保険医療部通信(第332報)

第2回近医連保険担当理事連絡協議会開催 初・再診料引上げに向け,積極的提言へ

 令和2年度第2回近医連保険担当理事連絡協議会が10月3日(土)に開催された。第1回に引続き,新型コロナウイルス感染防止の観点から,各府県をテレビ会議システムで繋いだオンライン形式による開催となった。

初・再診料引上げに向けて

 前回の協議で府医から提案した「初・再診料引上げの重点化」に沿って協議が行われた。まず,初・再診料の現状について,我が国の医療機関が高いレベルでかかりつけ医機能を担い,日本の医療を面で支えているにもかかわらず,その評価として不当に低すぎる,という認識が共有された。谷口府医理事は,諸外国と比較して安価で平等な医療システムは高度な診断技術を有する開業医に多くを負っていることを指摘し,基本診療料による評価の必要性を改めて主張した。
 次にその財源につき議論されたが,様々な見解が示された。消費税増収財源中,地域医療介護総合確保基金の財源が本来然るべしという意見(京都府,兵庫県)や,原点に立ち返って薬価引下げ財源を取り戻すべきという意見(大阪府,奈良県),診療報酬本体の医科・歯科・調剤の配分を見直すべきという意見(滋賀県)等があった。一方でコロナ禍の現在,財源に踏み込んだ議論は避けるべきという意見(和歌山県)もあった。また谷口府医理事は,特掲診療料のうち算定割合の低いものを廃止し,その財源を基本診療料に回せば財政中立のもと財源確保が可能である,というアイディアを示した。
 引上げに向けた現実的なアプローチとして,足元(地域での働きかけ)も含めて医政活動の重要性が改めて確認された。さらに,安心・安全で良質な医療提供体制を持続可能なものにするためには,医療機関の安定経営が必要不可欠であり,初・再診料はそのための唯一の原資であることを国民に理解してもらうことが極めて重要,との認識も共有された。濱島府医副会長は議論を総括するとともに,今世紀に入って以降,大規模な感染症のリスクが定期的に社会を襲っており,国は社会インフラとしてかかりつけ医機能を医療機関に期待する以上,そのコストも含めて正当に評価する必要がある,と指摘した。
 府医は今後,近畿各府県の意見をとりまとめ,日医執行部に提出する予定である。

オンライン初診の恒久化に断固反対

 次に,オンライン初診を含む電話等による診療が当面継続される方針が決定され,新たに就任した菅首相もオンライン診療の恒久化に意欲を示している情勢を踏まえ,オンライン初診の時限的特例措置につき協議が行われた。各府県ともオンライン初診はあくまでも時限的特例措置であることを強調,その恒久化には断じて賛成できないという点で共通しており,話題先行で経済界やマスコミに踊らされる世相に対する苦言とともに,「視診・触診・聴診が医師の本分」「対面診療は『規制』ではなく医療の原則」といった正論が述べられた。山下府医理事は,オンライン診療の運用に必要十分なルールが整備されていない点について指摘,このような状況では患者の安全が確保されないことはもちろん,医師が過大な責任を負わされかねない,と懸念を示した。
 最後に,奈良県における地域別診療報酬の動きの蒸し返しにつき,対応が協議された。奈良県医師会の反対にもかかわらず荒井奈良県知事が厚労省に,コロナへの対応として奈良県内の医療機関への診療報酬単価を1点11円に上げる旨の意見書を提出したが,その影響は限定的,との見通しが示された。とはいえ,全国統一単価を崩す突破口にされかねない動きであり,近医連としても絶対に容認できないことを確認した。

2020年11月1日号TOP