2021年4月15日号
新型コロナウイルス感染拡大防止のため,可能な限り書面による議決権行使をもって議案の決議を行うこととし3月13日(土)に開催した。代議員108名のうち98名より書面による議決権行使書の提出があり,当日はWeb会議システムを使用した配信を行い代議員47名の参加を得た。
松井府医会長の挨拶に続き,「令和2年度庶務および事業中間報告」,「令和3年度京都府医師会事業計画」,「令和3年度京都府医師会予算」が報告され,その後地区からの代表質問ならびにその答弁が行われた。
続いて議事に移り,第1号議案「令和3年度京都府医師会費の賦課徴収および減免に関する件」は,事前に議決権行使書による採決が実施され,賛成多数で可決したことが報告された。
日医代議員・予備代議員補欠選挙は,「日本医師会定款第16条第3項および第4項」ならびに「一般社団法人京都府医師会における日本医師会代議員・日本医師会予備代議員選挙規定」に基づいて行われた。日医代議員であった松井府医会長が,昨年日医理事に就任したことにともない,日医代議員補欠選挙を行うとともに,予備代議員であった畑府医理事の日医代議員立候補にともなう,日医予備代議員補欠選挙を実施。締切日に候補者が定数を超えなかったため,「本選挙規定第14条」により投票を行わず,日医代議員に畑府医理事,日医予備代議員に角水府医理事がそれぞれ当選した。
続く協議では,従来の決議の形式ではなく,コロナ禍において社会の医師に対する期待・役割は大きくなっており,これらに対応するため一致団結していくことを決意表明として採択した。
松井 府医会長
西村 議長
松井府医会長は,冒頭,新型コロナウイルス感染症の状況に触れ,府内の新規感染者数は1月17日に154人とピークに達したが,3月に入り一桁台に減少しているものの,一週間平均で見ると3月5日に5人であった新規感染者は,昨日には13.4人と3倍近く増加傾向に転じていることに懸念を示した。また,変異株の報告もあり,今後の感染拡大状況を注視するとともに,今は第3波の状況をしっかりと振り返り,第4波を想定し備える時期にあるとの考えを示した。
感染症対策の基本は,「感染者の早期発見と早期隔離」,「積極的疫学調査の実施による感染拡大の制御」,「重症者の治療の確保」であるとし,府医ではドライブスルー方式のPCR検査センターの設置,かかりつけ医による唾液PCR検査の体制整備,鼻腔ぬぐい液による抗原検査の実施など段階的にかかりつけ医が,より安全に,より迅速に感染確認のできる体制整備を進めてきたと説明し,第一線で発熱患者等の診療・検査に尽力いただいているすべての医療従事者に謝意を示した。
また,かかりつけ医が発熱患者等を診療・検査することによって,行政は積極的疫学調査に力を入れることができ,クラスターの拡大を防げるとして,今後もかかりつけ医による発熱患者等の診療・検査は,感染症対策において重要な役割を担うと述べ,会員のさらなる協力を求めた。
次に,年末年始の状況を振り返り,感染者の急増により,12月29日に340人だった待機陽性者は,1月3日には546人にまで増加し,自宅での待機を余儀なくされる状況が続く中,特に患者数の多い京都市と協議の上,12月29日から1月5日までの1週間,府医役員が市から依頼のあった50人以上の待機陽性者に毎日電話による健康観察を行ったと報告。すぐに入院が必要であると判断した陽性者23人について,市内の病院も年末年始で対応困難な状況が続く中で京都府医療コントロールセンターには可能な限りの入院対応をいただいたが,誠に残念ながら,絶対に避けなければならないと思っていた自宅待機のまま死亡された事例が起こったとし,このことを深く受け止め,今後二度と同じことが起こらないよう感染拡大防止策と医療提供体制整備の両面から,府・市とともに根本的な体制の見直しの検討を行っていると報告した。
また,京都府病院協会,京都私立病院協会とも病床機能を明確化するために協議を行っていることを明らかにし,重症者・中等症・軽症・無症状・感染後の回復期の患者受入れを行う後方支援病院との役割分担・連携強化を行うとした。感染者が急増した場合は,入院は医療を必要とする人を基本とし,軽症・無症状は宿泊療養あるいは自宅療養で健康観察を行うと同時に,宿泊療養者・自宅療養者の重症化に備えるため陽性者外来を設置し,必要に応じて検査を行い速やかに医療へ繋げるように整理を行っているとして,入院体制の整備を条件に,自宅療養者の健康観察は,かかりつけ医に依頼したいとの意向を示した。
続いて,ワクチン接種について,京都では3月5日に医療従事者への優先接種が開始され,4月には高齢者の住民接種が予定されているとし,6つの市が個別接種をメイン,18の市町村では集団接種をメインとし,2つの市は併用での実施を予定していると説明。それぞれの地域の事情に合わせ行政と協調のもと,接種を希望する府民に円滑かつ安全に接種が行われるよう体制整備を依頼した。また,予防接種の実施について,京都府と京都府市町村会,消防長会,京都府病院協会,京都私立病院協会,京都府薬剤師会,京都府看護協会が協定を結び,それぞれ協力して行うことを確認しているとした。現状は予定通りにワクチンが届いておらず,また入荷の予定はされているものの,接種対象者に対して十分な量にはほど遠い状況であり,ワクチンの入荷状況を見ながら臨機応変な対応が必要であるが,各地域で準備をいただいている中で,混乱のないよう逐次情報共有を行いながら進めたいとして,理解を求めた。
最後に,新型コロナウイルス感染症はこれまで経験したことのない世界的規模の広がりを見せ,未だ終息が見通せない状況であるものの,「平時には気付かなかった医療の大切さ」,「必要な時に必要な医療が受けられるという安心感はなにものにも代えがたいものであること」,「必要な医療を守るために我々医療を担当する医師をはじめとする医療人と行政の連絡・連携がいかに重要かということ」,「医師・医療機関が連携することによって必要な人に必要な医療を切れ目なく提供することができるということ」など多くのことを学んだとし,これらの経験を生かして会員の先生方と一緒に一層コロナ対策に力を注ぎ,一日も早い終息を目指すとともに,コロナ後も安心・安全な社会を守り,必要な医療を担うため次年度も活動を行うとして,挨拶を締めくくった。
代表質問では,東山,福知山の2地区から代議員が質問に立ち,医療が抱える課題について質疑が行われた。質問内容および執行部の答弁(概要)は次のとおり。
◆安住 有史 代議員(東山)
〔「地域医療構想」,「医師偏在対策」,「医師の働き方改革」について〕
安住 代議員
2019年のコロナ流行以前に政府が掲げていた「地域医療構想」,「医師偏在対策」,「医師の働き方改革」という三大施策の現在の状況を,府医が把握している範囲でお聞かせ願いたい。
また,地域医療構想調整会議では病床機能別に病床数を再編成するというものだったが,新型コロナウイルス感染症の感染拡大による医療逼迫という事態を経験し,病床機能区分や病床数確保に対する考え方も変化していると考える。今後,会議が再開された際の府医としての取組み方についてお聞かせ願いたい。
◇小野 府医副会長
小野 府医副会長
小野府医副会長は,冒頭,厚労省は2040年の医療提供体制の構築に向けて,地域医療構想,医師の働き方改革,医師偏在対策を「三位一体」で推進していく方針を示しており,この3つの課題が互いに関連していることは事実であるとした一方で,医師の働き方改革を拙速に強行すれば,医師の献身的な労働によって辛うじて支えられている地域医療の崩壊を招きかねない状況となり,医師偏在対策についても,そもそも偏在を生じた経緯をしっかりと捉えなければ,医師の強制配置や開業規制に道を開くだけの対策となる危険性があるとし,医療提供体制全体の最適化を念頭に,多方面への影響を考慮に入れた検討が不可欠であるとの考えを示した。
次に,医師偏在対策について,厚労省「医療従事者の需給に関する検討会」の下に設けられた「医師需給分科会」を中心に2015年から検討が開始されているとし,医師の需給は,マクロ的には医師の労働時間を週60時間程度に制限するとした場合,2029年頃に均衡する,言い換えるとそれ以後は過剰になるとの推計がなされていると説明。一方で,現実の議論では,地域別・診療科別の偏在,研修医・専攻医のシーリングの影響などミクロの視点も重要であるとの認識を示した。
「医師需給分科会」は本年3月4日までに計37回開催され,すでに4回の中間とりまとめが行われているが,検討開始から5年を経てもなお明確な成果が得られていない現状は,この問題の奥深さを物語っていると述べた。
京都府内においても医師偏在は大きな課題であるとし,府医も参画して昨年3月に制定された「京都府医師確保計画」を概説した。丹後医療圏を医師確保に取組むべき最重要医療圏と定めた他,南丹,中丹医療圏においても二次医療圏より小さな単位で救急医療等の対策を必要とする「医師少数スポット」が複数あり,それぞれ中核的医療機関と連携して安定的に医師確保を図ると説明。一方,医師数の多い京都・乙訓医療圏においても別の意味で大きな課題があるとし,京都府は全体としては全国の中でも医師数が多いことから,臨床研修医や専門医制度における専攻医の募集定員のシーリングが課せられ,基幹病院における高度急性期医療を維持するための医師確保において大きな制約となりつつあるとした。また,若手医師にとっても,信頼される医師となるためにしっかりとした研鑽を積むことができる環境確保は不可欠であり,府医としても「京都府全体で良医を育てる」との理念の下,京都府地域医療支援センター(KMCC)とも連携を図り,医師の育成の段階から地域医療の確保に努め,引続き安定的な医療提供体制の確保のため注力していくとの意向を示した。
続いて,働き方改革について,2017年から厚労省「医師の働き方改革に関する検討会」が,次いで2019年からは日医常任理事として城守府医顧問も参画して「医師の働き方改革の推進に関する検討会」で検討が進められ,昨年12月に中間とりまとめが公表されたと説明。本年2月には関連する医療法等の改正案の閣議決定がなされ,3年後の2024年4月から,医師の時間外労働の上限規制が開始されるとした。医療機関の性質により,A・B・Cの3つの水準が設けられ,A水準は,労災認定基準を考慮した年960時間,月100時間を上限とする標準的な医療機関の水準。B水準は,地域医療確保の観点から上限を年1860時間とする大学病院や基幹病院などの医療機関の水準。C水準は,臨床研修医や専攻医などを対象に一定の期間集中的に技能向上のための診療を必要とする医師のための水準。これらの3つの水準を軸に,B水準,C水準の指定医療機関の要件やフォローのあり方を今後詰めていく段階であると説明した。
新型コロナウイルス感染症をはじめとする新興感染症の感染拡大や頻発する自然災害への対応,宿日直の許可基準の不統一,府内の病院の多くが依存する大学病院からの派遣医師の労働時間の取り扱いなど,今後さらに明確化していくべき課題が多く残されており,地域医療の確保には拙速な規制は回避する必要があるものの,勤務医の健康にかかわる問題として安易に先延ばしすべきでないことも明らかであるとした。
京都府においても医療審議会の下に「働き方改革検討部会」を設置し,超過勤務の実態把握や各医療機関への支援策等の具体的な方策を検討することとなっており,府医も構成員として参加予定であるとした上で,個別医療機関においても,タイムカードによる労働時間の把握や医師事務作業補助者の活用をはじめとするタスクシェアやタスクシフトなど改善への取組みが少しずつ見えてきており,府医としても着実な進展に向けて対応していく所存であると回答した。
◆井土 昇 代議員(福知山)
〔コロナ感染症対策について〕
井土 代議員
①コロナ感染症が発生し,1年が過ぎた。日本では1月現在第3波の感染増が続いており,2度目の緊急事態宣言が発令された。この時点では,医療機関へのコロナ患者受け入れが,多くの私立病院ではできていないことが取り沙汰されている。しかしながら中小病院では病棟数が少なく,ゾーニングができない,陰圧室の設備がない,看護師等の人員確保不能等,数々の解決すべき問題がある。1床につき何百万円出します,ということだけでは解決できない。コロナ対応していただける病院,病床がたくさんあることは,我々開業医にとって有り難いことではあるが,裏を返せば,コロナ対応のベッドが増えれば増えるほど平時の医療が受けられなくなる危険性が高くなる。また,今は緊急事態などではなく,むしろ非常事態であり,平時の規則では医療提供体制を維持することは困難となっている。一時的に人員の配置基準を撤廃して必要な所にフレキシブルに人を移動できるように提案し,崩壊した医療提供体制を再構築すべきではないか。以上の状況を府医はいかにお考えか。今後の方針につき,お教え願いたい。
②地域医療構想を厚労省はこれまでどおりのコンセプトで進めていくと言っている。コロナの体験を踏まえ,基本的な考え方も含めて抜本的に見直すべきと思うが,いかがか。
◇北川 府医副会長
北川 府医副会長
北川府医副会長は,冒頭,地域医療構想を巡る中央情勢に触れ,新型コロナウイルス感染症対応を踏まえた今後の医療提供体制や地域医療構想のあり方については,厚労省「医療計画の見直し等に関する検討会」や「地域医療構想に関するワーキンググループ」で協議され,昨年12月に報告書が出されていると説明。報告書には,次期医療計画に「新興感染症等の感染拡大時における医療」を追加し,5疾病5事業から6事業になることが記載されることになるとし,新興感染症が事業として位置付けられ,病床や人材の確保などについて取組みが進むのであれば,重要なことであると述べた。
今後の地域医療構想に関する考え方・進め方については,「感染拡大時の短期的な医療需要には,各都道府県の医療計画に基づき機動的に対応することを前提に,地域医療構想については,その基本的な枠組みを維持しつつ,着実に取組みを進めていく」と記載されており,厚労省は基本的な考え方は変えていないが,具体的な工程の設定については,「新型コロナ対応の状況に配慮しつつ,都道府県等とも協議を行い,感染状況を見ながら検討する」という表現に留められていると説明した。
京都府においては平成29年3月に「京都府地域包括ケア構想(地域医療ビジョン)」が,病床の機能分化と連携を進めるための地域医療構想を含め,地域に必要な医療提供体制と地域包括ケアを総合的に確保するという趣旨で策定されており,京都の独自性が発揮されているとした。今後の地域医療のあり方については,新型コロナウイルス感染症がもたらした地域医療・介護・生活への影響を地域の行政・関係者間で十分に検証を行い,また,今後の医療計画の議論の中で,特に国が感染拡大に備えてどのような方法で病床を確保しようとしているか注視し,地域で協議の上,体制を整えていくということが重要であるとの考えを示した。しかしながら,検討の場である調整会議を対面で開催できる状況にはなく,国に対して工程の設定について慎重に検討するよう日医を通じて求めたいとした。
府医では,これまでも地区医の協力を得ながら,「在宅医療に関する調査」や「これからの医療を考えるアンケート」などを実施し,国の分析だけでは判断しえない地域の現場感覚・肌感覚での医療ニーズを調査することで,地域の議論に役立てていただくよう努めてきたとし,今後の地域医療構想の基本的な考え方に関する議論の材料とするため,コロナ感染症による地域医療への影響についても同様の調査を実施したいと述べ,協力を求めた。どの地域においても在宅医療・かかりつけ医機能の重要性は確実に増していくので,立ち止まることなく,医師会の重要な事業として進めていきたいとの考えを示した。
続いて,新型コロナウイルス感染症について,昨年11月から第3波までの感染者の特徴として,感染源不明者の割合の増加,高齢者感染者数の増加,医療・高齢者施設,保育園等での集団感染の多発などを挙げた。感染拡大時の医療体制への影響については,入院患者が急増し,年末から1月末まで入院患者は250人を超え,病床占有率は80%と高水準が続いたと説明。京都府医療コントロールセンターの尽力により,的確な調整が行われていたが,年末年始においては自宅で入院調整,待機患者が増え重症化する方がおられ,残念な事例が起き,さらには,コロナ疑い患者や発熱患者だけでなく,一般の救急患者の搬送受入れにも大きな影響があったと振り返った。
今後いつ感染再拡大を生じてもおかしくない予断を許さない状況が続いているものの,今はこれまでの経験を基に備える時期にあるとし,早期の拡大兆候を掴むためのモニタリングの実施,コロナ患者の受け入れ病床の増床,病院からの後方搬送先の整備,軽症・無症状を可能な限り宿泊施設や自宅で診られる体制の向上などの対策を挙げた。福知山市では,新型コロナ感染症に対応して,日ごろからの関係性を土台とした病院の役割分担,医師会による病院支援が行われたことに敬意を示した。
また,病院の負担軽減や再感染の早期把握にも繋がる京都府・医師会京都検査センター事業,かかりつけ医のない発熱患者等への診療・検査体制事業の両事業についても地区医・会員の協力を得ながら進めていきたいとの意向を示した。
京都府・医師会京都検査センターの検査実施件数は2,700件を超え,発見陽性者数も200人を超えているとし,また,発熱患者の診療・検査体制について約100医療機関は,自院の患者以外の患者も引き受けていただき,11月からの約4か月間で患者数が2,500人を超えていることに対し,両事業に協力いただいている会員に謝意を述べた。
医療体制については,国からの支援金,医療法上の緩和措置,診療報酬上の評価,特例的な対応等により環境は整いつつあるものの,マンパワーの確保や病床整備は簡単でないことはご指摘のとおりであるとした上で,少しでもフレキシブルな対応をするためには,災害対策と同様に地域の状況に応じた事前の話し合いが重要であり,様々な感染対策がなされても,非常事態が生じた場合は,災害医療体制として逼迫した地域を可能な限り支援していきたいと回答した。
2021年度 京都府医師会費割当表
○賦課割合 A=100 : B1=18 : B2=4 : C=0 : D=4
A会員以外の会員の会費月額100円未満は四捨五入
○減免額
<参考>
会費賦課徴収規定第8条第3項
医業収入が一定額以下かつ医業所得が一定額以下のA会員については,その 理由を具した申請により,理事会の議を経てこれを減免することができる。
会費賦課徴収規定第8条第4項
満80歳に達したA会員(高齢者A会員)については,その翌月より会費を減免する。
会費賦課徴収規定第9条第1項
満80歳に達したB1会員,B2会員及びD会員については,その翌月より会費を免除する。
会費賦課徴収規定第9条第2項
前条第4項の会員のうち,医業収入が一定額未満の者については,その理由を具した申請により,理事会の議を経てこれを免除することができる。