第150回 日医臨時代議員会

 第150回日医臨時代議員会が3月27日(日),各都道府県医と日医をつないでWEB会議にて開催された。
 当日は,令和4年度日医事業計画および予算について報告が行われた後,議事として令和3年度日医会費減免申請,日医定款・諸規定一部改正,医の倫理綱領一部改定が上程され,それぞれ可決・承認された。その後,代議員の代表質問に対して日医執行部が回答に応じ,新型コロナウイルス感染症対策や令和4年度診療報酬改定,医師の働き方改革等,喫緊の課題について議論が交わされた。

中川日医会長 挨拶

 中川日医会長は冒頭,新型コロナウイルス感染症の出現やロシアによるウクライナへの軍事侵攻,福島県沖地震への対応等,「有事に対する危機管理に奔走した2年間」であったと振り返り,コロナとの闘いはこれからも続いていくとして,終息に向け一致団結し,粘り強くコロナとの闘いを勝ち抜きたいとの決意を述べた。

~ウクライナへの支援~

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻により,多くのウクライナ国民に多大な被害が及んでいる状況を憂慮し,ウクライナの医療への支援として1億円を寄付したことを明らかにした。すでに,ウクライナ医師会への支援の第一弾として,医薬品と医療物資がウクライナ医師会役員に手渡されたことを報告。ウクライナでは医師をはじめとする医療従事者が献身的に頑張っているとして,さらなる支援を呼びかけた。

中川 日医会長

~新型コロナウイルス感染症対策~

医療計画に新興感染症を加えた5疾病6事業を実現

 新型コロナウイルス感染症の出現により,我が国における平時からの新興感染症への備えが手薄であったことが浮き彫りとなり,有事の際の医療体制の構築が必要不可欠であることを強く認識したことに言及。医療計画の5疾病5事業に新興感染症を加えることを国に提案した結果,医療法改正により,5疾病6事業を実現したが,今後,医療計画における平時からの「有事への対策」を強く求めていきたいとの意向を示した。

コロナ対応での現場批判はミスリードであると強調

 新型コロナウイルスが感染拡大する中で,医療の逼迫が,あたかも医療現場の対応が十分ではないかのような批判があったが,これは完全な「ミスリードである」と訴えるとともに,医療現場はぎりぎりの状態の中,献身的に患者を守ってきたと改めて強調した。
 また,爆発的な感染拡大が起こる中で,通常の医療を制限してでもコロナ医療を優先させるべきであるという考え方も根強く広がったが,日医はコロナ医療と通常医療を両立しなければならないことを一貫して主張してきたとした。
 第6波は減少傾向にあるとしつつも,オミクロン株のBA.2への置き換わりや海外での新たな変異株の報告からも,コロナとの闘いは今後も継続するとして,最終的な終息に向けて粘り強く対応していくとの意気込みを示し,改めて全国の先生方の協力を求めた。

~令和4年度診療報酬改定~

今後も緩むことなく財源確保に向けての決意を表明

 必ずしも満足するものではないが,厳しい国家財政の中で,本体プラス0.43%の改定率は一定評価されるとした。不妊治療の保険適用や看護の処遇改善等を含んでいるとはいえ,真水でのプラス改定を維持したことは大きく,当初は財務省からの「マイナス改定」の主張に対し,日医としても躊躇なく「プラス改定」を主張したことを説明。最終的には政治判断となったが,岸田総理の英断を評価するとした上で,「日本の医療が今後立ち行かなくなるほどの危機に見舞われている現状に鑑みれば,このたびの診療報酬改定でひと区切りということではない」と強調し,今後も緩むことなく財源を確保する責務を負っていくとして,「次の改定(プラス改定)に繋げていかなければならない」との強い決意を示した。
 また,オンライン診療については,中医協の公益裁定の結論に「オンライン診療では対面診療との比較において,触診・打診・聴診等が実施できない」との意見があり,「対面診療を提供できる体制を有すること」が算定要件の一つになったとしつつも,対面診療と適切に組み合わせて行うべきとの考えを改めて示した。
 さらに,リフィル処方に触れ,厚労大臣と財務大臣の合意文書で「医師の処方により」,「医師および薬剤師の適切な連携の下」で行うものであることが明記された点が非常に重要であるとして,かかりつけ医と患者,さらに適切な連携を図ることができる薬局薬剤師との信頼関係の下でのみ行われるとした。

代表質問

◆濱島府医副会長 質問

「オンライン診療とリフィル処方箋の導入について」

 濱島府医副会長は,今期の診療報酬改定において,初診オンライン診療が恒久制度化されたことに加え,リフィル処方箋が導入されたことについて,「有効性」と「安全性」よりも「利便性」や「経済効率」を優先させて保険導入されたと問題点を指摘。さらに,導入決定の経過についても,「厚労省の諮問機関として保険診療の具体的方向性を決定する中医協の位置づけが軽視されている」と強い危機感を示し,日医の見解と日医会員が取るべき行動について質問を投げかけた。

濱島 府医副会長

◆城守日医常任理事

「参院選挙での勝利に向け全会員が結束を」

 これに対し,城守日医常任理事は,中医協の議論で有効性や安全性よりも利便性や経済効率が優先されたことに強い問題意識を持っているとして,今期の診療報酬改定ではそのような傾向が強まっているとの実感があると述べた。また,保険収載の決定に際しても利便性という判断基準が顕著になってきているとし,中医協で保険適用の可否を審議する際の最も重要な判断基準は,「エビデンスに基づいた有効性・安全性」であるとの考えを改めて強調した。
 さらに,医療政策には経済・財政界の関与が色濃く反映されるとして,政治と交渉するためには,日医の結束を政治に見せる必要があると訴え,今夏の参議院選挙が重要であるとの考えを示した。
 なお,濱島府医副会長の質問に先立ち,山口県から同様の質問がなされており,城守日医常任理事が以下のとおり回答している。

オンライン診療

~適切なオンライン診療「手引き」作成へ~

 城守日医常任理事は,利便性を優先する支払い側との溝が埋まらず,最終的には公益裁定となったが,算定要件では医療機関と患者との間の時間・距離要件や,オンライン診療の実施割合の上限については要件として設定しないことが適切であると判断されたと説明。一方で,「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を踏まえて,「対面診療を提供できる体制を有すること」,「患者の状況によってオンライン診療では対応が困難な場合には,他の医療機関と連携して対応できる体制を有すること」が堅持されたとした上で,中医協の答申付帯意見に触れ,「今回の改定による影響の調査・検証を行い,運用上の課題が把握された場合は速やかに必要な対応を検討する」と明示されたとした。
 今後,オンライン診療が対面診療と適切に組み合わせた上で実施されるよう注視するとともに,患者の安心・安全が損なわれたり,地域医療の秩序を混乱させるような事象が生じた場合には,期中であっても速やかに診療報酬要件の見直しを要請する考えを示した。
 さらに,オンライン診療を導入している医師やこれから導入しようとしている医師により安心してオンライン診療を利用してもらうことを目的として「手引き」を作成中であることを明らかにした。オンライン診療が営利追求の市場になることを認めず,心あるかかりつけ医の先生の診療の助けになるよう,必要な軌道修正も見据えつつ,対応していくとの意向を示した。

リフィル処方

~医師にのみ処方権があることを強調~

 城守日医常任理事は,昨年末の予算編成における厚労大臣と財務大臣の改定折衝での異例の導入であり,中医協での議論がなされなかったことに遺憾の意を表した。
 リフィル処方を行う場合,療養担当規則で日数制限がある医薬品は対象外とされ,処方日数もこれまでどおり制限はないとして,あくまでも医師が患者の状態によって判断すると説明。また,現行制度においても投薬日数は医師の裁量とされているものの,医師は適切な医学管理を行うため,無制限に処方を行わないのが現状であると強調した。

新型コロナウイルス関連

~日本版CDC創設を引続き国に要望~

 鹿児島県から公衆衛生対策や情報発信等の課題,東京都からワクチン接種体制などのコロナ関連の質問が出された。
 釜萢日医常任理事は,新型コロナウイルス感染症の流行対策においては,国立感染症研究所,国立国際医療研究センターなどの機関を束ね,情報を一元化し,迅速的確に対処方針を示す権限を有する司令塔が不明確であるとの認識を示し,日本版CDCの創設を国に対して引続き要請する考えを示した。
 また,保健所機能の強化について触れ,新設や常勤職増員には限りがあると考えられることから,いざという時に即戦力となる人材を他業務担当の中にあらかじめ養成,確保することで,業務逼迫した場合に,必要なところに迅速に派遣し,支援できる体制を組むことが現実的との考えを示した。
 新型コロナワクチンの追加接種については,18歳以上の対象者全員ができるだけ早く接種を受けることが重要であるとするとともに,5歳から11歳の小児への接種に言及。子どもを新型コロナから守り,大切な教育機会を確保するばかりでなく,家族や周囲の人への感染を防ぐ観点からも接種を推奨するとの考えを示した。ワクチン接種を進めるために,可能な限りすべての会員が関わってほしいと述べ,さらなる協力を呼び掛けた。

医師の働き方改革

~医師独自の宿日直許可の必要性に言及~

 東京都および新潟県から医師の働き方改革を進める上での課題に対して質問が出された。
 これに対して,松本日医常任理事は,まず,医師の宿日直の特殊性に触れ,「救急外来,入院患者対応など生命に関わる緊急性の高い業務が一定程度発生する」,「応召義務」,「多くの医療機関が大学病院等からの応援に依存している」など一般業種とは異なるとした。その上で,罰則付き時間外労働の上限規制,勤務間インターバル規制などが導入されると,大学病院から医師が引き揚げられ,医療提供体制を縮小せざるを得なくなるとの危惧から,厚労大臣に対して,日医,四病院団体協議会,全国有床診療所連絡協議会の連名で要望書を提出したことを明らかにした。
 要望書では▽宿直時の睡眠時間が十分ではない日が数日であれば宿日直許可を認めること▽宿日直中に救急等の業務が発生する場合でも一定程度の割合に収まっていれば宿日直許可を認めること▽宿日直許可の回数について再検討することや,連続の宿日直を認めること-などが挙げられるとともに,コロナ禍で対応が困難な状況のため上限規制の罰則適用を数年程度,猶予することも求めていると説明した。
 さらに,医師独自の宿日直許可基準が設けられなければ,夜間救急医療における人材確保は難しいことから,厚労省に対して,早急に対応策を求めているとした。

 このほか,代表質問では「敷地内薬局」,「主治医意見書作成時における情報提供」,「日医の情報発信」,「医療現場における患者等からの暴言・暴力への対策」,「日本における医療DX」,「後発医薬品の供給不足」等について活発な質疑応答が展開された。

2022年5月1日号TOP