2022年3月15日号
介護職員の処遇改善については,令和3年11月19日に閣議決定された「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」に基づき,本年2月から9月までは「介護職員処遇改善支援補助金」により実施されているところです。また,令和4年10月以降の措置については,社会保障審議会介護給付費分科会において議論されています。
当該審議内容につきまして,2月7日に開催された第207回分科会において,報酬改定の方針を示す審議報告について基本合意がなされ,2月18日付で公表されましたので下記のとおりお知らせします。
記
令和4年度介護報酬改定に関する審議報告
社会保障審議会介護給付費分科会
令和4年2月18日
介護職員の処遇改善については,これまで累次にわたる取組を行ってきたが,今般,「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(令和3年11月19日閣議決定。以下「経済対策」という。)において,「介護・障害福祉職員を対象に,賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として,収入を3%程度(月額9,000円)引き上げるための措置を,来年2月から前倒しで実施する。」とされ,政府において,補正予算により対応している。
また,政府において,令和4年度予算編成過程において,経済対策を踏まえ,令和4年10月以降について臨時の報酬改定を行い,収入を3%程度(月額平均9,000円相当)引き上げるための措置を講じることが決定された。
当分科会は,この決定を受けて,政府の提案等について議論を行ったが,この議論に基づき,令和4年度介護報酬改定に関する基本的な考え方を以下のとおり取りまとめたので報告する。
○介護職員の処遇を含む労働条件については,本来,労使間において自律的に決定すべきものであるが,慢性的な介護職員不足の状態が続いており,その要因として,業務上の負担などとともに賃金水準の低さが指摘されていること等を踏まえれば,介護職員の処遇改善を担保するために必要な対応を講ずることは,現状においても引き続き求められている。そのような中で,政府は,経済対策に基づく補正予算による対応として,「賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提」として,収入を3%程度(月額9,000円)引き上げるための措置を,本年2月から前倒しで実施している。
○このため,令和4年度介護報酬改定においては,補正予算による措置と同じ政策目的の下での対応であることや,介護報酬に組み入れられるのは年度途中であり,仮に補正予算による措置と要件等を変えた場合には追加的な事務負担が発生すること等も踏まえ,補正予算による措置の要件・仕組み等を基本的に引き継ぐ形で,以下の①~③により,介護職員の処遇改善を図ることが適当である。
①加算の対象(取得要件)
・加算対象のサービス種類としては,今般の処遇改善がこれまでの数度にわたり取り組んできた介護職員の処遇改善をより一層進めるものであることから,これまでの介護職員処遇改善加算等と同様のサービス種類とすること。
・長く働き続けられる環境を目指す観点から,一定のキャリアパスや研修体制の構築,職場環境等の改善が行われることを担保し,これらの取組を一層推進するため,介護職員等特定処遇改善加算と同様,現行の介護職員処遇改善加算(Ⅰ)から(Ⅲ)までを取得している事業所を対象とすること。
・また,賃上げ効果の継続に資するよう,加算額の3分の2以上はベースアップ等(「基本給」又は「毎月決まって支払われる手当」)の引上げに用いることを要件とすること。
②加算率の設定
・事業所における事務負担が少ない形で給付額を算出するため,サービス種類ごとの加算率は,介護職員処遇改善加算と同様,それぞれのサービス種類ごとの介護職員の数に応じて設定すること。
③事業所内における配分方法
・事業所の判断により,介護職員以外の職員の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう,柔軟な運用を認めること。その際,より事業所の裁量を認める観点から,事業所内の配分方法に制限は設けないこととすること。
○また,今般の処遇改善について,事業者や指定権者の事務負担の軽減・簡素化等にも十分に配慮するとともに,対象となる職員の賃金改善が確実に行われることを担保する仕組みとし,これまでの処遇改善に係る取組と併せ,その効果検証を着実に行うことが適当である。
○加えて,本分科会で出された意見も踏まえつつ,処遇改善の在り方については,今般の処遇改善の施行状況等を踏まえ,引き続き検討することが適当である。
〇また,今般の措置とは別に,介護保険制度全体の課題として,介護サービスの業務効率化,適正化及び重点化など,財源が限られる中で保険料や利用者等の負担も念頭に置いた介護報酬の見直しを引き続き検討していくことが求められる。
○なお,今回の臨時改定については,当分科会における検討にあたり,以下の意見もあった。
・これまで処遇改善の対象となっていないサービス種類・職種についても,これらのサービス種類・職種における担い手不足や賃金の実態等を踏まえ,加算の対象とすべき。
・サービス種類ごとに加算率を設定することにより給付額を算出する場合,介護職員を平均よりも手厚く配置している事業所において,介護職員一人当たりの給付額が相対的に低くなることや,加算を取得しない事業所の介護職員が対象とならないことから,各事業所の介護職員の配置数に応じて給付額が決まる仕組みとすべき。