綴喜医師会との懇談会 2.1 京田辺商工会館(CIK ビル)

「感染症における登園登校停止,許可証明書」,「予防接種ワクチンの製造・流通過程」,「新型コロナウイルス感染症」 について議論

  綴喜医師会と府医執行部との懇談会が2月1日(土),京田辺商工会館(CIK ビル)で開催され,綴喜医師会から12 名,府医から7名が出席。「感染症における登園登校停止,許可証明書」, 「予防接種ワクチンの製造・流通過程」, 「新型コロナウイルス感染症」について,活発な議論が行われた。

感染症における登園登校停止,許可証明書について

これまでの経緯

  幼稚園・保育所で活用されている登園許可証明書の取り扱いや登園(登校)停止基準については, 約20 年前から各種関係団体や行政等で検討されており,今なお京都市でも対応について協議されている。

  登園許可証明書に関する対応は現状に合わせて変えていくべきである。

登園許可証明書に係る問題と対策

  本来,集団感染を防ぐために登園許可証明書を発行することとなったが,その取り扱いに関する幼保関係者の認識が十分ではない。

  登園(登校)停止基準は,感染症を学校保健安全法に基づく1~3種に分類しているが,最も問題となるのは,「条件によっては登園(校)停止の措置が必要と考えられる感染症」である。登園(登校)してもよいかどうかは,医師の判断に任されている分類群であるが,これを幼保関係者が拡大解釈している傾向が見られ,本来,登園許可証明書が必要になるのは1類感染症のみであるが,すべての感染症に対して,保護者を通して同証明書の作成を医療機関に求めるケースが多い。

  府医様式の登園届(登園許可証明書)では,可能な限り無償での作成を各医療機関に依頼しているところではあるが,登園許可証明書は診断書の1種となるため,文書料が請求できる。必要以上の登園許可証明書の作成は医師の業務負担だけでなく,保護者の費用負担も増幅させるため,課題である。

  また,学校保健安全法第19 条に「校長は,感染症にかかっており,かかっている疑いがあり, 又はかかるおそれのある児童生徒があるときは, 政令で定めるところにより,出席を停止させることができる。」との記載のとおり登園停止・許可の最終判断は延長や学校長に一任されているが, 過剰に登園許可証明書の提出を求められることがある。

  今後は,幼保関係者に正しい認識を広めていくとともに,現状を加味し,府医様式の登園届の改編や登園許可証明書が不要な感染症の精査等,引続き検討を続けていく。

予防接種ワクチンの製造・流通過程について

アクトヒブ(ヒブワクチン)の供給不足について

  ヒブワクチン「アクトヒブ」のシリンジ針の一部に錆が付着していたことから,厚生労働省より2020 年1月27 日に,ヒブワクチンの供給が一時的に中止されるとの通達が出された。

  同ワクチンは製薬会社「サノフィ」がフランスで製造していることから,代替品がないため,深刻なワクチン不足に陥ることとなった。国の体制が改めて問題となる事案であり,2~3社でワクチンを生産する等,万が一の事態に備える体制にするべきである。

  現在,同社による製品の回収が行われているが, 錆がついた不良品のカラー写真は同社から提供を拒んでおり,錆が軽微であれば,良品との見分けがつかないだけでなく,2月中旬から出荷開催予定だが,明確な日付が公表されておらず,混乱が広がっている。

ヒブ感染症(ヘモフィルス・インフルエンザ菌 b型感染症)の危険性と今後の対応

  乳児はヒブ感染症(ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型感染症)による細菌性髄膜炎に罹る可能性が高く,死亡率は20%程度であり,乳児には危険性が高い感染症である。現在,日本では撲滅されたが,万が一,海外からの侵入などにより感染が拡大した場合,乳児への影響が大きく危惧すべきであるが,幼児以上は細菌性髄膜炎にかかる可能性が乳児より少なく,危険性が高いのが乳児のみであるため絶対数が少なく,国が対策することは期待できないとして,難色を示した。

  現在,府医では優先順位を定め,日医の見解に従い,初回接種回数を3回から2回に制限して, 可能な限り多くの乳児に行きわたるよう医療機関に対し協力を呼びかけていると報告。

  以前から不足しているB型肝炎ワクチン「ヘプタバックス-Ⅱ」も未だ供給困難な状況が続いていることから,国に対し,京都府や京都市とも連携しつつ,ワクチン不足によって接種機会を逃してしまった場合を考慮し,公費負担対象年齢の一時的期間延長を求めていく。

その他

綴喜における産業医の問題について

  地区医から産業医を取得しても,企業から依頼が少なく活用できない状況がある一方で,工業団地がある地域では,医師が不足しており,慢性的な産業医不足となっているとした。また,ストレスチェックなど役割が多様化する中で,一般の医師が産業医活動を果たすための支援を求める声があった。

  府医は,受け手企業不足の問題については地域産業保健センターで企業の紹介を行い,調整していると回答。加えて,産業医不足の問題については地域の実情に合わせた支援が重要であることから,地区医に意見や情報提供の協力を求めた。

2020年5月1日号TOP