地域医療部通信 – 医療機関における新型コロナウイルス感染者発生時の行政検査について

 今般,厚生労働省より,院内感染の拡大防止の観点から,医療機関において新型コロナウイルス感染者が発生した際の医療機関における行政検査に関する考え方が整理され,下記のとおり厚生労働省より事務連絡がなされましたのでご連絡申し上げます。
 つきましては,会員各位におかれましても本件についてご了知いただきますようお願い申し上げます。

○ 医療機関の職員または患者に感染者が発生した場合には,適切な感染管理が可能となるよう,感染が疑われる者への速やかな検査を実施することが重要となる。

○ 新型コロナウイルス感染症に係る行政検査の対象については,「新型コロナウイルス感染症に係る行政検査に関するQ&Aについて(令和2年7月15 日時点)」(令和2年7月15 日付厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部事務連絡)Q 1において,以下のように示されている。

※上記の「地域や集団,組織等に属する者」に対する行政検査については個別具体的な検査対象者の感染の疑いに着目して行う検査ではないため,濃厚接触者に対する検査とは別のものとして行うのであり,検査対象者は濃厚接触者として取り扱うことはしないこと(14 日間の健康観察の対象としない)とされている。

○感染が発生した医療機関で検体採取が行われる場合,
 1)保健所職員が行う,
 2) 発生施設の医療従事者が行う,に加え職員の多くが新型コロナウイルス感染症に感染し当該医療機関内の医師等が検体採取等を実施できない場合には,
 3)その他の医療機関等へ協力を要請し出張方式で検体採取を行うことが想定される。

○ 3)の場合については,感染症予防事業費等国庫負担金を活用し,行政検査の外部委託により,感染者が発生した医療機関に看護職員等を派遣し検体採取を行うことができるチームをあらかじめ確保しておくことも考えられる。

○ なお,医療機関が平時に連携している医療機関等(以下「連携医療機関」という。)が,地域の検査体制が逼迫した場合に保健所に代わり検体採取又は検査実施が可能な見込みである場合には,その旨を保健所に連絡し,保健所から連絡を受けた都道府県,保健所設置市又は特別区(以下「都道府県等」という。)が,当該連携医療機関と行政検査に係る委託契約の調整を行うことも考えられる。

※ 当該委託契約の効果は遡及させることができることから,契約手続きに時間を要する場合などには,契約が締結されれば契約締結前に実施された検査についても契約に基づく補助の対象になることを都道府県等と連携医療機関の間で合意した上で,契約締結を待たずに,行政検査を実施することとしても差し支えない。

○その場合も以下の点に留意すること。
 ・検体採取に必要な滅菌綿棒等の資材は,都道府県等において準備すること。
 ・ 緊急の場合やあらかじめ調整している場合等は委託者や医療機関の感染防護や検体採取の資材を使用することも考えられるが,その場合,使用分は都道府県等において補充又は費用の負担をすること。

○ 2)の場合についても,3)の場合と同様に,保健所の指示の下,当該医療機関と行政検査に係る委託契約を行う必要があり,また,当該委託契約においても当該委託契約の効果は遡及させることができる。なお,医師が必要と認めた者を除き,「地域や集団,組織等に属する者」に対して一律の検査を実施する場合には,保険診療の適用外となる。

○ なお,現在,感染リスクのより低い唾液による検査が無症状者を含め可能となっており,また,有症状者には迅速に結果が判定できる抗原検査キットも活用できるようになっている。保健所や医療機関においては,唾液による検体採取を積極的に考慮するととともに,抗原検査キットを予め一定程度備えておくことも重要である。また,新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の活用等により,PCR 検査機器や抗原定量検査機器をさらに整備することも重要である。

2020年9月15日号TOP