2021年12月15日号
令和3年10月2日(土)日医主催,府医主管の下,「令和3年度全国医師会勤務医部会連絡協議会」を府医会館と全国の都道府県医とをオンラインでつなぐ形態で開催。本来であれば,昨年度に開催する予定であったが,新型コロナウイルス感染症の蔓延で1年の延期が決まり,加えて再度の延期はないことが日医,勤務医委員会で決められたため必ず会の実現を目指せる形での開催となった。
今回のメインテーマについては,医師会全体が総力を挙げて,勤務医の先生方とともに一丸となって取組んでいくことの重要性を全国に発信するため,「勤務医とともに歩む医師会の覚悟 ~医師会が守るべきもの,変えるべきもの~」とした。
また,昨今,日医は,組織力の化を大きな目標に掲げており,そのための方策として,勤務医の医師会入会を促進することの重要性を訴えている。その仕掛けの一つとして打ち出されたのが臨床研修医の入会無料化であるが,一定の効果が見られるものの,研修期間終了後の退会が後を絶たず継続課題として残っている。府医としても,入会促進については様々なセクションでテーマとして掲げており,いろいろな角度から議論を交わしている。
冒頭挨拶に立つ松井府医会長
総合司会 上田府医理事
「専門医制度の行方 ~理想と現実,目的と結果の齟齬~」
シンポジウムⅠ 座長 小野府医副会長
冒頭,座長を務めた小野府医副会長は,専門医制度に携わるステークホルダーの変遷として,様々な立場から見た「専門医制度」について触れ,専門医制度の根幹を支え医療現場”の多様な声(専攻医,専門医および研修医療機関)の反映の必要性を訴えるとともに,専門医制度機構・各学会が育成した「専門医」の“質の評価”を確実に行うこと,また「専門医制度」の活用のためにかかりつけ医との密接な連携の必要性を強調した。その後,シンポジストから市中急性期病院や医師不足地域の地域中核病院,女性医師,専門医教育から見た「専門医制度」が取り上げられ,多角的に問題が提起された。その中で現実に専攻医や指導医が混乱の中でもがいている状況を示した上で,シーリング(地域貢献率)適応は,真の医師不足地域への医師供給には無力であることが示されるとともに,若手の教育だけではなく,医師が一生学び続け,知識や技術をアップデートし続けられる制度設計を期待する声が上がった。このほか,国民の関心は,良い医療を支える「専門医教育の質」にあり,その本質は妥当で信頼性のある「学習者(専攻医)の評価」にあるとの見解も示された。
府医としては専門医のシーリングがなされる中,「京都で良医を育て,全国に送り出す」ことをスローガンとしており,シンポジウムⅡの内容に繋がる内容としての見解も示された。
「研修医,若手医師に対する医師会の本気度を問う」
シンポジウムⅡ 座長 加藤府医理事
座長を務めた加藤府医理事は,府医が展開している研修医事業について触れ,全国でも同様の取組みが進むことで,研修医のボトムアップを期待した。
シンポジウムでは,府医の研修医事業が歩んできた「道のり」について紹介し,様々な難局,紆余曲折を経て現在の研修医事業が展開されていることが示されるとともに,実際の取組みを紹介。会を進めていく中で,年々ブラッシュアップを試み,それにともない出てくる課題にどのように向き合い,乗り越えてきたかについて言及した。また,若手医師,女性医師のキャリアパスに医師会ができること,やるべきこととして,若手,女性を組織に組み込むこと(スポンサーシップ),心理的安全性を担保すること,人の育成を大切にする(=「失敗からの学習」を重視)ことの重要性が示された。
医師会としては,若手医師,優秀な若手指導医,それらをつなぐ場を提供する医師会,全医師会が支援に前向きになることのほか,より一層の臨床研修指定病院,行政との連携についても必要と考える。
シンポジウムⅠ
シンポジウムⅡ
本来であれば,2日目に勤務医交流会を展開し,府医で実際に行っている「臨床研修屋根瓦塾KYOTO」を体験してもらう予定であったが,膝をつき合わせての取組みが叶わなかったため,「臨床研修屋根瓦塾KYOTO」がわかる15分程度の短編映画を,松竹撮影所の協力の下,実際に携わっている若手医師自らがカメラの前に立ち製作し,オンラインで配信した。
前述のとおり,「臨床研修屋根瓦塾KYOTO」も現在の形態に至るまでに,険しい道のりを歩んできた。構想当初は研修指定病院によってなかなか理解が得られず,時には府医の担当理事が臨床研修指定病院に赴き,趣旨を説明する場面もあった。今の研修医事業があるのはこういった地道な努力と,医師会と臨床研修指定病院のつながりのみならず,行政の参画が非常に重要なパーツとなったことは明白である。
この後,参加者に対して「きょうと宣言」を示し,全会一致で採択され,盛況理に幕を閉じた。