2021年3月15日号
宇治久世医師会と府医執行部との懇談会が11月24日(火),Webで開催され,宇治久世医師会から10名,府医から10名が出席。「今年度のインフルエンザ流行期に備えた発熱患者の診療・検査体制についての確認」,「ウィズコロナ時代における医療構想についての将来への展望」,「感染症発生動向調査(定点把握)」をテーマに活発な議論が行われた。
〈注:この記事の内容は11月24日現在のものであり,現在の状況とは異なる部分がございますのでお含みおきください〉
本誌令和2年11月15日号地域医療部通信新型コロナウイルス感染症関連情報第15報を示し,ディスカッションを行った。
主な内容は以下のとおり。
◇「今般の診療・検査医療機関,いわゆる「京都府方式」の体制構築に至るまで,様々な困難があったと思われる。この体制は画期的であり,今後協力する医療機関が増えるのではないか」
厚労省・日医からの通達が二転三転したため,府と協議を何度も重ねて対応してきた。PCR検査を実施する医療機関も,10/28時点では500件程度だったが,現在は665件にまで増えている。
◇「インフルエンザは検査をせずに臨床診断し,コロナの検査のみ実施する診療方法でもよいか」
問題ない。かかりつけ医が組み合わせ可能な検査を選択するが,インフルエンザについては臨床診断で治療しても構わない。
◇「検査当日に結果が判明しない場合,HER-SYSで疑似症届を入力するとあるが,その後,陰性が判明した場合,再度入力が必要か。またG-MISの入力は必要か」
HER-SYSで入力するのは以下の3通りである。
①検査で陽性が出て,医師が確定診断した場合,発生届として入力。
②無症状の病原体保有者(例:陰性証明のため検査したら陽性だった)。
③疑似症の場合。症状からコロナの疑いがあり,年齢・基礎疾患から入院が必要な可能性があれば疑似症届として入力。疑似症届は入院を要する陽性者のみ必要なので,翌日,唾液PCR検査の結果が陽性の場合は発生届として入力。陰性の場合は不要。抗原定性検査は偽陰性・偽陽性があるので判断が難しいが,陽性が出たらHER-SYSで入力する。
また,G-MISは,発熱患者数,検査実施数,医療資材の状況などを入力するものである。
◇「陽性判明後,保健所から連絡があるまで自宅待機とあるが,連絡が来るまでにはかなりタイムラグがあると聞く。その間,かかりつけ医として何もしないのか。開業医が未だにアビガンが入手できないのはなぜなのか。重症化を防ぐために早期に投与できる薬だと思っている」
HER-SYSに入力後,行政が把握するまでに時間がかかるため,入力と同時に保健所に連絡をしてほしい。その後,入院医療コントロールセンターで患者の症状を含めて,宿泊療養か入院の調整をする。かかりつけ医からは,自宅療養してもらうこと,保健所から必ず連絡がある旨を説明してほしい。アビガンについては,コロナは2類感染症のため,陽性で発生届を出した時点で入院勧告となり,開業医が治療する範囲ではなくなる。
地域医療構想は,もともと高度急性期・急性期・回復期・慢性期に分け,地域の実情に合わせて,超高齢社会に向け,年齢構造・疾病構造の変化に適応するように病床の配分を行うことが目的であった。しかし,実際は7:1の施設基準にこだわり,多くの病院が高度急性期として報告している。またご指摘のとおり,急性期の病院から早期に回復期の病院に転院させたために増悪し,かえって医療費が高額になるという批判もある。総合的な検討が必要であるが,病床削減前提で進められてきた地域医療構想は根本から考え直す必要があるとの意見が出てきている。コロナの影響で地域医療構想は全国的に止まったままであり,ウィズコロナの地域医療構想の議論はこれから始まるとご理解いただきたい。感染症は今後も繰り返し起こるであろうが,平時の医療を守りつつ感染症にも対応できるよう議論を進めていきたいと思っている。今回ご指摘の部分も参考にし,日医を通じて政府に提言していく。
地区からは,「現在の医療構想下では,患者が短期間で急性期→回復期→慢性期病院を経て,治りきらないまま最終的に在宅医療へ丸投げされ,すぐに増悪する事態となっている。救急でも受け入れてもらえず,たらい回しである。病床機能を4分類し,その数の調整に終始しているだけであり,これでウィズコロナの医療体制が取れるのか。高度急性期・急性期疾患の見直しから始めるべきではないか」との意見が出された。
地区から,「感染症発生動向調査(定点把握)で,インフルエンザ等の発生が減少しているということだが,正確な把握ができているのか。正確な報告・把握をすることで,今後の感染症発生時に有用なデータを残せるのではないか」と質問が出された。
感染経路の違いで例外もあるが,インフルエンザ以外の他の小児感染症も過去5年間に比べて減っている。これは「検査をしていない」,「マスク装着・手洗い・うがい等の衛生対策の強化」,「緊急事態宣言下での在宅・受診控え」等,複数の要因が考えられる。インフルエンザについては,一部ではウイルス干渉があったのでは,という意見や,南半球での感染者がほとんど出なかった事実もあるが,人の動きがなかったことが一番大きな要因と考える。ただ,今後流行するかは不明である。また厚労省は,コロナとインフルエンザの実際の陽性患者の割合は不明であり,地域のそれぞれの流行状況の推測は難しいとしている。今後も定点観察は継続すべきであり,府医も以前作成した京ころなマップ,京いんふるマップ等の活用を検討したい。
支払基金と国保連合会双方における審査の平準化をはかるために開催している「基金・国保審査委員会連絡会」の状況について解説するとともに,個別指導における主な指摘事項についての資料を提供した。
また,療養費同意書交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書発行に理解と協力を求めた。