地区だより 京都北医師会 検案事情・孤独死・入浴死・Ai

監事 陶山 芳一

 京都市北区の人口は約13万人で、ここ数年北警察署管内における年間の死体検案件数は80~100件程度で推移しています。京都府全域での同件数は2,800件前後になります。死体検案は事故や外因死、または外因死の疑いのあるもの、死因の不明な場合に、地区警察署の検案室で行われ、特に事件性の高いものは法医学教室に解剖が年間150件程度依頼されています。検案は府警本部検死官、所轄の刑事、我々警察医の3者で行います。初動は地元警察で、地域で遺体が発見されたり救急搬送後死亡した場合警察が調査に向かいます。救急室で診断がつく病死(内因死)の場合は、死亡診断書が書かれることもあります。血圧や糖尿病で通院している高齢者が急に亡くなるなど明らかな病死の場合、かかりつけ医に死亡診断書または検案書を依頼することも実数は不明ですが最近多いようです。したがって、高齢化にもかかわらず、警察医の携わる件数はあまり増加していません。年間約100件のおよその内訳は、自殺が15~20件、心臓死、大動脈解離、脳出血など心血管病変による死亡が30~40件、入浴中の急死が15~20件、不詳の死が10~20件となっています。単一世帯が増加し、独居の方が死後に発見される「孤独死」は検案件数の約30%台でしたが、ここ数年で50%にまで増加しています。「孤独死」では経過が不明で死後変化のため死因が不詳となり、DNA鑑定による本人確認が必要なこともあります。衛生学的にも介護医療福祉関係者による孤独死予防対策、早期発見対策が必要です。また冬季には交通事故死亡者より多くの高齢者が入浴中に亡くなっています。遺体をCTで検査すると、副鼻腔、気管内、胃内、肺に湯水の吸引による所見が70~80%の症例で認められ、直接死因は溺死が多いと思われます。入浴後血圧低下によって脳血流が低下し意識障害から水没や、不整脈をきたすとされています。42度以上の高温環境に対して、老化による血管運動調節機構の機能不全が本態と思われ、外因と内因の要素が合わさった死亡と考えられます。特に冬季、高齢者に対する入浴の指導が重要です。90年代より低い解剖率を補うため死後画像診断(Autopsyimaging:Ai)が導入されていますが、京都府内の実施率は検案数の25%~30%と、熊本県の61%~55%に比べ低率です。また死後画像の読影力向上が関係者の目標になっています。

 死因究明等推進基本法が令和2年4月より施行されました。画像診断など死後の検査を活用してより正確な死因診断がなされ、死因統計や公衆衛生に活かされることを願います。検案に携わる京都府警察医33名の一人として今回発信させていただきました。

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