府市民向け広報誌『Be Well』第94号『ロコモ』

 府医では府民・市民向け広報誌「BeWell」,VOL.94「ロコモ」を発刊しました(本号に同封)。
 各医療機関におかれましては,本紙を診察の一助に,また待合室の読み物としてご活用ください。
 本誌に関するお問い合わせは,府医総務課(電話:075-354-6102,FAX:075-354-6074)までご連絡ください。

VOL.94「ロコモ」
(A3版,見開き4ページ)

解説

高生会整形外科クリニック  太田 光彦

【はじめに】
 超高齢者社会を迎えた我が国の問題として平均寿命と健康寿命の差が埋まらないことが挙げられます。男性で約9年,女性で約12年の差が縮まらず要支援,要介護者が増加しています。平成28年度厚生労働省国民生活基礎調査によりますと,介護が必要になった主な原因は「運動器の障害」が22.3%と最も多く,次いで,「認知症」18.0%,「脳血管疾患(脳卒中)」16.6%,「高齢による衰弱」13.3%となっています。介護を必要とする高齢者を少なくすることが課題です。その対策としてロコモティブシンドローム(以下,「ロコモ」という),フレイル,サルコペニアといった概念が提唱されています。ロコモはフレイルの前段階と考えられ,ロコモの予防が超高齢者社会において健康寿命の延伸につながると考えられます。

【フレイル,サルコペニアとは】
 フレイルとは加齢にともなう予備能力の低下のためにストレスに対する回復力が低下した状態で要介護状態に至る危険性が高いと考えられています。
 フレイルは身体的,精神・心理的,社会的要因など高齢者の持つ幅広い問題点を含んだ多面的な概念です。サルコペニアは活動性の低下,低栄養が主体で,「進行性,全身性に認められる筋肉量減少と筋力低下であり,身体機能障害,QOL低下,死の危険性を伴う」と定義されています。

【ロコモティブシンドローム(略称:ロコモ,和名:運動器症候群)とは】
 「運動器」に障害が生じることで,立つ,歩くなど,移動機能が低下した状態を「ロコモティブシンドローム」といいます。
 運動器は,体を支える骨,可動部分である関節軟骨,椎間板,体を動かす筋肉,制御機構としての神経系で構成されています。これら構成要素に発症する頻度の高い疾患として骨粗鬆症,変形性関節症,脊柱管狭窄症があげられます。これら運動器が障害されると疼痛,関節可動域制限,筋力低下,バランス力低下をきたします。症状が進行すると,要支援・要介護になる危険性が高くなります。

【ロコモの予防】
 ロコチェックでロコモの啓発,ロコトレで運動機能の維持改善に努めることが大切です。
 「ウォーキング」や「簡単な体操」,あるいは「日常的な家事」など楽しみながら長く続けられる運動を習慣にすること,運動習慣とともに食生活に気を配ることも大切です。

 ロコモの啓発,予防はかかりつけ医の大切な業務のひとつです。ぜひ同封のBeWellを活用してください。

2021年2月15日号TOP