2022年4月1日号
上京東部医師会と府医執行部との懇談会が令和3年11月17日(水),Webで開催され,上京東部医師会から10名,府医から8名が出席。「オンライン診療の今後」,「コロナ感染患者,自宅療養患者への診療所の関わり」をテーマに,また,当日の追加質問として「コロナの抗原検査キット」,「小児への新型コロナワクチン接種」が出され,活発な議論が行われた。
〈注:この記事の内容は11月17日現在のものであり,現在の状況とは異なる部分がございます〉
新型コロナウイルス感染症の影響により,令和2年4月から時限的・特例的措置として,初診からの電話・オンライン診療が認められるようになった。
電話・オンライン診療実施の届出医療機関数は,この1年はほぼ横ばいであるが,都道府県別では,京都は届出医療機関の割合が全国で最も低い状況にある。
オンライン診療に関する公的な議論の場は,診療報酬について議論される中医協と,指針に関して議論される厚労省主催の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」の2つである。中医協においては,支払い側がオンライン診療の普及に向けて算定要件の緩和と点数引上げを主張するのに対し,診療側は利便性ばかりを評価する風潮を批判して,保険診療は対面診療が原則であることを主張するという議論が続いている。
厚労省の検討会では,初診からのオンライン診療を恒久化させる政府の方針を踏まえ,指針改訂に向けた議論が進められている。新たな指針では,安全性に配慮しつつ初診でも対応できる仕組みを整備した上で,一定の条件を設けて初診からのオンライン診療を容認しようとしている印象である。検討会の構成員である今村日医副会長の「オンライン診療は対面診療の補完である」との意見に対し,健保連は「補完ではなく,新たな診療形態の一つとして位置づけるべき」と双方の見解は異なっている。
なし崩し的なオンライン診療の普及により被害を受けるのは患者であり,医療機関である。日医が言う原則論を維持し,十分に安全性を担保した形でなければ断じて認められないと主張し続けることが重要であるとした。
~質疑応答~
◇「健保連は,オンライン診療を新たな診療形態の一つとして位置づけるべきだと主張しているが,何か目的があるのか」と質問が出された。
患者は通院の手間が省け,医療費の削減に繋がるとの思惑から,できるだけ受診者数の減少に繋げたいというのが本音である。オンライン診療は,患者に治療を継続させる,内服を続けてもらう,指導をしっかり守ってもらうための新しいツールとして捉えるべきであり,医療側の利便性や金儲けに使うものではない。今後オンライン診療が進んできた時,医者の倫理観が試されるであろうと回答した。
◇「都市部でも届出医療機関数は少ないが,一旦,緩んだ規制は元に戻せないのではないか。今後,オンライン専門の医療機関が認可されていく流れはあるのか」と質問が出された。
通常,診療とは患者を診察して,診断・治療に結び付けていくものであり,オンラインだけというのはあり得ない。医薬品を販売する手段としてのオンライン診療が横行することを危惧している。オンライン専門の医療機関については日医としても絶対に阻止せねばならず,今後も注視していくと回答した。
京都府はコロナの第1波から5波の間で,厚労省から示された通知に基づいて,医療提供体制を構築してきた。入院医療コントロールセンターによる一元管理の下,陽性者の入院・宿泊療養・自宅療養の振り分けを行っているが,第5波で病床が逼迫すると自宅待機者が増加した。保健所も自宅待機者・自宅療養者の健康観察が追いつかなくなったため,京都市からの依頼で,府医会館に京都市電話診療所を設置し,対応にあたった。
第5波までの医療体制で,重症化率は抑えられているが,感染者の増加にともない,一定の割合で重症者数も増加する。感染者発見後,重症化を予防し,できるだけ早く治療に結びつけるには,かかりつけ医の段階での早期発見が重要である。また,中和抗体薬・内服薬の承認により,自宅療養者への支援なども期待され,今後ますます,かかりつけ医の役割は拡大していくとの見解を示し,地区医の協力を求めた。
~問題点,課題~
検討課題として,以下の点が挙げられた。
・自院で診療した患者の陽性判明後,発生届を提出しても,その後の動向が全く知らされていない。かかりつけ医としてフォローするためにも保健所との双方向の情報共有が必要。
・電話診療で処方薬を処方した場合の院外調剤薬局との協力体制。
・新型コロナ後遺症の研修会開催等,後遺症外来の体制整備。
その他,新型コロナウイルスの抗原検査キットの取り扱いや,小児のワクチン接種についても意見交換が行われた。