保険医療部通信(第335報) – 第3回近医連保険担当理事連絡協議会および常任委員と保険担当理事の合同懇談会を開催

 令和2年度第3回近医連保険担当理事連絡協議会および近医連常任委員・保険担当理事合同懇談会が12 月5日(土)に府医会館で開催された。新型コロナウイルス感染防止の観点から,一部の参加者は各府県をテレビ会議システムで繋いだオンライン形式の参加となった。

後期高齢者の患者負担割合のあり方で意見交換

 谷口府医理事の司会のもと保険担当理事連絡協議会では,後期高齢者の負担割合の2割への引上げについて,社会保障審議会医療保険部会や全世代型社会保障検討会議で議論が大詰めを迎えていることから,各府県に意見を求めた。
 各府県ともコロナ禍における受診控えが生じている現状において,負担引上げはさらなる受診抑制につながり,症状悪化への懸念が示された。また,現役世代の負担軽減のためには,いずれ引上げざるを得ないものの,引上げ対象者の線引きには国民の納得が必要との意見もあった。
 田村府医理事は,全世代型社会保障検討会議の主旨が誰もが安心できる社会保障制度に関わる検討を行うこととされており,制度の持続可能性を考えると一定の引上げはやむを得ない部分もあると述べた。総括として,濱島府医副会長は,高齢者は所得の多寡にかかわらず有病率が高いことから,応能負担は窓口徴収ではなく,保険料などで対応すべきと指摘するとともに,コロナ対応に追われる今の時期に結論を急ぐ政府の動きを牽制した。

コロナにより医療費減,点数引上げなどを求める

 常任委員と保険担当理事の合同懇談会では,城守日医常任理事から「最近の医療情勢について」,松原日医副会長から「安倍内閣の医療政策および菅内閣の展望について」と題して講演が行われた。
 城守日医常任理事は,まず新型コロナウイルス感染症にともなう医療保険制度の対応として,2月以降,重症患者等の入院料の点数引上げや院内トリアージ実施料の特例など診療報酬上で臨時的・特例的な対応が随時行われていることを紹介。4月には初診から電話等による診療が可能とされ,その後,菅首相がオンライン診療の恒久化を表明したことを契機に,3大臣が原則解禁で合意したことを説明した。
 次に,令和2年度医療費の動向について,コロナによる算定回数の減少により,本来44.3 兆円となるところ,41.3 兆円,マイナス3兆円の見込みで,5~6年前のレベルまで落ち込む推計となったことから,医療機関への支援や点数引上げなどに向けて厚労省と折衝していることを明かした。
 また,薬価の中間年改定について,最近の中医協で集中的に議論し,12 月には薬価調査の結果が示され,取引状況や薬価調査の回収率などは例年並みの水準と報告を受けたが,あらためて最も優先すべきは医療提供体制を崩壊させないことであり,薬価改定にあたっては留意するよう求めているとした。
 最後に,「医療資源を重点的に活用する外来」,「大病院への患者集中を防ぎ,かかりつけ医機能の強化を図るための定額負担拡大」について解説。全世代型社会保障検討会議の中間報告にある「外来機能の明確化」に関して,厚労省の医療計画の見直し等に関する検討会で議論を重ね,外来機能報告により「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関として明確化する(病院の手上げ)とともに,その医療機関が200床以上の場合,紹介状なしの大病院受診時の定額負担の徴収義務対象に加える方向になったと説明。日医では,再診患者を地域に戻す役割を重要視して対応しており,基準などの詳細は今後,専門的に検討する場を設定して協議されるとした。

 松原日医副会長は,安倍内閣の医療政策を振り返り,全世代型への社会保障改革を最重要課題とし,全世代型社会保障検討会議では,現役世代の負担上昇を抑えるために,後期高齢者の患者負担割合の引上げや外来受診時定額負担の拡大が必要だと喧伝してきたと説明した。自身が参画する社会保障審議会医療保険部会において,後期高齢者は1人当たりの医療費が高い上に,年収に対する一部負担金の割合はすでに十分高く,負担増により受診控えや必要な医療を遠慮される懸念を示し,粘り強く反論してきたが,続く菅内閣は安倍内閣の継承が根底にあり,後期高齢者の負担割合引上げなども既定路線で強引に進められているとした。後期高齢者の負担見直しによる現役世代の負担軽減はわずかとの試算があり,引上げの目的が受診抑制であることは明白だと指摘した。
 また,紹介状なしの大病院受診時定額負担については,増額だけでなく,増額幅を保険給付から控除することが提案されたが,一定金額の保険給付範囲からの控除は,例外的・限定的な取り扱いとし,ほかに拡大しないことを明確にするよう修正させたとした。

2021年1月15日号TOP