2020年3月1日号
1月20 日(月),府医,日本損害保険協会,損害保険料率算出機構の共催で,自賠責研修会が府医会館にて開催された。当日は病院関係者59 名,診療所関係者58 名の合計117 名が参加した。
冒頭,挨拶に立った濱島府医副会長は,平成15 年に京都府で自賠責ガイドライン(新基準) を導入し,15 年が経過したが採用医療機関の割合は低迷している状況であると報告した。自賠責ガイドラインは傷病者にとっても医療にとっても有益な方向を目指すものであり,当研修会で理解を深めていただければ,と述べた。
研修会では,最初に「自賠責保険講習」が行われ,損害保険料率算出機構京都自賠責損害調査事務所の吉川明所長から「自賠責保険制度と治療費の請求について」と題して,自賠責保険制度の仕組みや特色について具体的な交通事故の状況等を示しながら解説されたほか,自賠責支払いにおける診断書,レセプトのチェック事項について説明があった。また,自賠責ガイドラインについてもその経緯と現状に言及があり,今後とも自賠責保険制度の健全運営のため,医療機関の協力を求めた。
続いて行われた「学術講習」では,京都第二赤十字病院救急救命センター副部長,府医理事の成宮博理氏から,「外傷における画像検査の重要性について:エコーからCT へ」と題する講演が行われた。まず,交通事故による外傷の最近の傾向について,自転車,バイク,歩行中の被害者に重症者が多いことや,死亡に至っているのは高齢者が多いこと等を示された。次に, 重症者に対する救急医療の初期対応として「覚知」「受け入れ準備」「搬入」「評価と処置」の段階があると述べ,それぞれの段階について現場の実態に即した解説があった。中でも外傷の評価のために行う画像診断について,レントゲン,エコー検査,CT の順にその特色と限界を,事務職にも分かりやすく説明された。それによると,救急の現場においてはレントゲンでは十分な評価が難しく,多くの場合,エコー検査で外傷によるショックの原因を検索(FAST:focused assessment with sonography for torauma)する必要がある。ただ,エコー検査には実施者の技掚による制約があるほか,精度にも限界があり,状況に応じてさらに造影CT 等を行っていく。外傷全身CT により得られる情報は非常に多く,重症者の生存率に大きな影響を与えている。成宮氏の講演は現役救急医としての知見に満ちたものであり,実際の救急における交通事故診療の一端を伺う貴重な機会となった。
閉会に際しては,日本損害保険協会近畿支部中井栄志氏が挨拶に立ち,当研修会が回を重ねるごとに充実してきたと述べた上で,今後とも当研修会の開催が,医療費を請求する医療機関と保険金を支払う損保会社のそれぞれが自賠責保険に関する知識を深める機会となり,相互の信頼関係に資することを望みたい,と締めくくった。