2021年3月1日号
上京東部医師会と府医執行部との懇談会が11月18日(水),Webで開催され,上京東部医師会から10名,府医から9名が出席。「季節性インフルエンザ流行期に備えての対コロナ診療・検査体制」,「マイナンバーカードを活用した医療保険のオンライン資格確認の今後の動向」をテーマに活発な議論が行われた。
〈注:この記事の内容は11月18日現在のものであり,現在の状況とは異なる部分がございますのでお含みおきください〉
今冬のインフルエンザ流行期に備えた今後の新たな診療体制について概要を説明。
(本誌1月15日号P4〜5参照)
◇「レントゲン室のような換気ができない部屋で検体を採取する場合,どこまで標準予防策を順守するべきか」と質問が出された。
医療機関によって構造上の違いがあり,野外やレントゲン室で検査する医療機関もある。換気が難しいレントゲン室の場合は清拭消毒が必要だが,ビニールで機器を保護した上で実施すればよいのではないかと回答した。
◇「自宅での唾液採取は認められるのか」と質問が出された。
厚労省は自宅での採取は認めておらず,原則医療機関での採取となる。
◇「発熱患者受け入れ医療機関の斡旋は行政の仕事ではないのかという声もあがっている。府医はどのように考えているのか」と質問が出された。
従来の接触者・帰国者相談センターは,上手く機能しているとは言い難かったため,府と協議の上,府医主導のセンターを開設した。また,PCR検査センターでも,陽性者は2%程度だったため,コロナ患者以外の治療のためにも,唾液を用いたPCR検査実施医療機関の集合契約を進めてきた。行政には疫学調査をしっかりと行ってもらう時期であると説明した。
◇「感染者がこれ以上爆発的に増えた場合,自院ですべて自宅療養者の対処をしなければならないのかと懸念している」との意見が出された。
患者の入院受け入れ先は,京都入院医療コントロールセンターで調整している。自宅療養者を行政が対処できるかは課題である。日医や厚労省の動きを注視していきたい。
◇「厚労省のG-MIS,HER-SYSについて,行政は把握していなかった。不明点はどこに確認すればよいか」と質問が出された。
G-MISは京都府で協力医療機関を取りまとめて厚労省に送るため,時間を要する。HER-SYSは京都市の対応が遅れているため,その間は府医に相談してほしいと回答した。
令和3年3月開始予定のオンライン資格確認について,厚労省は6月25日に「医療情報化支援基金に関するポータルサイト開設のお知らせ」を発出,8月7日に顔認証付きカードリーダーの申し込み受付を開始し,9月初旬にリーフレットの配布を開始した。
顔認証付きカードリーダーは無償提供(診療所は1台,病院は3台まで)されるが,カードリーダー申し込み後,令和5年3月までにオンライン資格確認等システム利用申請などを行い導入しなければ,カードリーダーの代金が請求される。また,令和3年3月末までに顔認証付きカードリーダーの申し込みをした場合,イニシャルコストは「加速化プラン」による補助で,補助上限額までは100%補助となるが,ランニングコスト(ネットワーク端末の維持費,カードリーダー端末の保守サポート費用等)は補助対象外となる。
導入のメリット・デメリットは以下のとおり。
メリット:
受付時における患者の資格情報の自動取得,資格過誤による返戻レセプトの減少,過去の薬剤情報・特定健診情報が閲覧可能。
デメリット:
患者がマイナポータルへの初回登録をする必要があるため,窓口での説明の手間が増加,ランニングコストがかかる。
システムの導入は義務ではないため,ポータルサイトへの登録のみ行い,各医療機関でメリット・デメリットを踏まえての検討が望ましい。また,政府,日医ともに導入の方向に進むと思われるが,導入しない医療機関が淘汰されることのないように注視していくとの考えを示した。
(詳細は,本誌1月15日号保険だよりP5〜6および2月1日号保険だよりP4〜6参照)
◇「カードリーダーは,1台は無償ということだが,壊れたらどうしようもなくなるのか。また,デジタル推進本部がマイナンバー推進のため,現行の保険証廃止を検討していると聞いているが,今後,急に廃止されることがあるのか」と質問が出された。
カードリーダーの維持費や2台目の購入費用は,完全に医療機関が負担することになる。将来的な保険証の廃止については,この方向に進む可能性は高い。実現した場合,マイナンバーカードを所持していない高齢者等の取り扱いが懸念事項であり,今後の動きに注目したいと回答した。