保険だより – 新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取り扱いについて

 今般,新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れた医療機関等の診療報酬上の評価を適切に行う観点から,厚労省より,入院基本料の施設基準等に関する臨時的な対応が示されましたのでお知らせします。

 具体的には,定数超過入院や看護配置の基準,初診時の選定療養費等の当面の間における臨時的な取り扱いが示されています。

1.定数超過入院について

(1)「厚生労働大臣の定める入院患者数の基準及び医師等の員数の基準並びに入院基本料の算定方法について」(平成18 年3月23 日保医発第0323003 号)の第1の3において,保険医療機関が,医療法上の許可病床数を超過して入院させた場合の取扱いに係り,「災害等やむを得ない事情」の場合は,当該入院した月に限り減額の対象としないとされているところである。今般,新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れたことにより超過入院となった保険医療機関にあっては,この規定にかかわらず,当面の間,同通知第1の2の減額措置は適用しないものとすること。

(2)(1)の場合においては,「厚生労働大臣が指定する病院の病棟における療養に要する費用の額の算定方法」(平成30 年厚生労働省告示第68 号)の第4項第一号に掲げるDPC 対象の保険医療機関が医療法上の許可病床数を超過して入院させた場合の取扱いによらず,当面の間,従前の通り診断群分類点数表に基づく算定を行うものとすること。

2.施設基準の取扱いについて

(1)新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れたことにより入院患者が一時的に急増等し入院基本料の施設基準を満たすことができなくなる保険医療機関及び新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れた保険医療機関等に職員を派遣したことにより職員が一時的に不足し入院基本料の施設基準を満たすことができなくなる保険医療機関については,「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(平成30 年3月5日保医発0305 第2号。以下「基本診療料の施設基準等通知」という。)の第3の1(1)の規定にかかわらず,当面,月平均夜勤時間数については,1割以上の一時的な変動があった場合においても,変更の届出を行わなくてもよいものとすること。

(2)また,新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れたことにより入院患者が一時的に急増等した保険医療機関及び新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れた保険医療機関等に職員を派遣したことにより職員が一時的に不足した保険医療機関については,基本診療料の施設基準等通知の第3の1(3)及び(4)の規定にかかわらず,1日当たり勤務する看護師及び准看護師又は看護補助者(以下「看護要員」という。)の数,看護要員の数と入院患者の比率並びに看護師及び准看護師の数に対する看護師の比率については,当面,1割以上の一時的な変動があった場合においても,変更の届出を行わなくてもよいものとすること。

(3)上記と同様の場合,DPC 対象病院について,「DPC 制度への参加等の手続きについて」(平成30 年3月26 日保医発0326 第7号)の第1の4(2)②に規定する「DPC 対象病院への参加基準を満たさなくなった場合」としての届出を行わなくてもよいものとすること。

(4)(1)から(3)の届出を行わなくてもよいこととされた保険医療機関においては,新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れたことにより入院患者が一時的に急増等したこと又は新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れた保険医療機関等に職員を派遣したことにより職員が一時的に不足したことを記録し,保管しておくこと。

3.診療報酬の取扱いについて

問1 保険医療機関が,新型コロナウイルス感染症患者等を医療法上の許可病床数を超過して入院させた場合等は,どの入院基本料,特定入院料を算定するのか。

(答)
 当面の間,以下の取扱いとする。
<原則>
 実際に入院した病棟(病室)の入院基本料・特定入院料を算定する。
<会議室等病棟以外に入院の場合>
 速やかに入院すべき病棟へ入院させることを原則とするが,必要とされる診療が行われている場合に限り,当該医療機関が届出を行っている入院基本料のうち,当該患者が入院すべ
き病棟の入院基本料を算定する。
 この場合,当該患者の状態に応じてどのような診療や看護が行われているか確認できるよう,具体的にカルテ,看護記録等に記録する。
<医療法上,本来入院できない病棟に入院(精神病棟に精神疾患ではない患者が入院した場合など)又は診療報酬上の施設基準の要件を満たさない患者が入院(回復期リハビリテーション病棟に施設基準の要件を満たさない患者が入院した場合など)した場合>
入院基本料を算定する病棟の場合
 入院した病棟の入院基本料を算定する(精神病棟に入院の場合は精神病棟入院基本料を算定。)。
 ただし,結核病棟については,結核病棟入院基本料の注3の規定に係らず,入院基本料を算定する。
特定入院料を算定する病棟の場合
 医療法上の病床種別と当該特定入院料が施設基準上求めている看護配置により,算定する入院基本料を判断すること(一般病床の回復期リハビリテーション病棟に入院の場合は13対1又は15 対1の看護配置を求めていることから,地域一般入院基本料を算定。)。

問2 保険医療機関において新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れたことにより,特定入院料の届出を行っている病棟に診療報酬上の要件を満たさない状態の患者が入院(例えば回復期リハビリテーション病棟に回復期リハビリテーションを要する状態ではない患者が入院した場合など)した場合に,特定入院料等に規定する施設基準の要件についてどのように考えればよいか。

(答)
 保険医療機関において,新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れたことにより,特定入院料の届出を行っている病棟に診療報酬上の要件を満たさない状態の患者が入院(例えば回復期リハビリテーション病棟に回復期リハビリテーションを要する状態ではない患者が入院した場合など)した場合には,当面の間,当該患者を除いて施設基準の要件を満たすか否か判断する。

問3 新型コロナウイルス感染症患者等を第二種感染症指定医療機関である保険医療機関に入院させた場合,A210 の2二類感染症患者入院診療加算を算定できるか。

(答)
 算定できる。ただし,当該点数を算定できる入院基本料を算定している場合に限る。

問4 新型コロナウイルス感染症患者等を個室に入院させた場合には,A220 -2二類感染症患者療養環境特別加算を算定できるか。

(答)
 問3と同様に,算定できる。ただし,当該点数を算定できる入院基本料を算定している場合に限る。なお,A210 の2二類感染症患者入院診療加算との併算定も,要件を満たせば可である。

問5 新型コロナウイルスの感染が疑われる患者が「帰国者・接触者相談センター」等に連絡し,その指示等により,200 床以上の病院で,帰国者・接触者外来等を受診した場合,初診時の選定療養費の取扱いはどうなるか。

(答)
 この場合,「緊急その他やむを得ない事情がある場合」に該当するため,初診時の選定療養費の徴収は認められない。