2020年5月15日号
福知山医師会と府医執行部との懇談会が2月8日(土),福知山医師会館で開催され,福知山医師会から12 名, 府医から7名が出席。「医師の働き方改革」について,活発な議論が行われた。
日本の医療は医師の自己犠牲的な長時間労働により支えられており,医師の健康への影響や過労死の危険さえある現状を変えていく必要性から改革が行われる。すなわち,特定の医師個人への負担の固定化を防止するため,長時間労働の是正, 健康確保の措置,地域医療構想など医療提供体制における対応が行われる。
医師については,2024 年4月実施に向けての検討会が2017 年8月から行われており,枠組みは示されているものの,具体的な運用方法については未定である。今後の課題・検討事項として, 「B・C水準対象医療機関の定め方」,「評価機能・審査組織」,「具体的な時間管理・健康確保措置」, 「タスクシフト・タスクシェア」,「副業・兼業」等がある。 医療は他業種とは異なり,様々な特性がある以上,単一の時間外労働上限を設定し,規制することは不可能である。また,宿日直に関しても,夜間をすべて労働時間とするのか,技能向上のための研鑽は労働なのか等が議論されている。
時間外労働時間が年960 時間を上限としたA水準を基準として,やむを得ずその基準を超える場合(救急医療機関,在宅医療,高度な専門医療等) をB,研修医の技能修得のための適用をC-1, 高度な技能修得のための適用をC-2と設定し, これらの適用医療機関は都道府県が指定する。指定希望の医療機関は労働時間短縮計画を提出し, その取組み実績に対して評価受審,その結果を踏まえて指定可否が決定される。B水準は,2035 年度末には廃止され,C水準も縮減されていく。また,連続勤務時間制限として勤務開始から28 時間,勤務間インターバルが9時間と設定される。
医師の働き方改革や効率性に視点を置きすぎたタスクシフトは医療の安全性を損ねかねない。国民にとって安全な医療を守るため,医師による“メディカルコントロール”(医療統括)の下で業務を行うことが原則である。
看護師特定行為のパッケージ研修やナース・プラクティショナーおよびフィジシャン・アシスタントなどについて,看護師がキャリアアップして, 安全性が向上するのはよいが,特定行為は質の担保が重要である。
主に「健康管理」,「上限規制」,「割増賃金」について検討されているが,いずれも労働状況が把握される仕組みになっていないため,現行制度では特別な対策は取られていない。本人の自己申告により,複数の事業者間で通算して把握することも検討されているが,限定的な措置になる可能性がある。
医師の副業・兼業は他業種と異なり,自由意志ではなく地域医療を守るために行われている。日医が2019 年12 月に医療機関に調査した結果,「宿日直体制の維持困難」,「派遣医師の引上げ」が複数医療機関に勤務する医師の働き方に対する不安要素の上位に挙げられ,働き方改革の実施は地域医療の崩壊に繋がるとの懸念がある。
<主な意見>
医師は「時間」で働いておらず,患者の容体を見て動くため,時間外労働も当たり前の特別な仕事である。それを時間で区切られると,特に若い医師のモチベーションが人の命から時間にシフトしていく。医師の健康を守るため,過労死がないようにするためには,別の方法を考えなければ, このまま改革は進んでしまうため,会員各位のご意見を踏まえつつ,日医や京都府に働きかけていきたい。