地域医療部通信 – 新型コロナウイルス感染症関連情報 第37報

新型コロナウイルス感染症対策~京都府医師会での対応,2021年12月~

2021年12月31日
京都府医師会新型コロナウイルス感染症対策チーム

1.はじめに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第5波の沈静化で11月には感染者数が低水準となっていたが,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新たなB.1.1.529系統の変異株(オミクロン株)の世界的な急速な拡大により,12月は日本でも新たな局面を迎えた。水際対策の強化をすり抜けて,日本各地で市中感染となり,12月下旬に新規感染者数が徐々に増えてきた。
 日本の新型コロナワクチンの接種率は徐々に上がり2回接種完了者は80%近くになった。先行接種医療従事者の3回目接種(追加接種)が開始され,下旬には40万人以上が接種した。2回目接種から8か月後に追加接種とする当初の方針を,政府は前倒しすることを表明したが二転三転したため各自治体も医師会も振り回された。また追加接種のワクチン供給については,明確な通達がなく,ファイザー社製ワクチンの供給不足と,モデルナ社製ワクチンを用いる必要があることは避けられない。
 COVID-19経口治療薬の「モルヌピラビル」が我が国でも特例承認され,今後のCOVID-19治療に新たな選択ができた。
 12月の1か月間の動向について述べる。
 なお,本文中に記載した数値や対応策等は,12月31日時点のものであり,今後の動向により変化することを予めお断りしておく。

2.COVID-19の流行状況とその対策

⑴ 全国の感染者数の推移と対策
 12月の全国の新規感染者数は,昨年の夏以降で最も低い水準が続き,また療養者数,重症者数や死亡者数も低い水準が続いた。新規感染者が確認されない日が継続している地域もあった。一方,低水準ながら感染伝播が未だに継続している地域があり,さらに一部の地域では事業所や社会福祉施設,小学校等でのクラスターや感染経路不明事案の発生による一時的な増加もみられた。都市部のみならず幅広い地域で夜間滞留人口が増加している。特に東京の夜間滞留人口は昨年10月末に記録した最高水準にまで増加してきた。都市部を中心に新規感染者の増加が見られ,今週先週比が増加していることが3週間以上継続していた。年末に向けて気温の低下とともに屋内での活動が増えること,忘年会,クリスマス,正月休み等の恒例行事により,普段会わない人との交流が増え,さらに社会活動の活発化が想定されるため,今後の感染者数の動向に注視が必要である。実効再生産数は11月末に1を下回っていたが,感染者数が激減した状態では振れ幅が大きくなるため,12月には1を上回り上下が大きい傾向にあった。
 11月24日に南アフリカからWHOに最初に報告されたB.1.1.529系統のオミクロン株は,多くの国で感染例が報告され,複数の国ではいわゆる市中感染も確認されている。11月26日にWHOはオミクロン株を「懸念される変異株(VOC)」に指定した。我が国では,12月15日までに海外からの入国する際の検疫などの水際でSARS-CoV-2陽性が判明した者のうち32名についてはゲノム解析でオミクロン株の感染が確認された。オミクロン株については,ウイルスの性状に関する実験的な評価や疫学的情報は限られており,感染性・伝播性の高さ,再感染のリスク,ワクチンや治療薬の効果への影響などが懸念される。重症度についても十分な知見が得られていない。水際の措置(フロー図参照)においてオミクロン株対策の重点化に加えて,国内のサーベイランス体制の強化のため,すべての陽性者に対する変異株PCRスクリーニングの実施や,全ゲノム解析の強化,特に渡航歴のある陽性者に対する全ゲノム解析が必要となる。デルタ株発生時に用いたL452R変異株PCR検査で陰性を確認することで,オミクロン株感染の可能性のある陽性者を早期に同定し,その後ゲノム解析を実施してオミクロン株患者を特定する。引続き,WHOや諸外国の動向や,臨床,疫学およびウイルス学的な情報の収集と分析を行いつつ,国立感染症研究所におけるオミクロン株の感染性,重症度,ワクチン効果に与える影響などの評価を踏まえて,適切に対応することが必要である。欧米諸国では,海外渡航歴がなく,感染経路が不明である市中感染が増えているが,我が国では大阪府で最初の市中感染の報告以来,京都,福岡,東京などの主要都市のある都道府県でのオミクロン株の市中感染による新規感染者が増えてきた。今後,国内での急速に感染拡大する可能性があり,水際対策から国内対策へ重点を移していくことを国民に周知することが求められる。
 オミクロン株は,世界各地でこれまでの変異株では見られなかったスピードで急速な感染拡大となっているが,我が国でも一定規模の伝播がおこりつつある。オミクロン株について現時点で得られる情報は限定的であるが,南アフリカや英国等においては流行株がデルタ株からオミクロン株に急速に置換されており,伝播性の高さが懸念される。英国では12月下旬時点で90%以上がオミクロン株に置換と報じられている。デルタ株に比して,世代時間,倍加時間や潜伏期間の短縮化,二次感染リスクや再感染リスクの増大が指摘され,ワクチンについては,重症化予防効果は一程度保たれているが,発症予防効果が著しく低下していることが報告されている。試験管内の評価として,一部の抗体治療薬の効果が低下する可能性などが指摘されている。現時点での国内で経過観察されているオミクロン株の感染者では,全例が軽症または無症状で経過している。海外の報告でも,デルタ株に比してオミクロン株では重症化しにくい可能性が示唆されているものの,今後の感染急拡大により感染者数が急速に増えることになれば,入院を要する者が急激に増え,医療提供体制が急速にひっ迫する可能性に留意すべきである。重症化リスクの高い者の間での感染拡大で,重症者や死亡者が増える恐れもある。
 感染伝播は継続しており,今後の感染拡大にも注意が必要であり,ワクチン接種者も含めて,マスクの正しい着用,手指衛生,ゼロ密や換気といった基本的な感染対策の徹底を継続することが必要である。23日に対策分科会会長談話で示されたとおり,外出時に混雑した場所や感染リスクの高い場所を避けることが必要で,特に帰省や旅行等はオミクロン株の動向や,日常では生じない接触が生じる機会になること等を踏まえて慎重に検討することが求められる。
 28日に厚労省アドバイザリーボードのメンバーの連名で,対策本部の副部長である厚労大臣と副大臣に対して「年末年始における新型コロナウイルス感染症対応方針についての提案」を提出した。急速に感染拡大した際の現場対応のために,現行の政府の対策を見直すよう要請した。これを受けて政府がどのように動くのか,注視する必要がある。
 「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(11月19日閣議決定)において,経済社会活動を行う際の検査を予約不要・無料とし,感染拡大傾向時には,都道府県の判断により,検査を無料とできるよう支援を行うこととされた。これにより,PCR等検査無料化事業として,次の2つの事業が実施されることとなった。検査は薬局・民間検査機関等において原則対面で実施する。国の交付金を財源に都道府県が費用を補助する。

 ●ワクチン・検査パッケージ等定着促進事業:健康上の理由等によりワクチン接種を受けられない者を対象に,社会経済活動を行う際のPCR・抗原定性等検査を2022年3月末まで予約不要,無料とする

 ●感染拡大傾向時の一般検査事業:感染拡大の傾向が見られる場合に,都道府県の判断により,ワクチン接種者を含め感染の不安がある無症状者に対し,検査を無料とする予定

⑵ 京都府の感染者数の推移と対策
 京都府内の新規感染者は,11月から引続いて低水準であった。12月1日の新規感染者数はゼロで,その後10日間でゼロの日が4日間,11日から20日の間は2日間であった。その後22日に新規感染者が11人となり下旬は二桁へと増えてきた(26日7名と27日7名以外は二桁;29日39名が12月の最多)。最終的には11月の新規感染者数を超えた。
 病床使用は,12月1日に13床(確保病床使用率1.5%)で上旬は10~13床,中旬にかけて徐々に増え17~28床であった。オミクロン株の水際対策として,新規感染者は病状にかかわらず原則入院という方針により,下旬は連日病床利用が増え,25日57床,29日103床,31日135床(確保病床使用率15.8%)と1か月で10倍になった。酸素投与が必要な者は29日時点で5名であった。重症病床使用は3日~12日に各1床のみで,それ以後はゼロであった。
 23日に大阪府が我が国最初のオミクロン株の市中感染を発表したが,同日京都府内でも海外渡航歴のないオミクロン株が確認された。その後24日3例,25日4例,27日4例,28日4例,30日2例,31日10例が確認されたが,いずれも海外渡航歴はなく,9例は濃厚接触者であった。中等症の1例以外は,無症状あるいは軽症であった。これらの濃厚接触者数も増えて,31日は30名以上であった。
 SARS-CoV-2陽性であってもオミクロン株が否定されれば,宿泊療養あるいは自宅療養への下り搬送となるが,オミクロン株の結果が出るまでに数日かかるため,軽症あるいは無症状者の入院生活が長くなる。一方,オミクロン株の濃厚接触者はホテル隔離となるが,多くは同意が得られるものの,中には同意を得られない場合もある。自宅での隔離,あるいは入院から自宅療養となった者が,隔離期間/療養期間中に他との接触をするケースも少なからずみられるが,COVID-19に対する警戒心の薄れの表れと未だにCOVID-19への理解の乏しさが根底にある。
 オミクロン株関連のクラスターが増える,あるいは急速な感染拡大になると,本来は入院の対象とならないSARS-CoV-2陽性者の入院が急増して,意義の少ない病床利用率上昇となることになる。28日にアドバイザリーボードからの提案(前述)のとおり,重症度に応じて入院の適否を決めるという従来の方針に早期に戻す必要がある

(註)1月4日の京都府の対策本部会議で,新規感染者を原則入院させている措置を見直し,軽症・無症状者は宿泊療養施設に入所する方針に変更した。また同日,岸田首相が年頭記者会見で,感染が急拡大する地域では,陽性者全員の入院/すべての濃厚接触者を宿泊施設待機とする措置の見直しを表明した。

 COVID-19感染拡大時の小児医療に係る問題点を,京都府およびCOVID-19対応病院を含む府内医療機関小児科担当者とで協議を重ねてきた。その解決策の1つとして,SARS-CoV-2陽性小児への陰性保護者の付き添いに際して発生する費用(食費,衣類代,リネン代)の実費補助(10/10補助)が,「患者等入院医療機関医療体制整備事業」で可能となったと,17日に京都府から通知された。すべてが解決されている訳ではないが,一歩前進した。

3.府医の12月の活動

⑴ 会議等
 府医の会議(定例理事会,各部会,各委員会等)は第5波が沈静化を見せているが,12月も引続きWebあるいはハイブリッドで開催した。地区医との懇談会(宇治久世,東山,亀岡市・船井,西陣,下京東部,綾部,中京東部,西京)は8地区すべてでコロナ関連のテーマが出され,また薬剤供給不足の問題,オンライン資格確認などについてWeb会議で意見交換を行った。
 日医や近医連など対外的な会議と,9日京都市新型コロナワクチン接種推進協議会,10日京都府新型コロナウイルス対策意見交換会に松井府医会長が出席した。
 コロナワクチンの追加接種に関する協議は,16日と23日に京都市と行った。また,今後の診療・検査体制について京都市と24日に協議した。

⑵ 宿泊療養健康管理
 ヴィスキオ京都(V)とアパホテル京都駅東(AE)の2か所の宿泊療養施設への新規入所者は減り,Vでは12月1日以降入所者はゼロで,AEでは5日の退所者をもって6日以降ゼロとなった。そのため,5日からは健康観察のための出務を一旦休止した。11日にAEの入所者1名があり,12日から健康観察の出務が再開された。出務医はVのみでVEには出務せず,Vからリモート(11月27日から遠隔診療)でVEの入所者の健康観察を行った。18日にVに2名,21日にAEに4名が入所した。その後も入所者数は少なく,27日にはVE入所者はゼロとなり31日時点でVの2名の入所者のみとなった。
 オミクロン株感染者の濃厚接触者は,原則宿泊療養所(ホテル)に隔離目的で入所したが,陽性者ではないので,宿泊療養者の扱いではない。オミクロン株の濃厚接触者の対応の基準が変わり,ホテル隔離は少なくなってきた。

⑶ 京都府・医師会 京都検査センター(府医PCR検査相談センター)の診療・検査医療機関紹介
 診療・検査医療機関を京都府が10月29日から公表した(事前の意向調査で公表可とした医療機関)。かかりつけ医を持たない,あるいは夜間休日に発熱者等が「きょうと新型コロナ医療相談センター」(新コロセンター)に相談した場合,府医PCR検査相談センターを経由せずに,診療・検査医療機関へ新コロセンターから直接紹介するルートが主となった。新コロセンターからの府医PCR検査相談センターへの受診調整依頼は,12月1日以降ゼロであった。また,診療・検査医療機関以外の医療機関から府医PCR検査相談センターへの紹介依頼は継続していたが,受付は多くても1日に2件程度でゼロの日が多かった。22日までの受付総数は11件で,診療・検査医療機関への受診紹介は100%であった。受付数が少なくなっており,22日をもって診療・検査医療機関への紹介業務を一旦休止することとなった。診療・検査医療機関以外の医療機関も,公表されている診療・検査医療機関を知ることができるので,医療機関同士での受診調整を行うことになる。

4.COVID-19ワクチン

⑴ 国内外の接種状況
 12月28日時点で,日本における2回接種完了者は総人口の77.9%で,うち65歳以上高齢者の2回接種完了は92.7%(1回接種93.2%)と9割を超えた。12月から始まった先行接種医療従事者等の追加接種は,53万人以上で全人口の0.4%にあたる。
 京都府の2回接種完了の状況は,府内全人口の76.2%,12~64歳の72.3%,65歳以上の90.9%となった。都道府県別では秋田の83%が最多で,京都より接種率が低いのは7県で,京都は40番目であった。

⑵ 「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」と「ワクチン・検査パッケージ制度」
 12月20日にデジタル庁は,日本政府が公式に提供する「新型コロナワクチン接種証明書」を取得できるアプリ(正式名称「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」を公開した。マイナンバーカードあるいはパスポートを読み取れる端末で,iOS版あるいはAndroid版のスマートフォンアプリをダウンロードし,国内用と海外用の別で発行できる。操作は簡単で,一度発行すれば,アプリを起動するだけでいつでもどこでも接種証明書を表示できる。2回接種済みの証明書が発行されていても,追加接種の接種券付き予診票をVRSで入力した直後にマイナンバーカードを読み込む操作を再度行うと3回目接種の接種済み証明書が新たに表示される。

 「ワクチン・検査パッケージ制度」では,接種済証か陰性証明を提示することで,仮に緊急事態宣言の発令下でも緩やかな規制で飲食店利用やイベント参加等が可能となる。接種証明書アプリ以外,接種済証のコピーや画像でも可である。京都府内でこの制度に参加する飲食店などは約1万店で,府内での宿泊・旅行代金を割り引く「きょうと魅力再発見旅プロジェクト」もこの仕組みを活用している。

⑶ mRNAワクチンの効果
① 米国25州の医療従事者において,検査陰性者を対照とする症例対照研究(test-negative case-control)でファイザー社とモデルナ社の有効性評価が報告された。症例は,SARS-CoV-2のPCR検査または抗原検査が陽性であること,COVID-19様症状を1つ以上有することと定義し,対照はSARS-CoV-2のPCR検査陰性であることと定義した。条件付きロジスティック回帰分析を用いて,部分接種(1回目接種後14日目から2回目接種6日目までの間に評価)と,完全接種(2回目接種後7日目以降に評価)のワクチン有効性を推定した。症例1,482例,対照3,449例を対象とした。部分接種での有効性は,ファイザー社で77.6%(95%信頼区間CI 70.9~82,7%),モデルナ社88.9%(95%CI 78.7~94.2%)で,完全接種での有効性はそれぞれ88.8%(95%CI 84.6~91.8%),96.3%(95%CI 91.3~98.4%)であった。両社とも,リアルワールドでの医療従事者の症状をともなうCOVID-19の予防において有効性が高かった。モデルナ社はファイザー社と比較してより高い有効性を示した。

② 米国でのアルファ株流行期間中にファイザー社製ワクチンまたはモデルナ社製ワクチンを接種した者の電子医療記録を用いて,両ワクチンの有効性を直接比較した報告があった。2021年1月4日~5月14日に,mRNAワクチン接種した18歳以上の米国の退役軍人で,ワクチン接種日,年齢,性,人種,居住地域をマッチングさせた各ワクチン群21万9,842人,計43万9,684人を抽出し解析した。両群とも98%が2回目接種を完了しており,重症COVID-19の危険因子の保有率は両群でほぼ同等であった。評価項目は,SARS-CoV-2感染,症候性COVID-19発症,COVID-19による入院,COVID-19によるICU入室,COVID-19による死亡の5項目とした。またデルタ株に対する有効性も症例数が少ないものの,比較を行った。結果,アルファ株流行期において,ファイザー群はモデルナ群に比べて,1回目接種後24週時点のSARS-CoV-2感染リスクが27%,COVID-19による入院リスクが70%,それぞれ高かった。また症例数が少ないため推定精度が低いものの,デルタ株の流行期においてもファイザー群はモデルナ群に比べてSARS-CoV-2感染リスクが高かった。よって直接比較では,モデルナ社に軍配が上がる結果であった。1回分のワクチンに含まれるmRNA量の違い(ファイザー30µg:モデルナ100µg),1回目と2回目の接種間隔の違い(3週:4週),脂質ナノ粒子の組成などの違いによることが考えられる。

③ 12~17歳の思春期児におけるモデルナ社製ワクチンの中間評価が発表された。健康な思春期児を,モデルナ社製ワクチンを28日間隔で2回接種する群(各回100µg)と,プラセボを注射する群に2:1の割合で無作為に割り付けた(3,732例をモデルナ群2,489例とプラセボ群1,243例)臨床試験で,主要評価項目は,思春期児におけるモデルナ社製ワクチンの安全性評価,第Ⅲ相試験(COVE試験)の若年成人(18~25歳)と比較した思春期児における免疫応答の非劣性とした。副次的評価項目は,COVID-19または無症状のSARS-CoV-2感染の予防におけるモデルナ社製ワクチンの有効性とした。モデルナ群では,1回目と2回目の注射後の有害反応のうち,特に頻度が高かったのは,注射部位疼痛(1回目93.1%,2回目92.4%),頭痛(44.6%,70.2%),倦怠感(47.9%,67.8%)であった。重篤な有害事象は認めなかった。若年成人との比較で,思春期児の偽ウイルス中和抗体価の幾何平均抗体価比は1.08(95%CI -1.8~2.4)であり比劣性基準を満たした。2回目の注射後14日の時点で,COVID-19症例はモデルナ群では報告されず,プラセボ群で4例発生した。この結果から,モデルナ社製ワクチンは,思春期児において許容可能な安全性プロファイルを示し,免疫応答は若年成人と同程度であり,COVID-19の予防に有効であった。

⑷ 3回目接種(追加接種)
① 我が国における追加接種
 12月16日の第27回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会での諮問の答申を受けて,同日に厚労省は,モデルナ社製ワクチンを追加接種として使用することを特例承認した。翌17日に,モデルナ社製ワクチンの追加接種に係る改正省令を交付,改正大臣指示の発出,自治体向け手引き(6.0版)・実施要領改訂版を発出し,当初の予定を早めて17日からモデルナ社製ワクチンの追加接種が可能となった。また,「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」から「スパイクバックス筋注」と名称変更した。追加接種は,1回目・2回目の0.5mlの半量の0.25mlとし,1バイアル15人分(ローデッドシリンジを用いるとそれ以上の人数使用可;シールは20名分添付)として取り扱うことになった。また,従来はバイアルを穿刺してから6時間以内に使用することになっていたが,穿刺して12時間以内と改められている。希釈の必要がないことと併せて,利便性が高い。
 12月23日の第28回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で,11月15日および12月16日での議論を引続いて,追加接種に使用するワクチンについては,諸外国の取組や有効性・安全性に係る科学的知見,国内における薬事承認を踏まえて,1回目・2回目に用いたワクチンの種類にかかわらずファイザー社製ワクチンに加え,モデルナ社製ワクチンを用いることが適当とした。モデルナ社製ワクチンを交互接種として用いることも可能である。他方,mRNAワクチン以外のワクチンについては,科学的知見を踏まえ引続き検討する,とした。24日には第10回自治体説明会が行われた。
 ファイザー社製ワクチンが追加接種使用の薬事承認を得た際に「2回目の接種から少なくとも6カ月経過した後に3回目の接種を行うことができる」と添付文書が改訂されたが,モデルナ社も追加接種の時期は同じ内容となった。イスラエルや英国などでの急速な感染再拡大と,経時的な中和抗体の低下やブレイクスルー感染が問題視されて追加接種を先行して開始したこと,さらには当初8か月前後で実施していた追加接種時期を早めて実施したこともあり,我が国でも「原則として2回目接種から8か月後」を前倒しする声が上がった。デルタ株等へのワクチンの効果のうち,重症化予防については2回目接種完了半年後も高い効果が維持されるものの,高齢者に関しては比較的低下が早いとの報告があり,重症化リスクの高い高齢者から順次前倒しし,重症化する患者を抑制すること,とした。医療従事者等および高齢者施設の入所者等に対しては2か月の前倒しを可能とし,その他の高齢者に対しては1か月の前倒しを可能とすることとなった。24日の自治体説明会を受けて,「2回目接種後8か月」で接種準備をしていた自治体は混乱した。接種券付き予診票の印刷,送付などの一連の事務的作業が簡単に早められるものではない。
 前倒しを決めたものの,追加接種用ワクチンの配分も前倒しの必要がある。しかし,ファイザー社製ワクチンについては,2回目接種完了者へ潤沢に供給されないことが判明している。前政権のワクチン担当相の読みの甘さのツケが今に回ってきたことになり,手持ちの在庫を後々使う予定であったワクチンを「前借り」する形でかき集めるという窮余の策となっている。国は各自治体に手持ちの在庫があると主張しているが,仮にあったとしても十分量ではない。自らの対応の甘さを棚に上げての国の言い分としか捉えかねない。今後のワクチン配分も綱渡り状態である。国が予定しているファイザー社製ワクチンの配分量には,5~11歳用の小児用ワクチン(12歳以上への使用ワクチンとは異なる;薬事承認が得られれば後日詳細について触れる)が含まれている(小児のワクチン接種開始は3月以降の予定)。よって18歳以上の追加接種に使用するファイザー社製ワクチンは十分量とは言えない。京都市のワクチン接種状況(2021年11月時点,表参照)では,ファイザー社が80%,モデルナ社が20%使用したことが判明しているが,これと同じ比率で追加接種の配分が不可能となる。ファイザー55:モデルナ45程度と予想される。12月の先行接種医療従事者と一部優先接種医療従事者および1月からの医療従事者および高齢者施設等の対象者,それ以後の65歳以上高齢者はファイザー社製ワクチンでの接種が可能であるが,いずれ個別接種会場ではモデルナ社製ワクチンとの混在あるいは置き換えが必要となる。モデルナ社製ワクチンに関しては,マスコミ等がマイナス・イメージを与えるような報道を盛んに行った(発熱や倦怠感の頻度,モデルナアーム,若年男子の心筋炎等など)ために,一般住民のみならず医療従事者でさえも,悪いイメージを持たされた。前述したmRNAの効果に関する報告で,モデルナ社の方がファイザー社よりも予防効果や重症化予防効果が高いと評価されていること,追加接種は半量(0.25ml)であるため副反応等が1回目・2回目より高くなる可能性が低いと推察される(今後の検討課題ではある)ことから,一般住民への啓発が必要である。この点については,厚労省の「追加(3回目)接種に使用するワクチンについてのお知らせ」にQ&Aでは,次のように記載された:「Q.ファイザー社と武田/モデルナ社のワクチンの効果に差はありますか。 A.1-2回目の接種では,ファイザー社と武田/モデルナ社のいずれも,2回目接種から約半年後も高い重症化予防効果(入院予防を含む)が維持されています。ファイザー社と武田/モデルナ社のワクチンの1-2回目の効果を約半年間比較した観察研究では,武田/モデルナ社のワクチンの方が,感染予防,発症予防,重症化予防の効果が有意に高かったと報告されています」接種医は,一般住民に対してモデルナ社ワクチンも安心して接種できることを,この厚労省のチラシを最大限利用して説明することになろう。
 24日に西脇京都府知事は記者会見で,3回目接種の円滑な実施のために,以下を表明した。

 ● 国の前倒し方針を踏まえて,市町村の連携のもと,3回目接種を速やかに実施

  ⃝ 医療従事者・高齢者施設入所者等を2か月前倒し

  ⃝ 上記以外の高齢者は,令和4年2月以降に1か月前倒し
    ・府内の高齢者施設での接種は12月下旬から前倒しで開始
    ・市町村の高齢者向け接種は1月下旬から順次開始

 ● 市町村の接種体制

  ⃝ 交互接種を前提としつつ,市町村の規模を踏まえたワクチン配分
    ・接種対象者や医療機関・職員の少ない人口5万人未満の小規模市町村は,可能な限りファイザー社ワクチンで接種体制を確保できるようワクチンを配分

  ⃝ 京都府接種会場を設置し,市町村の接種を講危機的に補完
    ・2月から,京都タワー,府北部・南部に京都府接種会場を設置

  ⃝ 医療従事者派遣等,市町村の接種体制整備を支援

 ● 交互接種の効果と安全性

  ⃝ いずれのワクチンを使用しても抗体価が十分上昇

  ⃝ モデルナワクチンの3回目は,1・2回目の半量
    ・2回目接種後と比較し,発熱や疲労などの症状が少ないことが報告

 厚労省研究班が,2回目接種完了から9か月の間隔で3回目接種をした医療従事者ら約1,050人を調査対象として副反応について集計した。追加接種後,1週間以内に37.5度以上発熱したのは40%38度以上は20%であった。主な副反応は,注射部位疼痛92%,倦怠感71%,頭痛56%で,2回目の接種後と同程度だったとした。リンパ節などの腋窩の疼痛が5%にみられ,2回目(1%)よりやや頻度が高かった。1割は接種翌日などに仕事を休んだ。
 京都府内において,京都府内市町村間の住所外接種の届出を不要とすることについて,やむを得ない事情により,限定的に手続きが不要とされている。京都府内市町村間の住所地外接種の届出を不要とすることについて,賛同を得た21団体(京都市,福知山市,綾部市,宇治市,宮津市,亀岡市,城陽市,向日市,長岡京市,八幡市,南丹市,木津川市,大山崎町,久御山町,宇治田原町,笠置町,和束町,南山城村,京丹波町,伊根町,与謝野町)においては,府民の利便性向上および市町村の事務の簡素化の観点から,令和4年1月1日から参加団体間の住所地外接種の届出は不要とする。

② 追加接種の効果
 (ⅰ) イスラエル保健省は,2021年7月30日にファイザー社製ワクチンの追加接種を承認した。8月6日の研究開始時に50歳以上で,5か月以上前にファイザー社製ワクチンの2回目接種を完了した84万3,208人を対象とし,9月29日までの54日間に3回目接種を行い,その効果を検証した。追加接種群(90%,75万8,118人)と受けなかった非追加接種群(8万5,090人)で比較した。死亡者数は追加接種群65人(10万人当り0.16人/日),非追加接種群137人(同2.98人/日)であった。患者背景,社会的因子,基礎疾患を調整後の解析で,追加接種群は非追加接種群に比べてCOVID-19による死亡が90%低かった(調整後ハザードHR比0.10,95%CI 0.07~0.14,p<0.001)。年齢および性で層別化したサブグループ解析においても,追加接種群は非追加接種群に比べて死亡率が有意に低かった。SARS-CoV-2感染者数も追加接種群が有意に少なかった。ただし,追跡期間が54日間と短いため,重篤な有害事象については検討されなかった。

 (ⅱ) イスラエル保健省のデータベースから,7月30日~10月10日の期間に,5か月以上前にファイザー社製ワクチンの2回目接種を受けた,16歳以上の469万6,865人を抽出し,12日以上前に追加接種を受けた群における,検査で確認されたCOVID-19感染者,重症COVID-19,死亡の発生率を,非追加接種群と比較した。追加接種群で確認された感染発生率は,非追加接種群の10分の1であり,重症COVID-19の発生率は追加接種群の方が非追加接種群より大幅に低かった

 (ⅲ) モデルナ社は,SARS-CoV-2変異株に対応するために,継続的に追加接種用のワクチン候補を検討してきた。現在用いられているmRNA-1273(50µg/100µg)に加えて,変異株に対する多価ワクチン候補のmRNA-1273.211(50µg/100µg)とmRNA-1273.213(100µg)の追加接種者20人から得られた血清データで,それぞれのワクチンのオミクロン株に対する中和抗体を評価した。検討の結果,追加接種後29日で,mRNA-1273の50µg群ではオミクロン株に対する幾何平均抗体価(GMT)が接種前の約37倍にあたる850に,同100µg群では約83倍にあたる2,228に上昇していた。また多価ワクチン候補でも,追加接種により50µgと100µgの両群でオミクロン株に特異的な中和抗体が高レベルに上昇した。副反応は,mRNA-1273の100µgで安全性と認容性を認めた。

③ その他
 追加接種を先行したイスラエルでは,大規模病院「シバ医療センター」の職員150人を対象に4回目のワクチン接種を試験的に開始すると27日に発表した。4回目接種の有効性について検証し,今後の政策立案に役立てる目的と思われる。ただし,イスラエルは初回接種を諸外国の中では最も早い時期に開始したものの,2回接種完了者は64%に留まっており頭打ち状態が続いている。4回目接種を行うよりむしろ1回目・2回目接種完了者を増やさなければ,追加接種も4回目接種も意義が薄れる。これは,他の国での追加接種を早める等の対策にも通じることである。さらには,十分な接種が行えない国(低所得国など)に対してワクチン接種ができるようサポートの強化が必要である。一方,ナイジェリア政府が寄付されたワクチン100万回接種分を廃棄することを公表したが,その理由はナイジェリアに到着時に有効期限が迫るものであったことを明らかにしている。かかる配慮のない単なる寄付では意味がない。

5.COVID-19治療薬

⑴ 経口治療薬
① モルヌピラビル
 「モルヌピラビル」はRNAポリメラーゼ阻害薬で,SARS-CoV-2におけるRNA依存性RNAポリメラーゼに作用することにより,ウイルスRNAの配列に変異を導入しウイルスの増殖を阻害する。
 12月24日厚労省薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会で,承認申請されていたCOVID-19経口治療薬「モルヌピラビル」(販売名ラゲブリオカプセル200mg,MSD)の承認が了承された。これを受けて同日に厚労相は特例承認し,国内初のCOVID-19治療の経口抗ウイルス薬となった。18歳以上で,重症化リスク因子を有する軽症~中等症Ⅰの患者が対象となり,症状発現後速やか(5日以内)に投与を開始することとし,1回800mgを1日2回,5日間の経口投与とする。ただし妊婦,または妊娠している可能性のある女性には禁忌となった。日本感染症学会が24日に公開した「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第11報」で,臨床試験における選択基準に基づき,①61歳以上,②活動性のがん,③慢性腎臓病(CKD),④慢性閉塞性肺疾患(COPD),⑤肥満(BMI≧30),⑥重篤な心疾患(心不全,冠動脈疾患または心筋症),⑦糖尿病,⑧ダウン症,⑨脳神経疾患(多発性硬化症,ハンチントン病,重症筋無力症など),⑩コントロール不良のHIV感染およびAIDS,⑪肝硬変などの重度の肝臓疾患,⑫臓器移植/骨髄移植/幹細胞移植後,をあげており,「投与する意義が大きい」とした。
 国際共同臨床第Ⅲ相試験の中間解析では,入院または死亡のリスク減少率は約48%であったがその後の最終解析では下方修正し,すべての被験者を対象にしたリスク減少率は約30%であった。先の部会では,リスク減少率が30%であっても有効性が否定されるものではない,という結論になった。オミクロン株にも効果が期待されるとしている。MSDは,in vitroでの検討で,アルファ,ベータ,ガンマ,デルタ,ラムダ,ミュー,オミクロン株の変異株に対して,従来株と同程度の抗ウイルス活性が認められたと発表した。安全性に関しては,副作用として,下痢,悪心などの胃腸障害,浮動性めまい,頭痛などの神経系障害が1%以上5%未満と報告された。また,コロナワクチン既接種者は臨床試験で除外されたため,ブレイクスルー感染での重症化予防などの有効性を裏付けるデータはない。また,症状発現6日目以降の投与での有効性を示すデータは得られておらず,エビデンスがない。
 日本政府は160万回分の供給契約を結んでおり,翌25日から20万回分の配送を始め,27日から臨床現場で活用できるようにすると発表した。安定供給が難しいため,一般流通は行わず,当面の間は厚労省が保有し,投与対象となる患者が発生または発生が見込まれる医療機関や対応薬局に配分し,無償譲渡となる。モルヌピラビルを必要とする医療機関や対応薬局は,厚労省が供給を委託したMSDが開設する「ラゲブリオ登録センター」への登録が必要で,同センターを通じて配分依頼するよう求めた。
モルヌピラビルは1ボトルに40カプセル(1日2回4カプセル(1回800mg)ずつ内服,5日分)が封入されており,室温保存で有効期間は24か月である。

② パクスロビドpaxlovid
 パクスロビドは3CLプロテアーゼ阻害薬であり,モルヌピラビルとは作用機序が異なる。12月14日にファイザー社は,パクスロビドによって重症化リスクを有するCOVID-19患者の入院や死亡のリスクが89%減ったとする臨床試験の最終報告を発表した。また初期段階の研究データから,オミクロン株にも有効である可能性が高いとの見方を示した。この最終報告を受けて,米食品医薬品局(FDA)はパクスロビドに緊急使用許可を出した。軽症~中等症のCOVID-19患者で既往歴などがある重症化リスクの高い12歳以上が対象で,発症してから5日以内の服用としている。米国政府は1,000万回分の供給契約をファイザー社と結び,日本も200万回分の供給を受けることで基本合意をしている。前述のモルヌピラピルが我が国で先に承認されたが,今後早期のパクスロビドの承認が待たれる。

③ その他
 中外製薬は,米アテアとスイスロシュ社のCOVID-19治療薬「AT-527」は臨床試験で有効性が確認できず(第34報に記載),開発を終了すると発表した。中外製薬はロシュ社から国内の独占開発権と販売権を取得していたが,両社の提携解消となった。
 厚労省は,COVID-19治療薬候補の「アビガン」について,有効性や安全性の検証を目的とした観察研究での患者への投与を28日までに終了すると発表した。投与中または投与の準備中の患者を除き,新たにアビガンを使用しないよう,研究に参加した医療機関に通知した。残った薬は回収することになった。2020年10月に富士フイルム富山化学が,COVID-19治療薬として承認を申請していたが,提出されたデータからは有効性の判断が困難として厚労省は承認を見送っていた。アビガンはCOVID-19治療薬としての承認の道を断たれたことになった。

⑵ 中和抗体薬の効果
 カシリビマブ/イムデビマブの臨床試験第Ⅲ相において,COVID-19に罹患し,重症COVID-19の危険因子を有する外来患者に,様々な用量のREGEN-COV(日本のロナプリーブと同じ),またはプラセボ投与群に割り付け,患者を29日まで追跡し,入院または死亡および症状消失までの期間をエンドポイントとして分析した。COVID-19関連入院または全死因死亡は,2,400mg群の1,355例中62例(1.3%)に,プラセボ群1,341例中62例(4.6%)に発生した(相対リスク減少71.3%,p<0.001)。1,200mg群736例で7例(1.0%),プラセボ群748例中24例(3.2%)に発生した(相対リスク減少70.4%,p=0.002)。症状消失までの期間の中央値は,2,400mg群,1,200mg群ともにプラセボ群より4日短かった(10日対14日,いずれの比較もp<0.001)。重篤な有害事象の発現率は,プラセボ群(4.0%)が1,200mg群(1.1%),2,400mg群(1.3%)よりも高かった。カシリビマブ/イムデビマブにより,COVID-19患者のウイルス量と受診回数が減少した。またSARS-CoV-2の「懸念される変異株(VOC)」に対し,in vitro で活性を示している。
 一方,12月24日に厚労省は,カシリビマブ/イムデビマブ(ロナプリーブ注射セット)について,オミクロン株陽性者に対して投与を推奨しない方針を決めた。非臨床試験のデータからオミクロン株に対する中和活性が大きく低下する結果が出たことを受けた対応である。

⑶ その他
 レムデシビルは2020年5月に日本でCOVID-19治療薬として特例承認され,中等度~重度の早期投与でCOVID-19入院患者の転帰を改善するとされているが,有症状で非入院の進行リスクの高いCOVID-19患者に対して入院に至る重症化を防ぐことができるかは不明であった。非入院COVID-19患者におけるレムデシビルを有効性と安全性を検討するために,2020年9月18日~21年4月8日に,米国,スペイン,デンマーク,英国の64施設で二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験を実施した結果が発表された。対照は12歳以上で過去7日以内に症状が発現した,疾患進行の危険因子を少なくとも1つ有する非入院のCOVID-19患者562例で,レムデシビルの静脈内投与(1日目200mg,2日目・3日目100mg)するレムデシビル群279例とプラセボ群283例にランダムに割り付けた。有効性の評価項目を,28日目までのCOVID-19に関連する入院と全死亡の場合とし,安全性の評価項目は有害事象とした。評価項目である死亡は両群とも発生せず,COVID-19に関連する入院の発生は,レムデシビル群では279例中2例(0.7%),プラセボ群では283例中15例(5.3%)で,レムデシビル群でリスクが87%低かった。COVID-19関連の医療機関受診は,レムデシビル群で246例4例(1.6%),プラセボ群では252例中21例(8.3%)と,レムデシビル群でリスクが81%低かった。有害事象は,レムデシビル群118例(42.4%),プラセボ群131例(46.3%)に発生し,同程度であったが,両群で5%以上に発言した非重篤な有害事象は主に嘔気,頭痛,咳であった。以上から,早期のレムデシビル3日間投与により,COVID-19の進行リスクが高い非入院患者では,28日目までのCOVID-19関連の入院または全死亡のリスクが87%低下し,28日目までのCOVID-19関連の受診または全死亡リスクが81%低下し,安全性プロファイルは良好であった。このデータは,COVID-19治療薬として新たな選択肢を提示するものと考えられる。

<資料>
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#「「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(暫定版)」の周知について」(12月1日,事務連絡,厚労省対策推進本部)
#「B.1.1.529系統(オミクロン株)の感染が確認された患者等に係る入退院及び航空機内における濃厚接触者並びに公表等の取扱いについて」(12月3日一部改正,事務連絡,厚労省対策推進本部)
#「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状を呈する者への自治体における取組について(周知)」(12月6日,事務連絡,厚労省対策推進本部)
#「治療中のがん患者におけるワクチン接種に係るコンセンサスについて(照会)」(12月3日,京都府健康福祉部)
#「新型コロナウイルス感染症後を見据えた新たな医療へ向けた提言」(12月8日,国民医療を守る議員の会)
#「予防接種法施行規則の一部を改正する省令の公布について」(12月6日,厚労省健康局)
#「「定期の予防接種等による副反応疑いの報告等の取扱いについて」の一部改正について」(12月6日,厚労省健康局/医薬・生活衛生局)
#「予防接種法施行規則の一部を改正する省令の公布について」(12月8日,厚労省健康局)
#「B.1.1.529系統(オミクロン株)の感染が確認された患者等に係る入退院及び航空機内における濃厚接触者並びに公表等の取扱いについて」(12月13日一部改正,事務連絡,厚労省対策推進本部)
#「令和3年度新型コロナウイルス感染症緊急包括事業(医療分)に関するQ&A(第11版)について」(12月13日,事務連絡,厚労省医政局/健康局)
#「「医療用物資の備蓄体制の強化について」に係る医療用物資の対応について」(12月13日,事務連絡,厚労省医政局)
#「新型コロナウイルス感染症対策 医療機関向けガイドラインの改定について」(12月14日,日本医師会)
#「新型コロナワクチン追加接種(3回目接種)の体制確保について(その3)」(12月17日,事務連絡,厚労省健康局)
#「新型コロナウイルス感染症陽性小児への陰性保護者の付き添いに係る費用の補助について」(12月17日,京都府健康福祉部)
#「年末年始(12/28~1/4)における副反応等報告,不具合等報告及び予防接種後副反応疑い報告に係る受付並びに取扱い等について」(12月16日,事務連絡,独立行政法人医薬品医療機器総合機構)
#「予防接種法施行規則の一部を改正する省令の公布について」(12月17日,厚労省健康局)
#「「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施について(指示)」の一部改正について」(12月17日,厚労大臣)
#「京都府新型コロナウイルス感染症に係る無症状者の検査環境整備事業への御強力について(依頼)」(12月17日,京都府新型コロナウイルス感染症対策本部)
#「B.1.1.529系統(オミクロン株)の感染が確認された患者等に係る入退院及び航空機内における濃厚接触者並びに公表等の取扱いについて」(12月17日一部改正,事務連絡,厚労省対策推進本部)
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#「「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き」の改訂について」(12月17日。事務連絡,厚労省健康局)
#「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項に基づく届出の徹底について」(12月17日,事務連絡,厚労省対策推進本部)
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#「「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する医療機関向け手引き」の改訂について(6.0版)」(12月20日,事務連絡,厚労省健康局)
#「年末年始受入医療機関協力金交付事業の実施について」(12月21日,京都府健康福祉部)
#「B.1.1.529系統(オミクロン株)の感染が確認された患者等に係る入退院及び航空機内における濃厚接触者並びに公表等の取扱いについて」(12月21日一部改正,事務連絡,厚労省対策推進本部)
#「オミクロン株の感染流行に備えた検査・保健・医療提供体制の点検・強化の考え方について」(12月22日,事務連絡,厚労省対策推進本部)
#「新型コロナワクチン追加接種(3回目接種)等に使用するファイザー社ワクチン及び武田/モデルナ社ワクチンの配分等について(その2)」(12月22日,事務連絡,厚労省健康局)
#「年末年始の感染拡大を防ぐために」(12月23日,対策分科会会長談話)
#「COVID-19に対する薬物療法の考え方 第11報」(12月24日,日本感染症学会)
#「新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬の医療機関及び薬局への配分について」(12月24日,事務連絡,厚労省対策推進本部/医薬・生活衛生局)
#「第10回新型コロナワクチン接種体制確保に関する自治体説明会,資料1 新型コロナウイルスワクチンの接種体制確保について⑩」(12月24日,厚労省)
#「京都府新型コロナウイルス感染症に係る無症状者の検査環境整備事業の実施事業者の募集について」(12月27日,京都府対策本部)
#「京都府内市町村間の住所違い接種の取扱いについて」(12月27日,事務連絡,京都府健康福祉部ワクチン接種対策室)
#「新型コロナウイルス感染症における中和抗体薬の医療機関への配分について」(12月28日最終改正,事務連絡,厚労省対策推進本部)
#「新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬の医療機関及び薬局への配分について(別紙及び質疑応答集の追加・修正)」(12月28日最終改正,事務連絡,厚労省対策推進本部/医薬・生活衛生局)
#「年末年始における新型コロナウイルス感染症対応方針についての提案」(12月28日,厚労省アドバイザリーボード)

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