地域医療部通信 – 新型コロナウイルス感染症関連情報 第14 報 ~季節性インフルエンザ流行期に備えた~ 検査ならびに診療体制の変更について =地区会長・地区感染症担当理事合同連絡協議会(Web会議)を開催=

 厚労省は9月4日付事務連絡で今冬のインフルエンザ流行期に備えて,地域の実情に応じて発熱患者等を相談・診療・検査できる体制を整備することを求めております。この中では季節性インフルエンザと新型コロナウイルス感染症を臨床的に鑑別することは困難であるとした上で,発熱患者等が身近な医療機関を相談・受診し必要に応じて検査を受けられる体制について本年10月中を目途に整備したいとして,要件を満たした医療機関を「診療・検査医療機関(仮称)」として都道府県が指定することとしています。また,指定される医療機関には個人防護具(PPE)の配布支援も実施される予定です。
 また,10月2日付の厚労省健康局結核感染症課長通知により,行政検査としてのPCR検査および抗原検査を行う際に,標準予防策を講じた上での鼻腔拭い液(自己採取したもの)を検体とすることが認められることとなりました(医療従事者が鼻腔拭い液を採取する際はサージカルマスク等,眼の防護具,ガウンおよび手袋が必要)。これにより一般医療機関におけるPCR検査および抗原検査の普及とともに,インフルエンザの迅速診断キットを併せて各医療機関における診療体制が充実することが見込まれます。
 これらを受けまして府医では京都府との協議を重ね,10月7日(水)には急遽,地区会長・地区感染症担当理事合同連絡協議会をWeb会議にて開催し,今後の新たな季節性インフルエンザ流行期に備えた診療体制についての説明を行いました。
 以下,会議での説明要旨を掲載いたします。

1.季節性インフルエンザ流行期に備えての診療・検査体制について

●発熱者は,医療機関を直接受診するのではなく,まずかかりつけ医に電話相談する。医療機関は院内感染対策を講じ,患者はマスク装着で受診する。
●かかりつけ医を持たない発熱者は「新型コロナ相談センター(仮称)」に相談する。
●自院で発熱者の診療と検査を行うには他の患者と時間的・空間的に動線を分けるなど工夫が必要。
●診療には,標準予防策(サージカルマスク・手袋装着,必要時,目の保護)と手指消毒,環境消毒,換気の徹底が必要。

2.抗原検査(定性)の対象者について

●鼻腔ぬぐい液による抗原検査(定性)は,症状のある患者(発症2日目から9日目)に対して,行政検査として行われる。
●費用に関しては保険請求を行い,患者自己負担分は公費で賄われる。
●京都府との集合契約について
 コロナ検査は行政検査として実施するため,検査を行う医療機関は,府医を通じて京都府および京都市と集合契約を行う(府医へ申し込みを行う)。

3.新型コロナウイルス感染症の疑似症患者の届出について

 現在,国において疑似症患者の届出について,見直しがおり,入院症例に限る方向で検討中。患者(確定例)については,従来どおり全数を届出。

4.かかりつけ医における診療・検査医療機関(仮称)の指定について

●施設要件
(1)発熱患者等の受診の際の動線が分けられていること
(2)適切な感染対策が講じられていること
(3)必要な検査体制が確保されていること
(4)都道府県と行政検査の委託契約(集合契約・府医へ申し込みを行う)を締結していること
(5)自院の患者および自院に相談のあった患者である発熱患者等に対して,発熱等の症状が生じた場合には,電話で相談した上で受診する旨を院内に掲示すること

●機能要件
(1)自院の患者等を受け入れる場合は,院内掲示を行う等により,予め自院での受入れ対象患者や対応時間等を示す(例えば,「発熱などの場合は事前にお電話ください」など)こと
(2)都道府県等に対して,予め自院での受入れ対象患者や対応時間等を示した上で,その範囲で,患者から相談があった場合,原則速やかに患者の診療・検査を受け入れること
(3)検査については,鼻腔ぬぐい液検体による抗原簡易キット(抗原定性検査)またはPCR検査,唾液検体によるPCR検査により行うこと
(4)自院を受診した患者の検査結果が陽性であった場合には,速やかに保健所に連絡し,患者の状態を伝える等,患者の療養先の検討に協力すること

●報告要件
(1)日々の受診者数や検査数を新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(G-MIS)により入力すること
(2)新型コロナウイルス感染症等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)にかかりつけ医における必要な情報の入力を行うこと

●実施医療機関の公表について
 実施医療機関名は,原則,公表しない。かかりつけ医が相談に乗る体制を作ることから,検査を実施しない医療機関においては,検査を実施する医療機関へ患者の紹介ができることが望ましい。地域内で検査を実施する医療機関の情報が共有される方法を検討。

●実施医療機関への国からの支援について
 指定されることにより個人防護具(PPE)の支援が国から行われる。

5.新型コロナウイルス感染症に関する医療体制調査票(アンケート)について

 下記項目について,かかりつけ医における医療体制の調査を実施。
 ア 医療機関名,住所,電話番号,担当部署または担当者
 イ 実施内容
 診療・検査いずれも対応可能なこと,検査方法(鼻腔ぬぐい液検体による抗原簡易キット(抗原定性検査)またはPCR検査,唾液検体によるPCR検査)
 ウ 1週間単位の診療・検査対応時間

6.抗原検査(定性)キットについて

 現在,2社のメーカーの商品を5社の医薬品卸売販売業者がとりあつかっており,京都府において公平な配分がなされるよう調整を検討中。

≪当日の質問と回答≫

 Q 抗原検査を行って集合契約なしに保険請求すると査定されるとのことだが。

 A そのとおり。行政検査の一環であり集合契約(府医へ申し込みを行う)が必要。

 Q 抗原検査が陰性であった者に対してPCR検査は可能か。

  可能。府医検査センターを活用されたし。

 Q 抗原検査は結果が早く判明するが,発生届の提出は検査時と結果判明時の2回必要か。

 A 結果が出てからの1回でよいが,現時点(10月7日)においては陰性の場合も必要。

 Q 陽性者に対しては保健所が動くのか。

 A そのとおり。医療機関からの発生届により保健所が疫学調査を,また,入院医療コントロールセンターが入院調整を行う。

 Q 新型コロナウイルス感染症が2類相当から5類になるとの情報は本当か。

 A そのような議論はない。入院勧告の対象を限定する方向で検討されている。

 Q 受診・相談センター(仮称)は,どこに紹介するのか。

 A 診療・検査医療機関(仮称)として指定を受けた,現行の帰国者・接触者外来を紹介することを想定している。また,京都府・京都市ともに「帰国者・接触者相談センター」をリニューアルし,「新型コロナ相談センター(仮称)」として運用する予定。

 Q 自院の職員が感染した場合の補償はどうするのか。

 A 基本的には各医療機関にて対応いただきたい。府医KMAも活用されたし。

 Q インフルエンザの検査はしなくともよいとのことだったが現在はどうか。

 A 臨床診断で投薬も可能。今後も同様であるが,もし検査を実施されるのであれば,本日説明した方法で十分に注意を払い行っていただきたい。

 Q インフルエンザの臨床診断で診断書の発行はできるのか。

 A 臨床診断でかまわない。医師の裁量範囲である。

※ 今回の新しい検査ならびに診療体制については多くの疑問点等がおありのことと思います。府医への質問はファクスやメールにて事務局へお寄せください。「Q&A」としてとりまとめの上,後日回答させていただきます。

2020年10月15日号TOP