2021年1月15日号
府医では府民・市民向け広報誌「BeWell」,VOL.93「白内障」を発刊しました(本号に同封)。
各医療機関におかれましては,本紙を診察の一助に,また待合室の読み物としてご活用ください。
本誌に関するお問い合わせは,府医総務課(電話:075-354-6102,FAX:075-354-6074)までご連絡ください。
VOL.93「白内障」(A3版,見開き4ページ)
京都桂病院 眼科 栗本 雅史
このたびBeWellのテーマが白内障とのことでお声がけいただき,原稿を担当させていただきました。
内容ですが,まず疾患についての基礎的な知識,症状,次に治療として白内障手術の一般的な話,最後は最先端の多焦点眼内レンズを用いた白内障手術の話,今年から始まった選定療養の話までカバーしています。
こちらの原稿は京都医報に載せるということで,通り一遍のことは飛ばして,多焦点眼内レンズを用いた白内障手術について解説させていただきます。
ご存知の先生も多いとは思いますが,通常の保険診療で行う白内障手術の場合,使用できるのは単焦点レンズであり,遠方が見える単焦点レンズを入れた方は手元(スマホ,PCなどがわかりやすいでしょうか)にピントが合わず老眼鏡の使用が必須となります。従って遠方も手元もメガネなしで見えるようになりたいという需要に応えるのが多焦点眼内レンズということになります。
遠方と手元の両方が見えるという高付加価値眼内レンズは定価ベースでは単焦点眼内レンズと比べて非常に高価なレンズであり,2020年8月現在,この多焦点眼内レンズは選定療養か自費診療のいずれかで行われています。
選定療養としてこの多焦点眼内レンズを用いる場合,通常の保険診療で白内障手術を行い,高価な多焦点眼内レンズと通常の単焦点眼内レンズの価格の差額分は別途患者さんに請求されます。
多焦点眼内レンズを用いた白内障手術を自由診療で受けると術前検査,手術(12,100点),眼内レンズ代,術後の診察代がすべて自費となるため,術前検査,手術,術後の診察に保険を使える選定療養のほうが患者さんのお財布にはすこしやさしいということになります。
ただ,この多焦点眼内レンズを用いた白内障手術を受ける場合,患者さんには術前に多焦点眼内レンズの限界について理解しておいていただく必要があります。それは多焦点眼内レンズ特有の見え方がどうしても我慢できない患者さんがいるということです。
多焦点眼内レンズ特有の見え方とは,見えるけど見えにくい(コントラスト感度の低下),光がギラついたりにじんで見える(グレア・ハロー),といったもので,単焦点レンズなら感じなくてすんだはずのこういった症状に苦しむ方が出てきます。ごくまれですがこれらが我慢できなくてレンズを単焦点に交換する再手術を受ける方もいらっしゃいます。
こういった特徴をよく理解していただいた上で多焦点眼内レンズを選択してくださいというお話でした。
最新のFLACS(フェムトセカンドレーザーを使用した白内障手術)についても触れたいところですが,今回は字数の関係で割愛させていただきました。
今回は患者さんが読む媒体ということでできるだけわかりやすい言葉を使うように心がけて書きました。眼科へすでに通院している患者さんだけでなく,眼科に通院していない患者さんにも読んでいただいて眼科受診のきっかけになればと思います。