『人どうしの縁をつなぐ』という思いから、すべてのモチーフが一筆書きで描かれています。カンガルーやシカ等、子育ての印象が強い動物やその親子に、赤ちゃんを大切に思うご家族に寄り添いたいという気持ちが込められています。また、パンダのそばにある竹が身長計になっていたり、沐浴室の入り口にはアヒルの親子がいたりと、ご家族に少しほっこりしていただけるよう工夫しました。さらに、ガラス越しに赤ちゃんを応援する兄姉のために「おてがみシステム」を設置しました。これは、学生の「赤ちゃんとのつながりを目に見える形で表したい」という思いから生まれたアイデアです。カンガルーのお腹部分のお届け袋に、赤ちゃんに宛てた手紙を入れることができます。赤ちゃん・ご家族・我々医療スタッフを結ぶ線で描かれた可愛い動物たちは、ご家族だけではなく医療スタッフの心も癒やしてくれています。

 『ハイリスク妊娠・ハイリスク児は高次医療機関で』という社会のニーズが増大しており、当院に対する期待も年々高まっています。少子化が叫ばれる今日ではありますが、このような社会のニーズに対応するため、今後も産科部門と協力して、より一層赤ちゃんとご家族をサポートしてまいります。

京都大学医師会
〒606-8507
京都市左京区聖護院川原町54
京都大学医学部附属病院 総務課総務掛
TEL:075-751-3007 FAX:075-751-6151
H P:https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/index.html
e-mail:schedule@kuhp.kyoto-u.ac.jp
会 長:宮本 享
会員数:80人(2020.6現在)

2020年7月1日号TOP