府医第207回臨時代議員会

 府医では,3月19日(土),標記代議員会を新型コロナウイルス感染拡大によるまん延防止等重点措置適用下であることを鑑み,Web会議の形式で開催した。議案の決議は書面による議決権行使をもって行うこととし,代議員110名のうち93名より議決権行使書の提出があった。当日はWeb会議システムによる配信を行い,代議員48名の参加を得た。
 松井府医会長の挨拶に続き,「令和3年度庶務および事業中間報告」,「令和4年度京都府医師会事業計画」,「令和4年度京都府医師会予算」が報告され,その後地区からの代表質問ならびにその答弁が行われた。
 続いて議事に移り,第1号議案「令和3年度京都府医師会費の賦課徴収および減免に関する件」は,事前に議決権行使書による採決が実施され,賛成多数で可決したことが報告された。
 日医代議員・予備代議員選挙は,「日本医師会定款第16条」ならびに「一般社団法人京都府医師会における日本医師会代議員・日本医師会予備代議員選挙規定」に基づいて行われた。府医からの代議員・予備代議員の定数は各7名であるが,本選挙規定第7条により府医会長は無投票当選で日医代議員とすることが定められていることから,代議員6名,予備代議員7名について立候補を求めたことを報告。締切日に候補者が定数を超えなかったため,「本選挙規定第14条」により投票を行わず,日医代議員に内田府医理事,北川府医副会長,濱島府医副会長,谷口府医副会長,小野府医副会長,西村代議員会議長の6名が,日医予備代議員に角水府医理事,小柳津府医理事,松田府医理事,禹府医理事,畑府医理事,上田府医理事,武田府医理事の7名がそれぞれ当選した(記載は届出順)。
 続く協議では,今期の診療報酬改定において,経済財政諮問会議や規制改革推進会議等の外部の会議体からの要求に応じて経済効率のみを優先し,中医協で十分な議論が行われないまま初診からのオンライン診療やリフィル処方箋が導入決定されたことを受けて,政府に対し,「公的保険医療には,エビデンスに基づいた有効性と安全性を第一に議論・導入すべきであり,厚生労働省内での医学的審議内容を最優先すべきである」ことを求める決議が採択された(決議文は別掲)。

内田 府医理事

畑 府医理事

松井府医会長 挨拶

 新型コロナウイルス感染症の第6波もようやく減少傾向に入り,延長されていた「まん延防止等重点措置」も3月21日で終了する見通しであるが,感染者数が直近の7日間平均で1,000人を超える現在の状況で同措置が解除されることにより,感染の再拡大が懸念されるとともに,オミクロン株の新たな変異種BA.2も報告されており,ウイルスが変異を続けながら市中に存在することから,終息までには引続き警戒が必要であるとの見方を示した。

松井 府医会長

 診療・検査医療機関,宿泊療養者および自宅療養者の健康観察,ワクチン接種に対する協力に謝意を述べた上で,今,我々がすべきことは,引続き感染症対応の医療体制を維持しつつ,できるだけ早くに3回目のワクチン接種を特に高齢者ならびに基礎疾患を有する人に完了することであるとして,引続きの協力を依頼した。
 2022年度の診療報酬改定では,本体の改定率が0.43%になったことと併せて,2月9日の中医協からの答申を受けて明らかになったその内容について触れ,今回新たに追加された不妊治療の保険適応は,2020年12月に全世代型社会保障検討会議がとりまとめた「全世代型社会保障改革の方針」に盛り込まれた施策が菅前内閣において閣議決定され,今回の診療報酬改定で実現したものであると説明。同じく,岸田内閣で取組んでいる看護・介護・保育における処遇改善の一環として看護職員の処遇改善の方針が示されるとともに,感染症対策の継続に加え,リフィル処方箋の導入や初診解禁を含めたオンライン診療の利用促進が盛り込まれたことを報告した。
 不妊治療,看護師の処遇改善にはそれぞれ診療報酬の0.2%相当の財源が必要とされており,仮にその埋め合わせのために患者の利便性や負担減を理由としてリフィル処方箋やオンライン診療の促進が進められているのであれば,必要な医療とその財源の確保について,本当に国民の健康を守るという目的のために検討されているのかと疑問を呈し,会員各位には改めて,利便性や負担減ということに流されることなく,リフィル処方箋の発行やオンライン診療の実施に際しては,本当に当該患者にとって最良の診療方法なのか,また,安全性の確保に十分留意した上で実施していただくよう呼びかけた。
 今回の改定は新型コロナウイルス感染拡大下という特殊な状況で行われたが,団塊の世代が75歳を超える2025年が目前に迫る中で,人口減少,少子高齢化とそれによる疾病構造の変化に応じた医療体制とその裏付けになる財源の確保という医療制度の抜本的見直しが必要であると指摘した。
 さらに,この間,議論が止まっていた地域医療構想については,目標年である2025年まであと3年となる中,新型コロナウイルス感染症を経験し,地域医療における医療機関の役割分担と連携推進の必要性を実感したと述べた上で,既存病床の削減という視点ではなく,それぞれの医療圏で必要な医療機能とその量,つまり病床数を含む医療資源をどうするか,高度医療とそれを支えるための役割分担と連携をどう進めるかの議論を早急に再開すべきとの考えを示し,中でも,かかりつけ医の役割は大きく,その一層の機能強化を取組むべき課題の一つに挙げた。
 大病院志向を改め,かかりつけ医に高度医療へのゲートキーパーの役割をさせようという国の方針は言うまでもなく医療費の削減が目的であると指摘。単なるゲートキーパーではなく,「健康に関することを何でも相談でき,必要な時は専門の医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになるかかりつけ医」として,必要な人が必要な医療を受けられるよう役割を果たすことこそが国民の期待するところであるとの考えを示し,医療を取り巻く環境がどのように変化しようとも,医師としての矜持を忘れず,患者の利益を最優先して地域住民の健康維持・増進に努めることを改めて確認した。
 最後に,府医は今後も「必要な人が必要な医療を受けることのできる」医療体制を維持することを目的に,会内において広く先生方と協議を行い,提言に繋げていくとした上で,それを実現するための原動力は医政活動であり,その重要性について改めて理解と協力を求め,挨拶を締めくくった。

代表質問

 代表質問では,下京西部,上京東部,京都市西陣の3地区から代議員が質問に立ち,医療が抱える課題について質疑が行われた。質問内容および執行部の答弁(概要)は次のとおり。

◆中野 昌彦 代議員(下京西部)

〔「京都府医師会の組織率」,「精神疾患に対する救急応需体制」について〕

①国民に良質な医療を提供するために,日本で医療に従事するすべての医師が医師会に加入することが理想であるが,府医の組織率は全国平均および他の都道府県と比較してどのような状況か。

中野 代議員

◇北川府医副会長

北川 府医副会長

 日医の医師会組織強化検討委員会が令和3年9月に公表した令和2年度の都道府県別医師会入会率のデータにおいて,三師統計を基にした京都府の医師総数は8,847名,うち府医会員数は4,396名で,組織率は49.6%となっており,全国平均(58.2%)より低い状況であることを紹介した。
 また,日医への入会率は36.2%で全国平均(52.9%)を下回り,地区医への入会率は62.2%で全国平均(62.7%)と同程度であるとともに,勤務医,研修医の組織率では,日医のデータと府医会員の実態には若干の差異があるものの,京都府の勤務医の総数が三師統計で6,912名,うち府医会員数は2,006名で組織率は29.0%となっており,全国平均(41%)を大幅に下回っていることを報告した。
 府医では以前より,医師の8割弱を占める勤務医の入会率が低いことが組織率の低さの要因となっている状況が続いており,大きな課題として捉えているとの認識を示した上で,近年は関連委員会にご参画の先生方のご尽力や担当役員の努力等により,勤務医の先生方に府医についての理解を得ることや,各事業への参加・協力,子育てサポートセンター等の勤務医をサポートする事業等,多様な取組みを展開したことで,府医B会員(勤務医)の会員数が十年前に比べると200名以上増加していることから,引続き現在の方針・方向性で着実に対策を進めていくと回答した。
 さらに,府医では,新研修医総会オリエンテーション,屋根瓦塾,研修医ワークショップなど研修医向け事業の充実を図ると同時に,平成28年に初期研修医の会費を無料化し,研修終了後の継続加入を促すために医籍登録10年以内のB1会員の会費減額を実施した結果,平成23年度には6名であった研修医の入会が,近年では毎年60~100名程度に増加し,先の日医報告書においても,平成30年度と令和元年度のマッチング数の合計が503名,このうち府医会員となっている研修医は207名で組織率は41.1%となり,全国平均(35.6%)を上回っていると説明した。令和4年度には,研修医向けの新規事業も企画しており,今後も継続的に若手医師,研修医に開かれた取組みを実施し,長期的な視点で入会数の増加につなげていく考えを示し,今後も地区医の協力が不可欠であるとして一層の理解と支援を依頼した。

②多くの救急告示病院が精神科救急への対応に苦慮している現状から,京都(特に京都市内)の精神科病院の救急応需体制の状況と,身体疾患・精神疾患の合併症例が一般の救急告示病院に搬入された後,オンライン等で精神科医のアドバイスが得られるような体制を構築できないか。

◇谷口府医副会長

谷口 府医副会長

 京都府・京都市における精神科救急の現状と概要について,まず,京都府における精神科救急医療圏は,京丹波町以北を「北部」,南丹市以南を「南部」として分けた2つの医療圏で構成されており,それぞれにおいて適宜,医療・行政・消防・警察等の関係機関によって構成される「精神科救急医療システム連絡調整会議」が開催され,課題の共有と対応について検討されていることを説明した。
 精神科救急については,平日・日中の相談を保健所・保健福祉センターが,夜間・休日の相談については一般社団法人京都精神保健福祉協会が運営する「精神科救急情報センター」が対応しており,相談内容によって,保健所・保健福祉センターと精神科救急情報センターによる情報共有が行われることと併せて,夜間・休日の患者受入については,北部は舞鶴医療センター,南部は府立洛南病院を基幹病院として,北部・南部それぞれで複数の精神科病院による輪番制が組まれていることを紹介した。
 精神病床を有する総合病院の入院患者を対象とした厚生労働科学研究において,身体疾患,精神疾患ともに入院治療を要する患者が発生する割合は人口10万対年間25件と推計されており,京都府では当該患者について,大学病院等,精神科と内科・外科等の診療科とを併せ持つ病院での受入れを推進し,特に大学病院については,がん・白血病等の高度かつ専門的な医療が必要な身体疾患を合併する精神疾患患者の受入れが進められていることを報告した。
 また,山城北,山城南を含めた山城圏域において展開されている身体合併症対策,自殺未遂者対策として,一般科病院と精神科病院とが連携し,必要に応じて電話相談や転院調整,事例検討会等を実施する「精神科救急医療連携強化事業」について触れ,同事業は京都府が宇治おうばく病院に委託し,府立洛南病院を協力病院として,二次・三次の一般科救急病院からの支援依頼に応じて,宇治おうばく病院の精神科医による電話相談や対診等が行われており,令和2年度の夜間・休日における実績は電話相談が21件,対診が2件であったことを報告。この連携強化事業により,一般科救急医と精神科医との溝も狭まり,平日・日中においてもスムースな相談や,一般科と精神科の間での転院が行われるようになっていると説明するとともに,他の地域においても,京都府としての事業ではないものの,精神科病院・一般科病院の連絡会を通じて問題解決が図られていることを紹介した。
 一方で,消防隊や救急告示病院に対する調査では,「受入先の調整に時間を要する」,「家族や関係機関との連絡」,「待機時間の対応に困る」といった問題が根強く挙げられていることから,「オンライン等を活用した精神科救急医療連携の強化」も含め,一部の病院に過重な負担がかからない体制づくりを京都府・京都市に強く働きかけていく考えを示した。
 その上で,令和4年度診療報酬改定においては,精神科救急医療の入院に関して,手厚い救急急性期医療体制,緊急の患者に対応する体制や医師の配置に係る評価が見直され,特に身体合併症対応医療機関への評価,加算を明確化し,都道府県の「精神科救急体制整備事業による指定」を施設基準に盛り込むなど,診療報酬による政策誘導が見てとれると述べ,京都府では年度内にこの指定が行われる予定のため,精神科病院においては,診療報酬改定の情報とともに,京都府からの情報にも留意するよう呼びかけた。
 府医としても,病院長会議等を通じて,救急告示病院と精神科病院による連携強化に寄与するとともに,行政に対しては,保健医療計画,地域医療構想等に関する協議の場において,地域の実情に応じた柔軟かつ適切な議論,政策立案が行われるよう積極的に働きかけていくと回答した。

◆小林 雅夫 代議員(上京東部)

〔医療機関におけるキャッシュレス決済について〕

 キャッシュレス決済を導入してほしい施設に,病院,調剤薬局が上位に挙げられるなど,医療機関におけるクレジットカード支払いやキャッシュレス決済のニーズが高まっているが,実際の導入率はクレジットカードが16.5%,電子マネー決済1.9%,QRコード決済は0.2%と低率にとどまっている。日医においても会員向けにキャッシュレスサービスの案内がされているが,キャッシュレス決済に対する府医の考えをお聞きしたい。

小林 代議員

◇小野府医副会長

小野 府医副会長

 コロナ禍の影響もあり,日本においてもキャッシュレス決済の普及が加速し,決済方法としても,従来はクレジットカードの利用が主流であったが,電子マネーやQRコードによる決済も急速に拡大しつつある中,医療機関におけるキャッシュレス決済の導入状況は,依然として低く,厚労省の調査によると病院においてはクレジットカードが49%,電子マネーが2.1%にとどまるほか,一般診療所ではさらに低い水準にとどまっていることを紹介。一方で,キャッシュレス決済に係る複数の調査において,導入を希望する場所として医療機関が上位を占めるという報告もみられることを報告した。
 政府の動きとしては,2020年7月に閣議決定された「経済成長フォローアップ」において,2025年6月までにキャッシュレス決済の利用率を4割程度まで引上げることが目標とされるなど,国内におけるキャッシュレス決済の普及促進を進めており,今般のコロナ禍において,その動きが加速しているとの現状認識を示した。
 また,医師会の動きとして,日医は,医療機関におけるキャッシュレス決済は医療機関の負担を最小限にした上で,希望する医療機関への普及を推進すべきとの見解を示しており,保険診療そのものに関わる協議・判断において,有効性,安全性よりも利便性を優先するかのような傾向が見られることには重大な懸念があるものの,キャッシュレス決済については利便性とコスト負担に係る判断が求められる課題であるとの考えを示した。
 日医においても,会員のコスト負担の軽減のため,ORCA管理機構を通じて日医会員限定で手数料負担の低減を図る取組みを開始していることを紹介した上で,各医療機関においてキャッシュレス決済への対応をどのように進めるかは,医療機関の体制,患者のニーズが多岐にわたる状況を考慮すると,最終的には各医療機関の判断に委ねられるものであると回答し,府医として引続き適切な情報提供に努めていくとした。

◆水谷 正太 代議員(京都市西陣)

〔リフィル処方箋の導入について〕

 リフィル処方箋について,現時点で決まっていることと,それを施行する際には新たな医学管理料等の創設はあるのかをお聞きしたい。
 また,結果的に受診抑制に繋がることが懸念されるリフィル処方箋の導入について,府医としては,どういう立場で対応されるのか伺いたい。

水谷 代議員

◇濱島府医副会長

濱島 府医副会長

 今回の診療報酬改定において,リフィル処方箋によるインセンティブ等はないとした上で,リフィル処方の結果として,受診抑制や受診回数の減少に繋がるという懸念は当然のことと同調しつつ,現時点で今後の患者の受診行動にどの程度影響を及ぼすのか,その予測は困難であるとした。一部の患者は受診の手間が減るという理由でリフィル処方箋を求めることが想定されるが,長期投薬により受診回数が減ることで起こりうるデメリットを医師が患者に十分説明して理解を得ることが重要であると指摘し,リフィル処方箋に限らず,すべての処方箋は医師のみの裁量で発行されるものであり,従来どおり,しっかりと患者を診察し,予見できる範囲で処方日数を決めるという診療方針を貫くことに尽きると回答した。
 府医として,リフィル処方箋の制度には反対の立場を表明し,最大の理由として,安全性よりも利便性が優先されてしまう懸念があるという点を挙げた。厚労省が発出した留意事項には,運用において調剤薬剤師が不適切と判断した場合にはリフィル調剤を中止し,医師への受診を勧奨することと明記されているが,そもそも病状の経過詳細はもとより,病名さえも把握できていない薬剤師が何をもって「不適切」と判断するのかが曖昧であり,「受診を勧奨する」ではなく,本来であれば「強く再診を指示する」とするのが適切であると指摘した。
 また,元来,保険収載される医療は,科学的に有効性と安全性が確認されたもの以外は認めないのが国際的にも共通のコンセンサスであり,例えば,先進医療を保険医療に組み込む際の評価療養制度では非常に厳格な審査過程を経て保険収載されるが,今回のリフィル処方箋の導入においては,そういった当然とも考えられる検証手続きをほとんど経ることなく収載されており,その導入過程に大きな問題があると訴えた。このことは保険診療の汚点となる可能性もあると述べ,このような事態が二度と生じることがないよう強く政府に訴えかけていく意向を示した。
 一方で,リフィル処方箋に何もインセンティブがない,ということは,ある意味で厚生労働省として決してリフィル処方箋の推進に積極的でないことの表れであるとも言えるとの見解を示し,これは財務・経産関係からの強い要望に対し,大臣折衝で厚労省側が折れたということを如実に物語っているのではないかと推察した。

令和4年度 京都府医師会費割当表

○賦課割合   A=100 : B1=18 : B2=4 : C=0 : D=4
        A会員以外の会員の会費月額100円未満は四捨五入

○減免額

<参考>
 会費賦課徴収規定第8条第3項

 医業収入が一定額以下かつ医業所得が一定額以下のA会員については、その理由を具した申請により、理事会の議を経てこれを減免することができる。

 会費賦課徴収規定第8条第4項

 満80歳に達したA会員(高齢者A会員)については、その翌月より会費を減免する。

 会費賦課徴収規定第9条第1項

 満80歳に達したB1会員、B2会員およびD会員については、その翌月より会費を免除する。

 会費賦課徴収規定第9条第2項

 前条第4項の会員のうち、医業収入が一定額未満の者については、その理由を具した申請により、理事会の議を経てこれを免除することができる。

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