2020年5月1日号
今般,トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え製剤)(エンハーツ点滴静注用100mg) について,「化学療法歴のあるHER2 陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能・効果として製造販売が承認されました。
本剤については,承認に際し,製造販売業者による全症例を対象とした使用成績調査等がその条件として付されており,間質性肺疾患があらわれることがあり,死亡に至った例も報告されていること,および国内での治験症例が極めて限られていることが懸念されていることを踏まえ,使用に当たっての留意事項が下記のとおり示されましたのでお知らせします。
記
1.本剤の適正使用について
(1)本剤については,承認に際し,製造販売業者による全症例を対象とした使用成績調査をその条件として付したこと。
【承認条件】
1.医薬品リスク管理計画を策定の上,適切に実施すること。
2.化学療法歴のあるHER2 陽性の手術不能又は再発乳癌患者を対象に実施中の第Ⅲ相試験における本剤の有効性及び安全性について,医療現場に適切に情報提供すること。
3.国内での治験症例が極めて限られていることから,製造販売後,一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は,全症例を対象に使用成績調査を実施することにより,本剤の使用患者の背景情報を把握するとともに,本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し,本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
(2)本剤の警告,効能又は効果,用法及び用量,重要な基本的注意は以下のとおりであるので, 特段の留意をお願いすること。なお,その他の使用上の注意については,添付文書を参照されたいこと。
【警告】
1.本剤は,緊急時に十分対応できる医療施設において,がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで,本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また, 治療開始に先立ち,患者又はその家族に本剤の有効性及び危険性(特に,間質性肺疾患の初期症状,投与中の注意事項,死亡に至った症例があること等に関する情報)を十分説明し, 同意を得てから投与すること。
2.本剤の投与により間質性肺疾患があらわれ,死亡に至った症例が報告されているので,呼吸器疾患に精通した医師と連携して使用すること。投与中は,初期症状(呼吸困難,咳嗽, 発熱等)の確認,定期的な動脈血酸素飽和度(SpO2)検査,胸部X線検査及び胸部CT 検査の実施等,観察を十分に行うこと。異常が認められた場合には投与を中止し,副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
3.本剤投与開始前に,胸部CT 検査及び問診を実施し,間質性肺疾患の合併又は既往歴がないことを確認した上で,投与の可否を慎重に判断すること。
【効能・効果】
化学療法歴のあるHER2 陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)
【用法・用量】
通常,成人にはトラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回5.4mg/kg(体重)を90 分かけて3週間間隔で点滴静注する。なお,初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30 分間まで短縮できる。
【重要な基本的注意】
1.間質性肺疾患があらわれることがあるので,本剤投与開始前及び投与中は,臨床症状(呼吸状態,咳及び発熱等の有無)を十分に観察し,定期的に動脈血酸素飽和度(PaO2)検査, 胸部X線検査及び胸部CT 検査を行うこと。また,必要に応じて,血清マーカー(KL-6 等), 動脈血酸素分圧(PaO2),肺胞気動脈血酸素分圧較差(A-aDO2),肺拡散能力(DLco)等の検査を行うこと。なお,胸部CT 検査等の読影については,呼吸器疾患の診断に精通した医師の助言を得ること。また,患者に対して,初期症状があらわれた場合には,速やかに医療機関を受診するよう指導すること。
(略)
2.医療機関における適正使用に関する周知事項について
本剤については,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35 年法律第145 号)第79 条に基づき,承認取得者である製造販売業者に対し,「製造販売後, 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は,全症例を対象に使用成績調査を実施する」よう義務付けたので,その調査の実施にご協力願いたいこと。