京都府立医科大学医師会との懇談会 11.30 Web開催

「今後の新型コロナ(新興感染症)の医療体制構築・第6波に向けて」,「医師の働き方改革の進捗状況」について議論

 京都府立医科大学医師会と府医執行部との懇談会が令和3年11月30日(火),Webで開催され,京都府立医科大学医師会から13名,府医から6名が出席。「今後の新型コロナ(新興感染症)の医療体制構築・第6波に向けて」,「医師の働き方改革の進捗状況」をテーマに活発な議論が行われた。

〈注:この記事の内容は11月30日現在のものであり,現在の状況とは異なる部分がございます〉

今後の新型コロナ(新興感染症)の医療体制構築・第6波に向けて

<京都府内の新型コロナウイルス感染症に係る医療提供体制>
 府医では,早期発見,早期治療,自宅療養者・待機者の健康観察を念頭に体制整備を進め,ドライブスルーによるPCR検査を実施する「京都府・医師会京都検査センター」を府内6カ所に開設するとともに,集合契約医療機関において唾液によるPCR検査等を行政検査として実施できる体制を整備。その後,診療・検査医療機関による診療体制を整え,「きょうと新型コロナ医療相談センター」とも連携して確実に発熱患者の診療と検査に繋げてきたことを報告した。
 中和抗体薬・内服薬が承認されたことにより,今後は早期の治療介入が期待されるが,現在,京都府では選定した医療機関に中和抗体薬を配置しており,診療・検査医療機関で陽性判明後,すぐに使用できる仕組みやバックアップ体制の構築が課題であると指摘した。
 第4・5波では陽性者の急増により保健所が機能不全に陥ったことを踏まえ,国は保健所のみで対応を行う従来の取り扱いを転換し,地域の医療機関と連携した対応を強調しており,京都市においても保健所による自宅療養者の健康観察が追い付かない事態となったため,市の要請を受けて府医会館に「京都市電話診療所」を設置し,各地区医からの出務医と府医役員の計7~10名体制で対応にあたったことを報告した。

<第6波に備えて>
 自宅療養者・待機者の健康観察については,診療・検査医療機関が発生届を提出した後,保健所から情報のフィードバックがなく,その後の患者の動向が不明であることが課題であると指摘し,保健所と医療機関との情報共有が可能になれば,検査・診断した医師による健康観察や退院・療養解除後のフォロー等もスムーズになるとの考えを示し,整備が検討されている後遺症外来設置医療機関との連携も今後の課題であるとした。

 その後の意見交換では,第5波において子ども同士の感染や,子ども→家族→職場という感染経路が多く報告される中,家族全員が感染し,子どもは無症状・軽症であるが親だけを入院させる必要がある場合に,誰が子どもの世話をするのかという新たな問題が生じたことを受け,各新型コロナウイルス感染症対応医療機関の小児科のメンバーが子どもへの対応に係る問題の整理を図っていることが報告された。
 府医大小児科では,京都府を4ブロックに分けてそれぞれに中核地点を設け,小児の年齢,症状,重症度,親の感染状況等を考慮した上で入院・療養できる体制を整えていると説明があり,子どもの対応についても,児童福祉センターとの協力により,府医大の認定看護師等による訓練を実施した上で,同センターの職員が付き添いやお世話をできるよう,第6波に備えた取組みを開始したことが報告された。また,妊産婦に関しても京都府周産期医療協議会において,各ブロックの拠点病院を設定するなど,地域ごとに取組みが進められていることが紹介された。
 最後に,陽性の妊産婦に対応すべく,京都市および京都産婦人科医会との協働で,府医会館の駐車場に診察用のコンテナハウスが設置されたことが報告された。

医師の働き方改革の進捗状況について

 日本の医療提供体制は,医師・看護師等医療従事者の過重な労働に支えられているが,厚労省による令和元年度の調査では,上位10%の時間外労働が年換算1,824時間と,もはや限界を超えている状況にあり,医療従事者の健康確保,地域の医療提供体制の確保を目的として「医師の働き方改革」が進められている。
 国は,医師の時間外労働の水準として,「A:上限を原則年間960時間」,「B:地域医療確保のための特例水準」,「C1・C2:集中的技能向上水準」の3つに分け,2024年度から適用することと併せて,将来的にはB水準を無くしてA水準とC1・C2水準に集約していく方向性を示しており,当面は2024年度に向けて,国・都道府県・医療機関が一体となって取組みを進める必要がある。
 府医大では,昨年11~12月に業務時間および自己研鑽時間に係る調査を実施し,その結果を受けて,個人の自己研鑽時間や各診療科の構造的な問題について再確認を呼びかけるとともに,意識づけを行った上で,今後の課題と計画を示して具体的な取組みに着手したことが報告された。労務管理の徹底,タスク・シフトおよびシェア,ICTを活用した業務効率化,外来短縮に向けた地域の医療機関との機能分化・連携促進等,業務改善に向けた取組みを推進するため,ワーキンググループを立ち上げて検討を進めていることが紹介された。
 医師の働き方改革の推進には,管理者と医師自身が意識改革し,その必要性について認識するとともに,職員に遍く周知して情報共有し,大学全体として取組むことが重要であるとの考えを示し,連携病院とも協調しながら当直の短縮化や労務管理の適正化を進めていく必要があるとした。

 その後の意見交換では,医師の働き方改革は,地域医療構想,医師偏在対策と併せて一体的に議論していくことが不可欠であるとした上で,地域医療構想では各医療圏において必要な医療の内容・量とともに,医療資源を踏まえた総合的な判断が必要であり,今後,感染症対策も含め,複雑多岐にわたる議論を前に進めていかなければならないと指摘。府医では,京都府全体で良医を育てるという理念のもと,医師の働き方改革と研修医教育との両立を目指し,各病院における取組みや問題点を共有して府内全体の教育の質向上に取組んでいることを紹介し,今後も,医療資源において最も重要な「人材」の供給元である大学との密な連携が不可欠であるとの認識を示した。
 また,機能分化と連携強化を進めるにあたっては,地域のかかりつけ医も意識改革が必要であるとして,今後,短期間で医療を取り巻く状況が変わっていくことも念頭に置き,相互に情報共有しながら議論を深めていく必要があるとの考えが示された。
 府医大からは,医師の働き方改革の議論では,医師,看護師等医療従事者の根本的な業務の見直しが求められており,医療機関内はもちろん,地域においてもそれぞれの役割分担を明確化することは地域医療構想の考え方とも合致すると説明。今後も大学病院として,また特定機能病院としてさらに高度急性期医療に取組む一方で,地域の医療機関との機能分化・連携強化を図り,地域完結型医療を目指して「面」で地域医療を支えていくことが重要であるとした。また,人材育成・教育の観点からも,研修医を学内のみならず地域というフィールドで育てていくことが大事であるとして,地域医療がより良いものになるよう協調していく考えが示された。

2022年4月1日号TOP