相楽医師会との懇談会 11.20 Web開催

「次期診療報酬改定の方向性や薬剤供給」,「新型コロナワクチンの接種」,「新型コロナウイルス感染対策」について議論

 相楽医師会と府医執行部との懇談会が令和3年11月20日(土),Webで開催され,相楽医師会から20名,府医から8名が出席。「次期診療報酬改定の方向性や薬剤供給」,「新型コロナワクチンの接種」,「新型コロナウイルス感染対策」をテーマに活発な議論が行われた。

〈注:この記事の内容は11月20日現在のものであり,現在の状況とは異なる部分がございます〉

次期診療報酬改定の方向性や薬剤供給について

<次期診療報酬の方向性について>
 日医は基本的な考えとして,診療報酬改定は前回改定の影響を精緻に検証し行うべきものであり,新型コロナウイルス感染症が甚大かつ複雑な影響を与えている状況下においては,正しいデータとエビデンスに基づく議論は極めて困難であるため,拙速な変化は現場に大きな混乱もたらすとして,次期改定は必要最低限の規模にとどめるべきとの認識を示していることを紹介。
 診療報酬改定に係る中医協での議論では,争点の1つである「コロナ・感染症対応」について,診療側はコロナ収束後も医療機関が感染症対策に万全を期すため,時限的措置として令和3年9月末で終了した医科外来等感染症対策実施加算などは基本診療料へ包括することも含め恒久化を主張していることを説明した。また,「かかりつけ医機能の評価」に関する議論においては,地域包括診療加算・料の対象疾患を拡大する方向性が示されていること等を報告した。

<薬剤の供給について>
 国内製薬企業の不祥事を契機に,後発品を中心とした多くの医薬品の製造・供給停止や出荷調整により,供給不足の状態が続いているが,厚生労働省では医薬品の安定確保に向けて,切れ目のない医療提供のために特に配慮を要する「安定確保医薬品」を選定し,供給不安情報の事前報告等により早期対応に繋げる取組みが進められてきたものの,供給不足に陥った際に想定されている代替品の増産・出荷調整,迅速な承認審査,安定確保スキーム等の対応は「絵に描いた餅」にすぎず,実際に機能することは困難であるとの見解を示した。
 日医は,供給再開時期や代替薬等に関する製薬企業からの情報提供が不十分であると現状認識しており,情報提供があった場合は速やかに情報公開するとしている一方で,医療機関に対しては,市場占有率の高い品目が出荷調整等の対象となる場合は,同種同効薬についても供給不足が生じることが想定されるため,処方にあたって患者の適格性,長期処方の見直し,処方の必要性の再検討を積極的に行うよう呼びかけていることを紹介した。
 地区からは,今回の後発医薬品の供給不足が後発医薬品使用体制加算やニコチン依存症管理料等の算定に与える影響について懸念が示され,府医としても日医を通じて厚労省に適切な対応を求めていくとした。

新型コロナワクチンの接種について

<これまでの新型コロナワクチンの接種状況等について>
 ワクチン接種状況について,諸外国では接種率が70%を超えずに頭打ち状態であるが,日本では2回目のワクチン接種率が右肩上がりに増加し,京都府内においても65歳以上は90%を超える状況にあり,第5波では重症者の割合も以前と比べて少なかったことから,ワクチンの効果が見てとれるとした。
 京都市におけるワクチン接種では,当初,集団接種の受付方法が先着順であったが,電話が殺到して市民の不満が噴出したため,予約の受付を「登録制」に変更し,いったんすべての予約を受け付けてから各会場に割り振る形としたことや,個別接種においては,府医からの提案によりLINEを用いた「京あんしん予約システム」を導入したことで各医療機関への問い合わせが減少したこと等,行政と情報共有を行いながら問題解決を図ってきたことを紹介した。
 相楽地域では集団接種をメインで実施し,看護師,薬剤師,行政と協調して事故防止に努めたことが奏功し,大きな問題なく,府内でトップクラスの接種率が実現できたことが報告された。

 3回目の追加接種に向けては,①接種ミスへの対応策について周知を図る必要があること,②VRSの入力に基づいて3回目接種券が作成されるため,VRSの誤登録や入力に非協力的な医療機関への対応が必要であること―等が課題であるとした。
 府医としても,ワクチンの副反応で大きな問題となるアナフィラキシーに関して,新型コロナワクチンの接種が開始される前に,府医救急・災害委員会において作成した「アナフィラキシー対応マニュアル」をすべての医療機関に配布し,注意喚起を図ってきたことを報告した。

新型コロナウイルス感染症対策について

<府医におけるこれまでの新型コロナウイルス感染症対策>
 発生当初は,各医療機関において必要と判断した場合でもPCR検査ができない状況であったため,有症状者の検査機会を確保するため,「京都・医師会京都検査センター」(以下,「府医検査センター」という)を府内6カ所に設置し,ドライブスルーによるPCR検査を実施したが,その後,各集合契約医療機関において唾液または鼻咽腔,鼻腔採取によるPCR検査や抗原定量・定性検査等を行政検査として実施できる体制が整備されたことで検査機会が大幅に増えたことを受け,府医検査センターのドライブスルーによるPCR検査を令和3年4月初旬に休止。
 また,府医検査センターでは,「きょうと新型コロナ医療相談センター」からの連絡を受け,検査が必要な有症状者を診療・検査医療機関に紹介する業務を行ってきたが,10月末には京都府が診療・検査医療機関を公表することとしたため,「きょうと新型コロナ医療相談センター」から公表された診療・検査医療機関へ直接紹介される形へシフトしたことで府医検査センターへの照会も激減したことが報告された。
 今後,ドライブスルーによるPCR検査の再開はもとより,同センターの紹介業務も不要になる見通しであり,今後も有症状者への検査・診療がよりスムーズに実施されるよう,引続き診療・検査医療機関の拡充を図っていく必要があるとの考えが示された。

<自宅療養者への対応について>
 第5波では自宅療養者の健康観察が大きな課題となったが,令和3年2月に厚労省が示した「医療逼迫時の地域における医療提供体制の役割分担のイメージ図」において,地域のかかりつけ医や訪問看護ステーション等が無症状・軽症の宿泊療養・自宅療養者の支援を行うことが想定されていることを紹介。
 感染者の増加により保健行政も逼迫し,保健所による健康観察が追い付かなくなった状況を受けて,府医では令和2年~3年にかけての年末年始とゴールデンウィークに電話による自宅療養者の健康観察を実施。令和3年8月には京都市からの要請を受けて府医会館内に「京都市電話診療所」を設置し,京都市内の各地区医からの出務医師5名と府医役員2~5名の体制で,分担して電話による健康管理と健康相談を実施した。投薬が必要な場合は処方箋を発行し,薬剤師会の協力を得て,連携の調剤薬局から患者宅へ薬剤を届ける体制を構築するとともに,患者の状態に応じて入院や中和抗体薬の適応,市内の陽性者外来でのCT,血液検査等の受検など,京都府入院医療コントロールセンターに対して種々の調整を依頼したことを報告した。
 今後,かかりつけ医による自宅療養者・自宅待機者の健康観察と大きな課題となるが,現状の課題として,かかりつけ医が発生届を提出した後,行政から情報のフィードバックがなく,その患者の状態や療養先が全くわからない状況にあると指摘。保健所と医療機関との双方向の情報共有が不可欠であることや,処方薬が必要な場合に院外調剤薬局との協力体制の構築,また,院内処方の医療機関においてはどのように薬剤を送達するか等,今後の体制構築に向けて調整が必要であるとした。
 相楽医師会においても,保健所からの依頼を受け,有志を募って電話による自宅療養者への健康観察を実施し,薬剤師会の協力のもと,処方薬をポストインできるようネットワークが構築されたことと併せて,第6波に備え,電話診療,往診,点滴など協力可能な内容や,かかりつけ患者以外でも対応可能かどうか等をリストアップして協力医を登録し,保健所との双方向の情報共有により協力体制を整備していることが報告された。

保険医療懇談会

※乙訓医師会との懇談会 P.3参照

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