保険だより – 公知申請に係る事前評価が終了した医薬品の保険上の取り扱いについて

 医薬品は,原則として承認された効能・効果および用法・用量を前提に保険適用されていますが,保険適用を迅速に行うことでドラッグ・ラグを解消する観点から,一定の条件を満たした医薬品については,今後追加される予定の効能・効果および用法・用量についても保険適用を可能とする取り扱いが,中医協総会にて了承されています。
 今般,2月 25 日に開催された薬食審第一部会において,不妊治療に関する医薬品として,下記7成分 11 品目についての事前評価が行われた結果,当該品目については公知申請を行っても差し支えないとの結論となりましたので,お知らせします。

▷4月1日から保険適用が可能となった医薬品
1.一般名:精製下垂体性性腺刺激ホルモン
  販売名:①フォリルモンP注 75,同注 150
      ② uFSH 注用 75 単位「あすか」,同注用 150 単位「あすか」
  会社名:①富士製薬工業株式会社
      ②あすか製薬株式会社
  追記される予定の効能・効果:
      生殖補助医療における調節卵巣刺激
  追記される予定の用法・用量:
      通常,150 又は 225 単位を1日1回皮下投与する。
      患者の反応に応じて1日 450 単位を超えない範囲で適宜用量を調節し,卵胞が十分に発育するまで継続する。
  追記される予定の注意喚起

  • 投与開始時期は,組み合わせて使用する薬剤に応じて適切に判断すること。
  • 患者により卵巣の反応性は異なるので,開始用量は患者特性を考慮して決定(減量又は増量)すること。用量調節を行う場合には,超音波検査や血清エストラジオール濃度の測定により確認した患者の卵巣反応に応じて行うこと。用量調節は投与開始5日後から可能とし,増量幅は 150 単位以下とすること。
  • 超音波検査及び血清エストラジオール濃度の測定によって十分な卵胞の発育が確認されるまで投与を継続すること。最終投与後,最終的な卵胞成熟を誘起したうえで,採卵すること。
  • 本剤は,不妊治療に十分な知識と経験のある医師のもとで使用すること。本剤投与により予想されるリスク及び注意すべき症状について,あらかじめ患者に説明を行うこと。
  • 卵巣過剰刺激症候群の発症の兆候が認められた場合には,本薬の投与を中断し,少なくとも4日間は性交を控えるよう指導すること。
  • 本人及び家族の既往歴等の一般に血栓塞栓症発現リスクが高いと認められる女性に対する本薬の投与の可否については,本薬が血栓塞栓症の発現リスクを増加させることを考慮して判断すること。
  • 本剤の投与の適否は,患者及びパートナーの検査を十分に行った上で判断すること。原発性卵巣不全が認められる場合や妊娠不能な性器奇形又は妊娠に不適切な子宮筋腫の合併等の妊娠に不適当な場合には本剤を投与しないこと。また,甲状腺機能低下,副腎機能低下,高プロラクチン血症及び下垂体又は視床下部腫瘍等が認められた場合,当該疾患の治療を優先すること。
  • 在宅自己注射を行う場合は,患者に投与法及び安全な廃棄方法の指導を行うこと。
    • 自己投与の適用については,医師がその妥当性を慎重に検討し,十分な教育訓練を実施したのち,患者自ら確実に投与できることを確認した上で,医師の管理指導のもとで実施すること。また,溶解時や投与する際の操作方法を指導すること。適用後,本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な場合には,直ちに自己投与を中止させるなど適切な処置を行うこと。
    • 使用済みの注射針あるいは注射器を再使用しないように患者に注意を促すこと。
    • 全ての器具の安全な廃棄方法について指導を徹底すること。同時に,使用済みの針及び注射器を廃棄する容器を提供することが望ましい。
    • 在宅自己注射を行う前に,本剤の取扱説明書を必ず読むよう指導すること。

      ※なお,本剤の自己注射の詳細については各社が作成する資材(取扱説明書)を参考とすること

2.一般名:セトロレリクス酢酸塩
  販売名:セトロタイド注射用 0.25mg
  会社名:日本化薬株式会社
  既承認効能・効果:
      調節卵巣刺激下における早発排卵の防止
  追記される予定の用法・用量:
      卵巣の反応に応じて本剤を投与開始し,最終的な卵胞成熟の誘発当日まで,
      セトロレリクスとして 0.25mg を1日1回腹部皮下に連日投与する。
  追記される予定の注意喚起

  • 本薬の投与開始は,経腟超音波検査の所見等に基づき判断すること。

3.一般名:クロミフェンクエン酸塩
  販売名:クロミッド錠 50mg
  会社名:富士製薬工業株式会社
  追記される予定の効能・効果:
      生殖補助医療における調節卵巣刺激
  追記される予定の用法・用量:
      通常,クロミフェンクエン酸塩として1日 50mg を月経周期3日目から5日間投与する。
      効果不十分な場合は,次周期以降の用量を1日 100mg に増量できる。
  追記される予定の注意喚起

  • 本剤は,不妊治療に十分な知識と経験のある医師のもとで使用すること。本剤投与により予想されるリスク及び注意すべき症状について,あらかじめ患者に説明を行うこと。
  • 本剤の投与の適否は,患者及びパートナーの検査を十分に行った上で判断すること。原発性卵巣不全が認められる場合や妊娠不能な性器奇形又は妊娠に不適切な子宮筋腫の合併等の妊娠に不適当な場合には本剤を投与しないこと。また,甲状腺機能低下,副腎機能低下,高プロラクチン血症及び下垂体又は視床下部腫瘍等が認められた場合,当該疾患の治療を優先すること。

4.一般名:ジドロゲステロン
  販売名:デュファストン錠5mg
  会社名:マイラン EPD 合同会社
  追記される予定の効能・効果:
      生殖補助医療における黄体補充
  追記される予定の用法・用量:
      通常,ジドロゲステロンとして,1回 10mg を1日3回経口投与する。
  追記される予定の注意喚起

  • 通常,本薬の投与期間は,以下のいずれかとする。
    • 新鮮胚移植の場合は,本薬を採卵日から妊娠成立(妊娠4~7週)まで投与する。
    • 自然周期での凍結融解胚移植の場合は,本薬を排卵日から妊娠成立(妊娠4~7週)まで投与する。
    • ホルモン補充周期での凍結融解胚移植の場合は,本薬を,卵胞ホルモン剤の投与により子宮内膜が十分な厚さになった時点から最長妊娠 12 週まで投与する。
  • 本剤は,不妊治療に十分な知識と経験のある医師のもとで使用すること。
  • 本剤投与により予想されるリスク及び注意すべき症状について,あらかじめ患者に説明を行うこと。

5.一般名:メトホルミン塩酸塩
  販売名:メトグルコ錠 250mg,同錠 500mg
  会社名:大日本住友製薬株式会社
  追記される予定の効能・効果:
      多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発
      ただし,肥満,耐糖能異常,又はインスリン抵抗性のいずれかを呈する患者に限る。
  追記される予定の用法・用量:
      他の排卵誘発薬との併用で,通常,メトホルミン塩酸塩として 500mg の1日1回経口投与より開始する。
      患者の忍容性を確認しながら,500mg の1日3回経口投与を超えない範囲で増量し,排卵までに中止する。
  追記される予定の注意喚起

  • ゴナドトロピン製剤を除く排卵誘発剤で十分な効果が得られない場合に併用を考慮すること。
  • 糖尿病を合併する多嚢胞性卵巣症候群の患者では糖尿病の治療を優先すること。
  • 本剤は,不妊治療に十分な知識と経験のある医師のもとで使用すること。
  • 本剤投与により予想されるリスク及び注意すべき症状について,あらかじめ患者に説明を行うこと。
  • 妊娠初期の投与を避けるため,以下の点に注意すること。
  • 患者に投与前少なくとも1カ月間及び治療期間中は基礎体温を必ず記録させること。
  • 本薬投与開始前及び次周期の投与前に妊娠していないことを確認すること。
  • 卵巣の刺激が過剰となった結果として多胎妊娠となる可能性があることをあらかじめ患者に説明すること。

6.一般名:メトホルミン塩酸塩
  販売名:メトグルコ錠 250mg,同錠 500mg
  会社名:大日本住友製薬株式会社
  追記される予定の効能・効果:
      多嚢胞性卵巣症候群の生殖補助医療における調節卵巣刺激
      ただし,肥満,耐糖能異常,又はインスリン抵抗性のいずれかを呈する患者に限る。
  追記される予定の用法・用量:
      他の卵巣刺激薬との併用で,通常,メトホルミン塩酸塩として 500mg の1日1回経口投与より開始する。
      患者の忍容性を確認しながら,500mg の1日3回経口投与を超えない範囲で増量し,採卵までに中止する。
  追記される予定の注意喚起

  • 糖尿病を合併する多嚢胞性卵巣症候群の患者では糖尿病の治療を優先すること。
  • 本剤は,不妊治療に十分な知識と経験のある医師のもとで使用すること。
  • 本剤投与により予想されるリスクについて,あらかじめ患者に説明を行うこと。
  • 妊娠初期の投与を避けるため,以下の点に注意すること。
  • 本剤投与開始前及び次周期の投与前は妊娠していないことを確認すること。

7.一般名:レトロゾール
  販売名:フェマーラ錠 2.5mg
  会社名:ノバルティスファーマ株式会社
  追記される予定の効能・効果:
      原因不明不妊における排卵誘発
  追記される予定の用法・用量:
      通常,レトロゾールとして1日1回2.5mgを月経周期3日目から5日間経口投与する。
      十分な効果が得られない場合には,1回投与量を5mg に増量することができる。
  追記される予定の注意喚起

  • 本剤は,不妊治療に十分な知識と経験のある医師のもとで使用すること。
  • 本剤投与により予想されるリスクについて,あらかじめ患者に説明を行うこと。
  • 妊娠初期の投与を避けるため,以下の点に注意すること。
  • 患者に,投与前少なくとも1カ月間及び治療期間中は基礎体温を必ず記録させること。
  • 本剤投与開始前及び次周期の投与前は妊娠していないことを確認すること。
  • 卵巣の刺激が過剰となった結果として多胎妊娠となる可能性があることをあらかじめ患者に説明すること。
  • 本薬を用いた周期を繰り返し行っても十分な効果が得られない場合には,患者の年齢等も考慮し,漫然と本薬を用いた周期を繰り返すのではなく,生殖補助医療を含め他の適切な治療を考慮すること。

8.一般名:カベルゴリン
  販売名:カバサール錠 0.25mg
  会社名:ファイザー株式会社
  追記される予定の効能・効果:
      生殖補助医療に伴う卵巣過剰刺激症候群の発症抑制
  追記される予定の用法・用量:
      通常,成人にはカベルゴリンとして1日 1 回 0.5mg を最終的な卵胞成熟の誘発日又は採卵日から 7 ~ 8 日間、就寝前に経口
      投与する。
  追記される予定の注意喚起

  • 多嚢胞性卵巣症候群の有無、血清抗ミュラー管ホルモン濃度、血清エストラジオール濃度、卵胞数等に基づき、生殖補助医療に伴う卵巣過剰刺激症候群の発症リスクが高いと判断される患者に対してのみ、本薬を投与すること。

2022年4月15日号TOP