会員の声 – コロナ禍に思う,リスク回避そして可能な限りの配慮を!

京都市児童福祉センター 診療療育課(京都市西陣) 市川 澄子

 海外の研究において「知的障害,精神疾患は新型コロナウィルス感染症に感染するリスクや死亡および入院リスクを上昇させる」と報告されました1)
 また厚労省のワクチン分科会予防接種基本方針部会において優先接種の対象となる基礎疾患の中に重度心身障害(重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態),染色体異常2),重い精神疾患(精神疾患治療のため入院している,精神障害者保健福祉手帳を所持している,または自立支援医療で「重度かつ継続」に該当する場合)や知的障害(療育手帳を所持している)等が入りました。
 「接種券が届いたけれど,打っても大丈夫でしょうか?何処なら安心して打てますか?集団が苦手で接種会場で落ち着いて打てるとはとても思えません。パニックおこして暴れるかも…」等々不安の声や,問い合わせが相次ぎます。
 障がいがあってもなくても,ワクチン接種における自己決定権,つまりコロナやワクチンのことを理解し自分で判断し決めることは重要課題で,また行動決定のためにすべきことは山積みです3)。専門家のアシストは必須だと思います。
 アナフィラキシーショックの頻度,副反応について,死亡例について,因果関係は不明のまま?どこまでわかった?等々,医師会より連日更新,また送達されるFAX,情報は勿論,溢れる様々なファクト,エビデンスから取捨選択しお伝えします。
 「何処で打つか?に関しては,かかりつけ医がない,個別接種ができない場合は集団接種になり,京都市では接種会場と十数カ所の病院と連携していると聞いています」と説明しながらも,悩まれている方の根底にある不安を払拭できたとは到底思えません。
 「何万人に1人といわれる疾患になった。レアだから大丈夫とはとても思えない」,「以前ワクチンで高熱が出て,体調を崩した。それ以来予防注射は受けていない」,「不調になっても自分で訴えることができないし,とても心配です」

 本当にそうだと思います。過去に例のない新しいタイプのmRNAワクチン,未知のことも多く迷いがないわけではない,でも自分の身内には接種を勧めていること,副反応は2-3日で回復すること,重症化は防げるなどの健康上のメリットを丹念にお話し,不安を柔らげることができるよう注力しています。
 「本人が打つのは無理だと思うので家族が早く受けようと思います。でも予約がとれない」と切実な声を聴きながら,感染予防も含めたさまざまな局面でできるだけリスクを減らしたいと日々思い,ワクチンを打つ際も慣れた場所やスタッフなどの整った環境で視覚支援などもしてもらいながら「『1,2,3』数えたら終わります」,「上手に打てましたよ」と,少しでも安心できる空間があればと痛切に感じています。

1)第44回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会(2021年3月18日)資料(https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000755192.pdf

2)全米ダウン症協会 ニュースレターより
https://www.ndss.org/wp-content/uploads/2021/03/COVID-DS-RESOURCE-3.02.2021-Final.ENGLISH-pdf

3)門 眞一郎:子どもの人権について「臨床精神医学講座第11 巻 児童青年期精神障害」中山書店刊

 ワクチン接種時の視覚支援絵カードは美大出身で介護の知識を持つ友人(酒井かがりさん)の力作です。著作権では保護されていません。どうかご自由にお使いくださいとのことです。
 また,京都自閉症協会の方々のご助言で接種後に必要な『椅子に座って静かに待ちます』カードを追加で作成し,大切な支援を当事者とともに考える機会も得ました。詳しくは協会ホームページ(https://as-kyoto.com)をご覧ください。

 すべての子どもに明るい未来を!窮地を乗り越える大人の底力,医学の真の力で,未来が拓けていくことを信じます。

2021年10月15日号TOP