医師の働き方改革等について 医療法,医師法等の一部改正の概要

 5月21日に「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」が参議院本会議で可決・成立し,医師の働き方改革を中心とする重要な法律が盛り込まれ,21項目におよぶ附帯決議も付けられた。
 そこで本稿では,その概要をお知らせするとともに,通知や資料を抜粋して掲載し,その内容を補完することとする。

<改正の趣旨>
 良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進する観点から,医師の働き方改革,各医療関係職種の専門性の活用,地域の実情に応じた医療提供体制の確保を進めるため,長時間労働の医師に対し医療機関が講ずべき健康確保措置等の整備や地域医療構想の実現に向けた医療機関の取組に対する支援の強化等の措置を講ずる。

<医師の労働時間短縮及び健康確保措置>
◆医師の時間外労働の上限規制の適用  (令和6年(2024年)4月1日開始)

◆やむを得ず高い上限時間を適用する医療機関(B・連携B・C水準)
 ⇒医師労働時間短縮計画の作成
 ⇒医療機関勤務環境評価センターによる第三者評価
 ⇒都道府県知事による指定
 ⇒36協定の締結
 ⇒健康確保措置(面接指導,連続勤務時間制限,勤務間インターバル規制等)の実施

<医療関係職種の業務範囲の見直し>
◆タスクシフト/シェアの推進
 ⇒診療放射線技師,臨床検査技師,臨床工学技士,救急救命士の業務範囲の拡大

<医師養成課程の見直し>
◆医学生の医業の法的位置付けの明確化
 ⇒共用試験合格(CBT,OSCE)を医師国家試験の受験資格要件として,同試験に合格した医学生が臨床実習として医業を行なうことができることとする

<医療提供体制の確保>
◆外来医療の機能の明確化
 ⇒患者の分かりやすさの観点から,医療資源を重点的に活用する外来を設置
  ・医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来
  ・高額等の医療機器・設備を必要とする外来
  ・特定の領域に特化した機能を有する外来

【国や京都府が検討しているスケジュール(案)】
 京都府では,今年度京都府医療審議会に「医師の働き方改革検討部会」を立ち上げ,2024年度のスタートに向けて超過勤務の実態把握や支援策の検討などを進めていく予定としている。
 また,B水準・C水準に該当する各病院(地域医療確保体制加算を取得している病院は除く)に,医師の労働時間短縮に向けた取り組みを支援する「勤務医の労働時間短縮に向けた体制整備事業」を実施することとしている。現時点で,国から「医師労働時間短縮計画」の提出期限は明示されていない。
 なお,7月29日(木)には全病院を対象に,国の考え方や制度の概要,補助事業の内容を周知する目的で研修会を開催する予定。

【日医の見解】
 以下,5月26日の今村日医副会長の記者会見でのコメントを抜粋。
 医師の働き方改革については,2024年度からスタートする新制度が地域医療とのバランスを見ながら時間をかけて改革していくことになった点を評価。やむを得ず一定以上の長時間労働の医師に対して,医師による面接指導が義務化されることについては,面接指導実施医師の養成に関する講習プログラム等に日医として積極的に関与していくとした。その一方で,コロナ禍において,コロナ患者の治療,ワクチン接種への対応などに追われている現状は無視することはできないと強調。2024年4月施行というスケジュールに合わせて拙速に改革を進めれば,地域医療の混乱を招きかねないとし,「現場が医師の働き方改革にしっかりと取り組める状況であるのか」「過剰な労働下におかれている医師の健康への影響はどうであるのか」など,足元をしっかりと確認しながら,慎重に進めていくことを求めた。
 さらに,成立に当たって付けられた附帯決議の内容や現場の意見を踏まえて,より良い制度となるよう取り組んでいくとするとともに,行政に対して「2024年度から罰則付きの労働時間の上限規制がスタートするに当たって働き方改革が地域医療に及ぼす影響をみつつ,罰則適用については謙抑的かつ慎重に運用して欲しい」と強く要請した。

 -以下略-
2.介護保険法の一部改正
3.医師法の一部改正
4.歯科医師法の一部改正
5.診療放射線技師法,臨床検査技師等に関する法律,臨床工学技士法及び救急救命士法の一部改正
6.地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律の一部改正
7.良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の一部改正
8.施行期日等


※ 通知の全文および資料は,府医ホームページを参照されたい。
 ・「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」の公布について(通知)
  https://www.kyoto.med.or.jp/work/pdf/01.pdf
 ・厚生労働省社会保障審議会医療部会参考資料
  https://www.kyoto.med.or.jp/work/pdf/02.pdf

2021年7月15日号TOP