亀岡市・船井医師会との懇談会 1.23 Web開催

「COVID-19診療の現状と今後の課題」,「オンライン診療についての府医・日医の考え」,「マイナンバーカードの保険証利用」について議論

 亀岡市・船井医師会と府医執行部との懇談会が1月23日(土),Webで開催され,亀岡市医師会から19名,船井医師会から10名,府医から9名が出席。「COVID-19診療の現状と今後の課題」,「オンライン診療についての府医・日医の考え」,「マイナンバーカードの保険証利用に関して」をテーマに活発な議論が行われた。
〈注:この記事の内容は1月23日現在のものであり,現在の状況とは異なる部分がございます〉

COVID-19診療の現状と今後の課題

 コロナ発生から現在までの約1年間,府医は「医師が必要と判断したらPCR検査等を確実に行う」,「発熱患者等を診療・検査に確実に繋げる」などの入口部分の医療体制を構築してきた。主にドライブスルー方式のPCR検査センターの開設・運営,唾液によるPCR検査・抗原検査等の集合契約,診療・検査医療機関への受診調整,各関係機関との連携に注力している。これらの体制については概ね機能しているが,保健所からかかりつけ医への連絡がなく,自宅療養者の健康管理ができないなどの問題もある。

~今後の課題~

 これまで構築してきた医療体制を維持することに加え,自宅療養中の無症状・軽症者であっても高齢者などのハイリスク者や退院した陽性者のフォローをかかりつけ医ができないか検討中である。また,救急現場・京都府入院医療コントロールセンターの負担軽減のため,診療・検査医療機関の拡充や宿泊・自宅療養者の悪化時をサポートする医療機関の確保(陽性患者外来),病床確保のための下り搬送,医療提供体制の再構築など,多くのことが議論されている。

~アビガン承認は見送り~

 治療薬のアビガンについて,臨床試験がダブルブラインドではなくシングルブラインドのため,判定時に使用した主治医の意見が色濃く反映されることへの懸念から,承認は見送られた。もし承認されれば,かかりつけ医が自宅療養者に対して使用することで悪化を防げるため,承認が待たれる。

~ワクチンについて~

 候補となる3社のうち,当初は主にファイザー社のワクチンが想定されているが,保管温度が−75℃のため,ディープフリーザー,ドライアイスでの温度管理が課題である。
 厚労省より接種体制,スケジュールの大枠が示されており,接種順位に従い,まずは医療従事者への接種が行われる。輸送体制,各接種施設,会場,医師の確保等については府・市と協議中のため,決まり次第周知する。

~質疑応答~

◇「接種順位が,高齢者より医療従事者が上位になった理由など教えてほしい」と質問が出された。
 「最もコロナウイルス感染リスクが高い環境下にある人間がまず打つべき」という考えから,この接種順位になった。医療従事者の中でも,特にコロナ患者受入病院の医療従事者をまず接種,その後に一般医療機関の医療従事者,高齢者の順となる。また,厚労省によると,高齢者施設の従事者や訪問看護師も接種順位の上位に位置づけるとのことである,と回答した。

◇「ワクチンの副作用について,mRNAは違和感を覚えるがどうか」と質問が出された。
 当初,生殖機能(精巣・卵巣)に影響を及ぼすのではないか等の議論があったが,今回のmRNAワクチンは,あくまでコロナウイルスのスパイク部分のたんぱく質に作用し,mRNAは体内で分解されて接種を受けた人の遺伝子には組み込まれないため,問題ないであろうとの結論であると回答した。

オンライン診療についての府医・日医の考え

 オンライン診療について概要を説明。(本誌4月1日号P7~8参照)

~質疑応答~

◇「オンライン診療での初診解禁の流れについては日医も容認しているという解釈でよいか。厚労大臣,日医ともトーンダウンしているように見受けられる。9月に日医が示した見解によると『あくまで補完的に実施するものである』とのことであった。平成30年の改定で導入された当初の補完的なオンライン診療の部分に立ち返るべきではないか」と質問が出された。
 日医も従来から,オンライン診療はあくまで通常診療の補完的な手段であるとの見解を示しており,全くの初診については容認していないが,健診,予防接種を過去の受診歴と考えるかについては検討課題になるのではないかとの見解を示した。
 オンライン診療を前向きに捉えると,患者にとってメリットがあり,医療過疎地・離島においても医療の空白が無くなる等,通常の対面診療に加え,有効な手段になり得る。しかし,利便性のみを考えると営利目的につながる可能性があり,間違った方向へ行きそうならば軌道修正していくと回答した。

マイナンバーカードの保険証利用に関して

 令和3年3月から開始されるオンライン資格確認の概要を説明。(本誌3月1日号P8参照)

~質疑応答~

◇「セキュリティの問題について,マイナンバーカードは非常に多くの情報と紐づけされるので,導入時に情報漏れ等,予見しない事態が起こるのではないか」,「サーバーへのアクセスが集中した場合,確認に時間がかかるのではないか。また,再診時にカードを忘れ,資格喪失等の確認ができない,高齢者が操作の代行を依頼するなど窓口の負担が増えるのではないか」などの意見が出された。
 府医,日医ともマイナンバーカードに保険情報を紐づけすることには反対であるが,政府の強力な推進により,実現の方向に向かっている。松原日医副会長は,医療情報の共有について「患者本位で情報の重み付けをしなければならない」と述べており,様々な情報に関する本人同意を一律に得る仕組みに反対している。がんや認知症等,傷病名を含む情報の取り扱いはデリケートな問題であり,議論中であると回答した。

2021年5月15日号TOP