2022年12月15日号
中京西部医師会と府医執行部との懇談会が11月8日(火),Webで開催され,中京西部医師会から10名,府医から9名が出席。「医療用物品等価格上昇に対する補助」,「ジェネリック医薬品の普及促進」をテーマに議論が行われた。
~国・京都府・京都市による補助について~
国では,新型コロナウイルスの感染拡大の防止および感染拡大の影響を受けている地域経済や住民生活の支援等を通じた地方創生を図ることを目的として,新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を6月に創設。さらに,本年9月9日に開催された「第4回物価・賃金・生活総合対策本部」において,物価高騰に対する追加策等が示され,6,000億円規模の「電気・ガス・食料品等価格高騰支援地方交付金」が創設された。
京都府では,国の交付金を活用し,原油価格・物価高騰等の影響により厳しい経営状況にある中小企業・小規模事業者の事業継続と経営改善を図るため,省エネ機器等導入の取組み支援を目的に,6月から補助を実施した(11月15日申請受付終了)。
京都市でも同様に業種を問わず売上高が減少している事業者や地域の物流を支える事業者を対象として,燃料費,光熱水費,原材料費,人件費,事務所等の家賃や資金調達コスト等事業の継続に要する経費に幅広く活用できる補助を実施した(10月末申請受付終了)。
~府医および日医における働きかけ~
府医では,10月に行われた京都府および京都市への令和5年度予算要望において,医療分野への支援を積極的に検討するよう要請した結果,京都府の補正予算にて,物価・燃料費高騰への支援として病院や有床診療所には1床あたり1万5千円,無床診療所には10万円の手当がなされることが決定された。
10月27日に開催された自民党「予算・税制等に関する政策懇談会」において,2023年度予算と税制改正について日医等医療関係団体にヒアリングが行われ,日医からはその席上において,物価高騰に対する医療機関へのさらなる支援を求めた。また,「電気・ガス・食料品等価格高騰支援地方交付金」が創設されているが,自治体によっては補正予算に組み込まれていないケースがあることを指摘し,すべての自治体で医療機関への支援が実現するよう働きかけを要望した。さらに,物価高騰の影響が続く場合には,今年度のみならず,来年度予算でも継続した支援を求めた。
◇質疑応答
地区から「注射針等の医薬品が,高騰している現状が診療報酬改定に反映される予定や可能性はあるか」との質問があった。
府医より,診療報酬の枠が決められているだけでなく,新型コロナウイルス感染症対策に多額の予算を投じたことから,財務省から厳しく予算を削るよう求められている以上,現状では診療報酬改定に反映することが難しく,これを実現するには政治的な働きかけが必要であるとの見方を示した。
現在,エネルギー資源を中心に物価が高騰していく中で,賃金は据え置かれていることから経団連からも医療従事者の賃金を6%アップさせる必要があるとの見解が示されており,このような状況の中で,府医としても物価高騰の影響を診療報酬改定へ反映させるよう日医を通して国に働きかけていきたいとの考えを示した。
2020年に大手後発医薬品メーカーで発覚した不正を皮切りに,他の後発医薬品メーカーでも数多くの不正が発覚したことから,多くの後発医薬品が出荷停止に陥った。その影響により先発医薬品も出荷調整となり,すでに処方していた患者に対して薬の変更を余儀なくされる等現場では厳しい対応が求められることとなった。一部,供給量が回復しているものあるが,今しばらくは現場での混乱と医薬品の供給不足が続く見込みである。
このような状況にも関わらず,国はジェネリック医薬品について,2021年6月の閣議決定で「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性確保を図りつつ,2023年度末までにすべての都道府県で80%以上」という目標を掲げている。当時すでにジェネリック医薬品の欠品は問題となっており,その状況を踏まえても国策として推進するという姿勢を示している。
京都府では,「後発医薬品安心使用に係る意見交換会」という会議があり,近年は新型コロナウイルスの感染を鑑みて,書面開催されている。今年は府医から「現状ではメーカーの不祥事,サプライチェーンの問題等により後発品の安定供給が滞り先発品供給にも影響が生じている。安定供給に数年を要す薬剤も多数認められ,このような現状の中,何事もないように目標に向かうことに疑問を感じる」との意見を書面にて提出し,京都府に対し対策を求めた。
日医も後発医薬品の不安定な供給状況を問題視しているが,その方向性としては業界に対して安定供給を強く求めるものであって,供給が不安定な現状における後発医薬品使用促進の是非については現在のところ特に言及していない。
府医としては,行政に対して意見を述べるとともに日医と連携を取って対応していきたい。
◇質疑応答
地区からは,医薬品が手に入りにくい状況が続いており,現場では患者に処方する量の調整が行われているが,この状況が続くのであれば診療への影響も避けられないことから,府医としても日医を通して国に改善を働きかけてほしいとの要望があった。
また,医薬品メーカーでは物価高騰によりすでに3割弱の品目は赤字であることがニュースで報道されており,このような医薬品メーカーへの支援や,医薬品の供給量を安定させるためにも薬価を上げるよう働きかけるべきではないかとの意見があった。
府医からは,国は医療費削減のためにジェネリック医薬品の使用を推奨してきたが,先発医薬品より審査基準が曖昧であったために,今回のような不正が相次ぐ事態となったとして,薬価よりも国の政策が誤りであったとの考えを示し,改善を求めていくことが重要であると回答した。
地区より2022年10月より一定の所得のある75歳以上の後期高齢者を対象として,医療費の自己負担割合が2割に引上げられることを受け,医療機関が一方的に儲けているとの印象が広まっていることから,本件に対する説明を国民に広報するよう厚労省に働きかけてほしいとの要望があった。
これに対し府医は,様々な制度の変更が行われる中で国から国民に対し十分な説明や広報が行われず,現場で説明しなければならない状況が多発しているとの認識を示すとともに,制度等の変更の際には国民に対する十分な説明を国に求めているが,実現には至っていないとして,今後とも働きかけていく意向を示した。
※伏見医師会との懇談会