2022年1月15日号
右京医師会と府医執行部との懇談会が10月16日(土),Webで開催され,右京医師会から12名,府医から10名が出席。「薬剤およびワクチン(コロナ以外)の安定供給の見通し」,「地域医療構想」,「医政活動」,「紹介状なし受診時定額負担」,「新型コロナウイルス感染症における診療報酬の特例措置」をテーマに活発な議論が行われた。
〈注:この記事の内容は10月16日現在のものであり,現在の状況とは異なる部分がございます〉
国内製薬企業の不祥事を契機に後発医薬品の製造・供給停止や出荷調整が相次いでいることについて,その影響が同一薬効の先発品にまで波及し,医療現場に混乱を来していることが指摘された。国が施策として後発医薬品への変更を促進した結果,供給不足が生じているとして,外来後発医薬品使用体制加算における後発品使用率や,禁煙治療薬のように一定期間内に使用回数が定められたものについて,例外的な取り扱いを求める意見が挙がった。
府医より,厚生労働省では医薬品の安定確保に向けて,切れ目のない医療提供のために特に配慮を要する「安定確保医薬品」を選定し,供給不安情報の事前報告等により早期対応に繋げる取組みが進められてきたことを説明した上で,外来後発医薬品使用体制加算については後発品使用率の計算から除外する通知が発出されていることを紹介した。
また,日医は,製薬企業から供給再開時期や代替薬等に関する情報提供が不十分であると現状認識しており,対応スキームに基づき製薬企業から情報提供があった場合は日医ホームページにて情報公開するとともに,医療機関に対しては,同種同効薬の処方にあたって長期処方の見直しや処方の必要性の再検討を呼びかけていることが報告された。
~ワクチンの安定供給の見通し~
今期のインフルエンザワクチンについて,9月21日に開催したワクチン確保検討会での報告では,昨年実績の7割程度しか供給されないものの,平成29・30年度と同水準の供給量が確保される見通しであり,供給ペースが遅れているため不足感は強いが,12月初めには全量供給される予定であると説明した。
また,製造が一時停止されていた日本脳炎ワクチンのジェービックVの供給が再開されたが,日本脳炎ワクチンの供給量は昨年度よりも減少する見込みであることから,エンセバック皮下注用とともに,引続き出荷量の調整が行われる予定であることを情報提供した。
地区からは,マスコミがインフルエンザワクチンの供給量が昨年度より少ないと報道することで,接種希望者が殺到することが懸念されるとして,12月には安定供給される見込みであることをもっとアナウンスすべきとの要望が出された。
(ア)京都市立病院機構とへき地医療の今後の見通しについて
京北町が右京区に編入され,京都市となって以降,京都市立病院機構・京都市立京北病院の医師確保に課題があることと併せて,委託された個人の医師によって支えられている現在のへき地診療所のあり方について問題提起がなされた。右京管内3か所のへき地診療所の状況が報告され,管理する医師からは,診療所のインフラ整備・維持の他,レセプト,処方箋等がすべて手書きとなるため,保険請求等の事務処理が大きな負担となっていることが指摘された一方で,地域の医療ニーズが高いため,へき地診療所の維持・継続は必要であるとし,今後の継続性を担保するためにも効率化を進めていきたいとの要望が挙がった。
府医は,今後も地区からの意見をとりまとめ,京都市に強く要請していく考えを示した。
(イ) 地域医療構想調整会議等について
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて,地域医療構想調整会議をはじめとする京都府の重要施策が停滞している現状について,府医としても今後,京都市域の4ブロック会議とともに,地域医療構想調整会議の開催を目指して調整していくべきとの考えを示した。
地区からは,調整会議が実りある会議となるよう,事前に地区での意見をまとめていきたいとの意向が示され,地区医師会に求められる具体的な役割を示すよう要望が出された。また,今回のコロナ禍において大きな役割を果たした地域の公的病院を地域住民のために残していきたいとの意見が挙がった。
府医より,厚労省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」で,人口100万人以上の構想区域においては,公立・公的医療機関等の具体的対応方針の再検証にあたり,厚労省が示す分析スキームをそのまま当てはめるのではなく,まずは各公立・公的医療機関等において地域の実情を踏まえつつ,担うべき役割や医療機能等を確認し,地域医療構想調整会議等で改めて議論するよう方針が示されていることを紹介した上で,各圏域の調整会議においては地区医の役割がますます重要になるとし,調整会議での議論をリードしていただくよう依頼した。今後,国から新たな方針等が示された際には,適宜「地区地域医療構想担当理事連絡協議会」を新たに開催し,医師会としての共通認識と方向性の共有を図っていくことが提案された。
また,2010年からの京都市における保健所機能の再編・統合に対し,公衆衛生施策や行政サービスの後退に繋がることがないよう再三にわたり府医から要望してきたが,今回の新型コロナウイルスの感染拡大状況下で保健福祉センターが十分に機能せず,弊害が見られたことから,今後も積極的な改善を求めていく考えを示した。
府医より,本来,医療政策を議論する場は京都府医師連盟であると前置きした上で,会員の政治ポリシーや支持政党とは関係なく,政策実行する力を持っている政権与党に訴えかけていくことが医政活動のあり方であるとの認識を示した。
国の医療費抑制政策に対し,医師会の意見を実現させるためには,政権与党に民意を反映したものであることを提示し,医師連盟が結束して政府に物申していくことが重要であるとして,政権与党を支援することへの理解と協力を求めた。
~定額負担の対象拡大と「かかりつけ医」について~
定額負担の対象拡大による外来機能分化の推進とかかりつけ医の普及について意見交換が行われ,地区からは,かかりつけ医を制度化することによる問題点が指摘された。
府医としては,外来機能分化という目的自体や,手段としての「紹介状なし受診時定額負担」に一定の理解を示すとともに,医師の働き方改革に資するものであるとの考えを示した一方で,令和3年5月に成立した改正医療法における「定額負担の増額」の内容については,医療保険の負担を一部軽減し,その分を定額負担の増額で賄う仕組みになっていることから,保険者免責制につながりかねないと指摘し,今後も注視していく必要があるとした。
また,外来機能分化とセットで扱われる「かかりつけ医」の制度化は,医療のフリーアクセスを阻害するものであり,「かかりつけ医機能」とは分けて考える必要があると述べ,今後,国民が望む医療のあり方や制度の持続可能性を踏まえ,社会的な議論が必要であるとの認識を示した。
新型コロナウイルス感染症に関する診療報酬の特例加算(医科外来等感染症対策実施加算,入院感染症対策実施加算)が,時限的措置として予定どおり9月末で終了したことにともない,代替措置として「令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止継続支援補助金」による支援策が打ち出されていること等を紹介した。