2022年12月15日号
亀岡市・船井医師会と府医執行部との懇談会が11月12日(土)Webで開催され,亀岡市医師会から17名,船井医師会から9名,府医から6名が出席。「リフィル処方箋」,「マイナンバーカードと保険証」をテーマに議論が行われた。
~リフィル処方箋の問題点~
令和4年度診療報酬改定において導入されたリフィル処方箋は,安全性よりも利便性が優先されていることから,府医としても反対の立場である。中医協でも議論なく,大臣折衝で決定されたが,その背景には医療費削減を目論む財務省の意向が大きく反映していることは明らかである。
有効性と安全性が科学的に確認されたもののみが公的保険に導入されるべきだが,最近は経済効率のみを優先する外部の会議体からの要求が中医協での科学的議論なく導入決定されており,この点を強く問題視している。
~処方権は医師に~
リフィル処方の責任の所在については,処方権が医師にあることは変わっておらず,当然ながら医師が責任を負うことになる。日医も本年3月の臨時代議員会において,「処方から投薬に至るまで責任は医師にある。リフィル処方ではむしろ医師の説明責任が増えるため,慎重に判断していただきたい」と答弁している。患者負担の観点からもリフィル処方より,長期処方が少額で済むので,医師が必要性を慎重に判断した上で,処方されるべきである。
~薬局での対応~
薬剤師がリフィル処方箋に基づき処方する際は,同一の薬局で調剤を受けるべきであることを患者に説明することとされており,また,2回目以降の処方時には服薬状況等の確認を行い,不適切と判断した場合には,調剤を行わず,受診勧奨を行うとともに,処方医に速やかに情報提供を行うこととされている。医師と薬剤師が連携して服薬管理を行うことが必要とされているが,不適切と判断した場合の基準が示されておらず,薬剤師がきちんと情報提供,受診勧奨するかも不明である。
このような諸々の観点から,府医としては,リフィル処方を行うのではなく,引続き,定期的な管理をすべきと考える。
~普及状況について~
マイナンバーカードの普及率は,交付率が全国で51.1%,京都で50.4%。マイナンバーカードの保険証利用登録率については,都道府県別の数値は無いが,全国で22.9%である(10月末時点)。
※府内の医療機関のオンライン資格確認システム導入状況は上京東部医師会との懇談会参照
~実態把握のためアンケート実施~
府医では,医療機関における対応の実情を把握するために,本誌10月1日号に調査票を同封してアンケートを実施(※アンケート結果は京都医報11月15日号参照)。
導入費用について,導入時点で補助金の上限を超えるケースもあり,保守費用やランニングコストについては,何の手当もされていないことから,医療機関の負担になることは間違いなく,日医を通して厚労省や関連業界に少しでも負担が軽くなるよう働きかけている。
~国の方針~
保険証とマイナンバーカードの一体化について,本年6月の「骨太の方針」の時点では「2024年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入を目指し,さらにオンライン資格確認の導入状況等を踏まえ,保険証の原則廃止を目指す」というスケジュールと「加入者からの申請があれば保険証は交付される」旨が明記されていたが,本年10月の内閣改造による新大臣が唐突に2024年秋の保険証廃止を掲げた。この経緯から,政府自身が混乱していることは明白である。
マイナンバーカードに限らず,最近の国の政策は,政府が一定の方針を定め強引に推し進める傾向が顕著になっている。マイナンバーカード自体に情報が記録されているわけではないが,国民が不安を覚え,医療機関も取り扱いに非常に気を遣わなければならない。こちらも日医を通じて現場の声を伝えることが重要と考える。
~医療機関として義務を果たすことが重要~
オンライン資格確認の導入は,保険医療機関の責務を規定する「療養担当規則」にも規定され,原則義務化されていることを踏まえると,各医療機関が導入に向けて努力するしかない状況であるが,日医は各医療機関からの意見を集約した上で,やむを得ない事情で令和5年4月の稼働に間に合わない医療機関に対してペナルティが課されないよう,国に対して対応を要望するとしている。
府医では,マイナンバーカードの普及率や関連施策等の動向を見ながら,国の本気度を見定めてきたが,今回の義務化を契機として,本来の「保険資格がリアルタイムで確認できる」という便利さをしっかりと受け止めるために,各医療機関にはしっかりと準備を進め,期限内に設置する努力をしていただき,結果として,ベンダーの対応等,物理的な理由で間に合わなかったとしても,無計画に政策を推し進めようとした政府の責任であり,医療機関としての義務を果たしておくことが重要である。