2022年2月15日号
福知山医師会と府医執行部との懇談会が令和3年11月6日(土)にWeb開催され,福知山医師会から12名,府医から7名が出席。「新型コロナウイルス感染症」をテーマに活発な議論が行われた。
〈注:この記事の内容は11月6日現在のものであり,現在の状況とは異なる部分がございます〉
~最近の動向~
11月4日,厚労省は中和抗体薬(ロナプリーブ)の予防投与を承認し,濃厚接触者,無症状の新型コロナウイルス保有者,重症化リスク因子を有する者,ワクチン接種歴を有しない者,またはワクチン接種歴を有する場合でその効果が不十分と考えられる者を対象に含めた。
現在は,緊急事態宣言発出時の指標の見直しが検討されており,新規感染者数から医療の逼迫度に視点を変えることで議論が行われている状況である。
~第5波の特徴~
感染力の強いデルタ株の出現により,感染者増のスピードが速く,従来株では比較的少なかった若年層でも重症化が見られた。家庭内や職場内など日常生活の中で,若い世代を中心に感染拡大した一方で,高齢者においては,ワクチン接種が進んだことから感染者数の減少とともに重症化が著しく減少した。7月19日に,中和抗体薬が特例承認され,使用可能となった。
~人流と新規陽性者の関係~
人流を35日ずらすと感染者数のピークに一致した。感染して発病までの間に潜伏期間が2週間あるので,2週間後に注視してきたが,結果を見ると,第5波においては35日後に感染のピークが来ている。三次感染の時にピークが訪れると分析している。
10月1日に緊急事態宣言が解除され,35日後は今頃になるが,活動が活発になってきた状況の中でも,現在感染者数は増えていないので,終息に向かっている可能性があると考えられている。
~感染症対策の柱~
①感染者の早期発見
当初,発熱患者は帰国者・接触者相談センターに電話で相談し,センターから必要に応じて帰国者・接触者外来へ受診させる体制が取られたが,スムーズな受診には繋がらず,混乱を招いた。
府医では昨年4月30日にドライブスルー方式によるPCR検査センターを立ち上げ,福知山においても地区医の協力を得て,昨年12月22日に設置した。昨年7月20日からは,地域の医療機関で感染防御対策が進んだ結果,唾液・鼻腔ぬぐい液を検体とする検査を実施し,より安全な検査体制が構築された。
②感染者の隔離
当初,症状の軽重に関わらず入院措置が取られたので,感染症指定病院等のコロナ患者を対応する病院はすぐに満床となり,受入医療機関に過度の負担が生じたことから,入院治療の必要な感染者を入院とし,軽症者や無症状者は宿泊療養で対応する体制に移行した。
③積極的疫学調査
クラスターの拡大を防ぐことは大変重要で,積極的疫学調査が追い付かないほど感染が拡大した場合は医療崩壊を招く状況にあり,日常生活の強い制限が必要になる。
④重症患者の入院治療の確保
入院医療コントロールセンターの一元的な管理の下,入院・宿泊療養・自宅療養の振り分けがなされ,病院と診療所の役割分担が明確であった。中和抗体薬についても,コントロールセンターで対象患者を決め,治療に繋げた。
~次の感染症に備えて~
医療機関で感染症を診療するためには,感染防御対策法の周知(標準予防策とゾーニング),PPEの確保,病床の機能分化と連携,効果的な治療方法の確立と治療法の共有が必要である。
感染症治療に対しては,医療機関の規模に関係なく平時から感染症対策の周知徹底(ICTの設置),感染防御装備の備蓄,感染症患者受け入れのためのゾーニングの検討,病院においては感染症患者対応病床を何床確保できるかの確認,自院の機能の分析,高度医療機関との連携(上り搬送),高度医療機関からの受け入れ(下り搬送),回復後のリハビリテーション機能を検討し,平時からの連携体制の構築が不可欠である。
2024年度から29年度までを対象とする「第8次医療計画」では,5疾病・5事業に加えて新興感染症対策が盛り込まれた。平時からの連携体制の構築は,2025年を目指し各地域で議論されている地域医療構想の中にも盛り込むべき問題であり,地域医療構想調整会議において地区医の積極的な関与を依頼する。
感染症はいつも同じではない。感染力,病原性,致死率,症状,潜伏期間などの詳細が分からない状況においては,非感染者との接触を防ぐことが絶対条件になる。今後の対応においても,初期段階では,専門外来を設置し,診断にあたり,ウイルスの詳細が判明するに従い,臨機応変に対応できる体制を構築することが必要である。
~福知山医師会からの意見~
・第5波までを振り返っても,福知山において通常医療を実施しながら,コロナにも対応できたので,大きな混乱はなかった。
・北部には軽症者を診れる施設が少なく,市内ではホテル療養になるような方も病院に集まった。
・第6波は,これまでのパターンと同じではないだろう。重症感染者がICUを占拠して,医療崩壊になることは想定されない。
・第4波から第5波では,医療崩壊に近い状態があったが,医療圏を超えた搬送がもっと検討されても良かったのではないか。
・検疫がルーズなので,危惧している。国としては,水際対策を強化すべきである。
・感染症対策に対して,日医や東京都医師会の発言によって政府の対応も是正されながら,良い方向に向かった。
・広域の協力体制について,医療界の合意は得られやすいと思うが,地域住民の理解が得られるかどうかが大きい。日頃から日常診療において啓発すべきである。
・日常診療においては,コロナの影響は残っており,進行したがん患者の受診が多い。日常を取り戻すために,啓発に目を向ける必要がある。