2021年1月15日号
京都市西陣医師会と府医執行部との懇談会が10月13日(火),Webで開催され,京都市西陣医師会から9名,府医から7名が出席。「発熱患者増加時の患者対応」,「コロナ補助金申請」,「オンライン資格確認」,「LINEの診療アプリ」をテーマに活発な議論が行われた。
〈注:この記事の内容は10月13日現在のものであり,現在の状況とは異なる部分がございますのでお含みおきください〉
今冬のインフルエンザ流行期に備えて発熱患者を相談・診療・検査できる体制を整備すべく,行政・地区医と協議を重ねた。その協議内容と今後の新たな診療体制について概要を説明した。
発熱患者はまず,かかりつけ医に電話相談し,受診時にはマスクを装着する。医療機関は感染対策を講じ,他の患者と時間的・空間的動線を分ける工夫をする。
かかりつけ医を持たない患者は「きょうと新型コロナ医療相談センター」に相談する。この相談センターは,従来は,京都府と京都市が別々に相談センターを運営されたが,府と市で一つに統合され,新たに設置される予定である。
厚労省から10月2日に検査方法等の変更の通知が発出され,鼻腔拭い液を用いて各種検査の実施が可能となった。実施する医療機関は,府医を通じて京都府・京都市と集合契約を締結する必要がある。
コロナの抗原定性検査キットとインフルエンザ迅速検査キットは同じ検体処理液をそのまま使用できる。つまり1度の検体採取で同時検査が可能である(但しコロナ→インフルエンザの順のみ)。また,両検査を1つのプレートで実施できるキットも発売予定である。
施設・機能・報告要件を満たした医療機関は府から「指定医療機関」として指定を受け,国からPPEが支給される。医療機関名は原則非公表のため,各地区で検査実施の医療機関の情報を共有する方法を検討してほしいと要望した。
◇「以前はインフルエンザの検査をしない方向だったが,する方向に変わったということでよいか」と質問が出された。
鼻腔検査なら比較的安全に採取可能で,コロナの抗原検査も鼻腔から採取できる。両方一度に実施できるメリットもあるので,インフルエンザ流行時にはこのような方法で実施してほしい。もちろん臨床診断のみでインフルエンザの治療も可能であると回答した。
◇「抗原定性検査キットを不足なく配布予定とのことだが,不足する可能性はないのか。また,不足した場合はPCR検査と併用する考えでよいか」と質問が出された。
現在2社がキットを作成しており,うち1社は増産体制に入っている。それでも不足する可能性が考えられるため,詳細が判明次第,知らせる。また,集合契約した医療機関は唾液によるPCR検査もできるので,PCR検査との併用は可能である。唾液PCR検査の場合は,結果が翌日になるため,もしインフルエンザ検査が陰性の場合はPCR検査の結果が出るまで自宅待機するよう患者へ伝えてほしい。なお,唾液によるPCR検査ができない場合は,府医の相談センターに連絡すれば,翌日,ドライブスルーでのPCR検査を斡旋する。
◇「鼻腔拭い液での抗原検査の場合,感度は5~7割と言われている。PCR陰性の場合,不安が残るが,一般の患者への周知が必要ではないか」と意見が出された。
PCR検査はどうしても偽陰性が出る。鼻腔の抗原検査はさらに感度が落ちる。府医のPCR検査センターでは,検査した患者が陰性の場合,かかりつけ医に陰性報告を行うが,その際に偽陰性の可能性もあるため,少なくとも症状消退後10日間の経過観察期間を設けるよう依頼していると説明した。
◇「インフルエンザの陰性証明を求める患者が多い。周知してほしい」と要望が出された。
日医は当初,インフルエンザの陰性証明を出さないよう通達していた。結果が陰性だったとしても,陰性の証明になるかというと医学的な問題があるので出すことができないと患者に説明し,どうしても欲しいと依頼を受けた場合は,結果を明記するだけに留めるべきとした。
また,コロナの陰性証明は,現在も出さないよう通達がある。集合契約をして唾液PCR検査をしている医療機関においては,陰性証明のための検査はできないと説明した。
◇「風評被害を懸念している。スタッフの中でも医療従事者であることを隠している者もいる。マスコミ等への府医の対策を聞きたい」と質問が出された。
10月に厚労省の分科会でワーキンググループができ,そのうちの1つに風評被害,社会問題のグループができた。10~11月中には厚労省から意見,方針が出てくると思われるので,府医としてはそれを待ってからの対応になる。各地区(特に府内)の懇談会でも問題に上がっており,どのように広報していくかは課題であると回答した。
◇「地区で検査実施の医療機関の情報を共有する方法として,アンケート等で情報を得たものを秘密保持の上で地区内の医療機関へ情報提供することは可能か」と質問が出された。
各地区で事情が異なり,共有したい地区,したくない地区それぞれある。地区内で議論して,共有するか決めても構わないと回答した。
新型コロナウイルス感染症対策のため,国は6月に一次・二次補正予算,9月に緊急支援分の合計3兆円を医療機関への支援として計上している。下記のとおり各種支援金の概要を説明し,未申請の医療機関は内容を確認の上,是非手続きしてほしいと要望した。
①医療機関・医療従事者への交付金
京都府では慰労金は現在7割が申請,感染拡大防止対策等に要した費用等を申請した医療機関は153件のみである。申請期限は令和3年2月28日。
②幅広い業種が対象となる補助
家賃支援・雇用調整助成金・IT導入補助金など。
③融資
各種融資についても医療機関に優遇される内容である。
その他,先程のテーマにもあった「指定医療機関」への支援については京都府と検討中である。今後府から発出される公報を確認されたい。府医からも詳細が判明次第周知する。
令和3年3月から開始される医療保険のオンライン資格確認の導入に向け,厚労省は6月25日に「医療情報化支援基金に関するポータルサイト開設のお知らせ」を発出,8月7日に顔認証付きカードリーダーの申し込み受付を開始し,9月初旬に案内リーフレットの配布を開始した。
顔認証付きカードリーダーは無償提供(診療所は1台,病院は3台まで)されるが,令和5年3月までにシステムを導入しないと,有料となる。また,オンライン資格確認にともなう設備の導入費用は補助されるが,上限があるため一部負担が生じる。
導入のメリット・デメリットは以下のとおり。
メリット:
受付時の患者の資格情報の自動取得,資格過誤による返戻レセプトが減る,限度額認定証の持参不要,過去の薬剤情報・特定健診情報が閲覧可能。
デメリット:
保険証の資格喪失のデータ更新にタイムラグが生じる,患者がマイナポータルへの初回登録をする必要がある,外国人の不正利用は無くなるが,目視による本人確認の手間は増える,サーバーダウン時は保険証確認ができない等。
すでに申請受付は始まっているが,早く手続きすべきか様子見かとの地区からの質問に対し,マイナポータルだけでも登録しておくと情報が入ってくる。後はレセコン等の業者の担当者と相談して決めればよい。システムにもよるが20~30万円の追加費用が必要な場合がある。導入するなら準備はしておいた方がよいと回答した。
オンラインにおける初診の容認は,4月7日の閣議決定を受けて4月10日に厚労省より事務連絡として通達された。コロナウイルス感染症が拡大し,医療機関の受診が困難になりつつあることを鑑みた時限的・特例的な措置として,初診からの電話や情報通信機器を用いた診療や服薬指導が許可された。しかしその後,十分な議論なしで恒久化推進という方針が打ち出された。
地区からは,「初診のオンライン診療ができるようになることを懸念している。国のルール作りへの提言を今後も府医・日医からしてほしい。また,初診の大切さを一般の人に理解してもらえるよう広報活動をお願いしたい」と意見が出された。
これに対し,少なくとも初診は対面でなければならないし,それ以外も十分に議論し,制度を確立させるよう政府・厚労省に要望しているところであると回答した。
個人のスマートフォンの使用は危険なので,診療用のものを別で用意する必要がある。アプリをインストールし,アカウント取得後,病院用アカウントや自院HPで告知等を行う。決済方法等は医療機関の方で設定する必要がある。他社も色々あるが,規模が大きく今後も拡大が見込める会社の方がトラブル対応の際に良いのではないかと考えられる。
導入後のリスクとして,診療後に未払い,誤診,保険証の不正使用・なりすまし,薬剤の不正入手,診療を録画して悪用などが考えられる。十分考慮した上で導入すべきである。