地域医療部通信 – 新型コロナワクチン関連Q&A

Q1.ワクチンの扱いでの注意点は

A.厳重な温度管理と振動を与えないことです。
 冷蔵庫保管では5日間,冷凍庫(-15~-25℃)では2週間,ディープフリーザーでの超低温(-65℃以下)では6か月の保管期間となります。
 ワクチンを希釈する際には決して振らないで,ゆっくりと回転するように混ぜるようにすること,またシリンジに詰める際には指で弾くエアー抜きはしないこと。

Q2.通常のシリンジと注射針を用いて1バイアルから取れる本数は

A.ワクチン液は0.45mL,希釈用生理食塩水が1.8mLで,希釈後2.25mLになります。
 予防接種用シリンジ(ショート,1mL)に注射針を付けた場合,シリンジと注射針の間のデッドボリュームは0.06~0.08mLになります。0.3mLの薬液を吸い上げた場合,合計で0.4mL弱になるため,5本分のシリンジの確保になります。
 ツベルクリン用シリンジ(1mL)を用いた場合のデッドボリュームは0.03~0.05mLになります。0.3mLの薬液を吸い上げると0.33~0.35mlになり,計算上は6本の確保となりますが,ワクチン液や希釈する生理食塩水の液量の誤差のため,6本目は難しいかもしれません。

Q3.ローデッドシリンジあるいはローデッド注射針を用いた場合は

A.ローデッドシリンジあるいはローデッド注射針ではデッドボリュームがQ2よりも少量となるため,6回分になります。
 医療従事者優先接種では,第3弾以降はローデッド注射針を付けて送付されます。
 住民接種(高齢者)では京都市が配布するのは通常のシリンジのため5回分ですが,5月にはローデッドタイプの配布に替わる予定です。

Q4.ワクチンの希釈について

A.千葉大学病院公式チャンネル(https://www.youtube.com/watch?v=t_fXcZHbuvY)では以下のように説明されています(通常のシリンジと接種針を用いる場合)
 1.常温でワクチンが融解していることを確認し,ゆっくりとバイアルを転倒混和(10回)して,ワクチンを均一にする(決して振り混ぜない)。
 2.バイアルキャップを外して,ゴム栓を消毒しておく。
 3.希釈用シリンジに生理食塩水1.8mLを入れ,バイアルに垂直に刺入して,1回押し切りで静かに注入し,1.8mLを入れきる。針先を液面より上にして,シリンジの内筒を1.8mLに戻してバイアルから抜く(1.8mL分のエアーを抜いておく)。この時,内筒を引いたときに残っている生理食塩水はバイアル内に注入しないこと(濃度が変わるため)。
 4.希釈したワクチンを,ゆっくりと転倒混和(10回)して均一にする(決して振り混ぜない)。この時,ゴム栓に触れないよう注意する。
 5.接種用シリンジに接種用注射針(配布された25G×25mmの針)を付けて,0.2mLのエアーを入れてからバイアルに刺入する。
 6.ワクチン液を0.2mL吸ってから,バイアルに刺したままの状態で,シリンジ内のエアーを針側に寄せて(優しく叩くように;決して弾かない)中のエアーを抜く。0.2mLのエアーをバイアルに注入してエアー抜きしたら,ワクチン液0.3mLを吸う。針を抜くときはバイアルが下,シリンジを上にして真っ直ぐに抜く。この作業で針とシリンジの間のエアーが抜けることになる(針とシリンジの間がデッドボリューム)。
 7.針は交換せずそのまま接種するので,キャップしておく。
 8.5~7を繰り返して,必要量を取る。
 (註:ローデッドシリンジあるいはローデッド注射針を用いる場合は,薬液を吸い上げる前に0.3mLのエアーを入れてから,0.3mLを吸い上げればよい)

Q5.針とシリンジの間にエアーが残った場合は

A.指で弾くなどで無理にエアー抜きをすると,ワクチンに振動を与えたり,必要以上にバイアルに刺入することに繋がる可能性があります。そのまま筋肉注射してもごく少量のエアーでは健康被害は出ないと考えます。

Q6.1バイアルから予定より多く取れた場合は

A.慎重かつ丁寧に行って,予定よりも多い回数分が確保できた場合,接種するには特に問題はありません。バイアルのロット番号のシールが足らなくなりますので,ロット番号シールをコピーして使用してください。

Q7.アレルギーの既往歴のある方への接種

A.諸外国でファイザー社ワクチン接種開始時には,強いアレルギー疾患あるいは過去にアナフィラキシーの既往のある方は接種対象外,としていましたが,米国等ではアレルギーやアナフィラキシーの既往のある方も接種対象として接種を進めました。英国も当初の制限を解除して接種をしています。
 現時点で接種を避けるのは,1回目の接種時にアナフィラキシーを起こした場合になっています。
 接種直前の予診の段階でアレルギーの既往が判明した場合は,十分な説明と同意を得た上で接種できます。この場合は接種後の健康観察は30分とし,万一に備えてアナフィラキシー対応マニュアルに沿った対応ができるようにしてください。

Q8.ワクチン接種の事前に抗ヒスタミン薬の前投薬はできるか

A.医師の裁量・判断で抗ヒスタミン薬の前投薬は可能です。ただし,保険診療扱いにはなりません。

Q9.急なキャンセルや,接種当日の体調不良などで,予定していた人数より少なくなり,ワクチンが余る場合

A.ワクチンを希釈してから6時間以内なら,接種していない人に接種することは可能です。
 但し,接種券のある方が最優先です。
 接種券のない方しかいない場合は,予診票に記入してもらってから接種してください。後日,接種券を必ず持参していただくこと,保管していた予診票と接種券を突合し,その時点でVRSに入力することが必要です。また,その方は3週間後に2回目接種をすることになります。

Q10.バイアルが不要になった場合,他の接種医療機関に譲り渡せるか

A.診療所間でのワクチンのやり取りは原則としてできません。

Q11.ワクチン接種ができるのは医師だけか

A.看護師が接種することは可能です。保健師助産師看護師法には抵触しません。

Q12.住民票の住所地での接種が原則だが,他の市町あるいは他の都道府県の人に接種できるか

A.住民接種では,市町村を跨いで,あるいは都道府県を跨いでの接種ができます。請求の方法は,各市町村で異なりますので,注意が必要です。京都市ではすべてを国保連合会に請求しますが,接種実施医療機関等が所在する市町村に直接請求する取り扱いを採用する自治体もありますので,分からない場合は医療機関の所轄自治体にお問い合わせください(接種実施医療機関等が所在する市町村以外の市町村への請求は国保連合会に行います)。

Q13.2回目接種の間隔

A.2回目の接種は1回目から20日あけること(3週間後)が基本ですが,何らかの理由によりその日に接種ができない場合,18日以上の間隔での接種は可能です。20日以上の間隔となる場合はできるだけ速やかに2回目接種をしてください。なお,事情によって長期間が空いた場合は,その1回で終わらせるのか,あるいは2回目を接種するのかは,十分な説明と同意を得た上で医師の判断に委ねられます。

2021年5月1日号TOP