2022年4月15日号
中京東部医師会との懇談会が12月22日(水),Webで開催され,中京東部医師会から8名,府医から10名が出席。「医師会に『ガラスの天井』はあるか(医師会における男女共同参画)」,「医師のワークライフバランス」,「在宅医療・介護連携推進事業における問題点」をテーマに活発な議論が行われた。
〈注:この記事の内容は12月22日現在のものであり,現在の状況とは異なる部分がございます〉
地区から,世間は男女共同参画社会を目指しているが,医師会執行部等の男女比がアンバランスではないかとして,意見交換を行った。
~日本の男女格差の現状~
2021年3月に世界経済フォーラムにおいて,「経済」,「政治」,「教育」,「健康」の4つの分野のデータを基に男女格差を測る「ジェンダーギャップ指数」が発表されたが,日本の順位は156か国中120位と先進国では最低レベルであり,アジア諸国の中でも韓国や中国,ASEAN諸国より低い結果であったことを報告。
日本では,以前から男女共同参画の推進のため,1986年に男女雇用機会均等法,1999年には改正男女雇用機会均等法,改正労働法などの法整備が進められてきたが,近年では働き方改革にダイバーシティなど,性別にかかわらず働きやすい職場や社会形成への取組みが必要とされているとの認識を示した。
~医師会における男女比~
現在の府医執行部は女性役員が3名,割合は9.7%であるが,府医では初の女性副会長の就任もあり,全国の中でも女性医師の活躍に対して先進的に取組んでいるとの見解を示した。また,府医会員数に占める女性医師の割合が年々増加していることにともない,今後,医師会役員における女性医師の割合も増加が見込まれるとした。現在も,医師のワークライフバランス委員会をはじめ,各種委員会に多くの女性医師に参画いただいているが,引続き医師会活動に参画しやすい環境整備を目指して検討していく考えが示された。
地区からは,女性の割合が少ないことに対して違和感をきちんと認識することが重要であり,いずれ女性医師が50%になる時代が来ることを見据え,「京都は女性医師が働きやすいので,京都で働こう」と思えるような環境整備を進めていくことが要望された。
医療従事者の健康や地域医療体制の確保を目的として進められている「医師の働き方改革」について,日医は,医師の時間外労働の上限規制を守るために大学病院が地域の病院から医師を引き揚げれば,地域の病院は医師を確保できず,診療の制限が起きかねないとの懸念を示していることと併せて,待遇格差による大学病院からの人材流出や産科医療への影響にも言及し,厚労省に医療現場の声を踏まえた柔軟な運用を求めていることを紹介した。
今回の新型コロナウイルス感染症のような非常時には,上限規制が足かせになることが懸念されるが,労基法第33条において,非常時には上限規制の枠外で時間外・休日労働をすることを容認しており,新型コロナウイルス感染症対応病院はこれに該当すると説明。日医は,同法第33条は安易に利用すべきではないとしつつも,それぞれの地域の病院で通常想定される以上の患者の集中が生じた場合には,患者の生命・健康を守るため適切に利用すべきであるとの見解を示していることを報告した。
医師の働き方改革は,地域医療構想,医師偏在対策と併せて一体的に議論していくことが不可欠であり,今後,このような地域の中核病院が必要な医師数を確保できるよう,国・都道府県・医療機関・医師会が一体となって支援していく必要があるとの考えを示した。また,働き方改革の実行には医師の増員が不可欠であり,診療報酬等で医師の報酬を増やさなければ各医療機関での対応も難しくなるとして,日医を通じて働きかけていく意向を示した。
地区からは,医師の自己犠牲によらず,多職種連携,チーム医療の中でどのように役割を分担していくかが課題であると指摘があり,「献身の搾取」は医師だけではなく,医療・介護全般に求められる傾向があるため,患者・利用者に影響が出ることへの懸念が示された。
地区医が京都市からの委託を受けて運営している在宅医療・介護推進支援センター(以下,「連携支援センター」という)の業務における問題点について,意見交換と情報共有を行った。
地区からは,京都市から明確な方針やビジョンが示されないまま運営を委託されていることが問題であり,連携支援センターのコーディネーターにとっては非常にやりにくく,それぞれの事業に対する考え方に行き違いが生じていると指摘。京都市として,連携支援センターの方向性を整理すべき時期にきており,各区の保健福祉センターの地域包括ケア担当保健師にも連携支援センター業務への参画を促し,コーディネーターの相談支援や相互の連携を推進すべきとの要望が出された。
地域資源や中心となる人材の確保,関係機関との協力関係の構築,事業の評価が難しいといった課題と併せて,行政の意識や支援の不足が顕在化したことで府医としても重要な問題であると再認識し,課題解決に向けて行政を積極的に巻き込み,一緒になって取組んでいく必要があるとの考えを示した。