2022年5月1日号
山科医師会との懇談会が2月19日(土),Webで開催され,山科医師会から13名,府医から10名が出席。「集団会場での特定健診の今後」,「後発医薬品およびインフルエンザワクチンの供給不足への対応」,「医療費患者自己負担分のキャッシュレス決済」をテーマに活発な議論が行われた。
〈注:この記事の内容は2月19日現在のものであり,現在の状況とは異なる部分がございます〉
~集団会場での特定健診の実施について~
新型コロナウイルスの感染拡大にともない,京都市における令和2・3年度の特定健診「集団健診」が中止となったことで受診者数が大きく減少し,個別健診だけでは従来の集団健診受診者の受け皿になることは困難であることから,府医では集団健診の再開に向けて京都市と協議を続けてきたことを報告。令和4年度については小学校での健診再開を断念し,区役所・支所を会場として,予約・定員制を設けた上で実施することとなったが,令和5年度に向けて京都市との協議を継続する意向を示した。
地区からは,京都市の周知不足により,胸部レントゲンが個別健診に含まれていないことの説明が医療機関の負担となっていると指摘された。府医としてはコロナ禍以前からの問題であると認識しており,改めて京都市に対して情報発信の強化を申し入れる意向を示すとともに,医療機関の窓口で説明に苦慮した際は,京都市のコールセンターへ問い合わせるよう案内した。
~健診実施における財政支援~
集団健診の再開にあたり,コロナ禍により感染症対策等の経費が必要であることを申し入れ,開催日ごとの固定費が増額される予定であることを報告し,今後も収支面で赤字になることがないよう必要経費については要望していくとした。
京都市の財政難による健診事業の縮少が危惧されることから,市民の疾病予防や健康増進に関するサービスの低下にならないように注視する必要があると述べ,中でも特定健診は,かかりつけ医が各地域で協力して市民の疾患を発見し,早期治療に結び付ける貴重な機会であるため,今後も事業が存続できるよう京都市との協議を継続していく考えを示した。
最後に,がん検診について触れ,国の通知により,特定健診は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令時には中止とすることが示されているが,がん検診は不要不急の検診ではないため,緊急事態宣言等の状況下においても感染対策を行った上で実施することになっていると説明し,がん検診の積極的な実施を呼びかけた。
~後発医薬品の供給不足~
後発品を中心とした多くの医薬品の供給不足の状態が続いていることについて,厚労省の対応や日医の現状認識等について情報共有を行った。
~インフルエンザワクチンの供給不足への対応~
今期のインフルエンザワクチンについては,4価のうち2株に変更があったこともあり,製造効率が悪く,製造に時間を要したため出荷が遅れたものの,製造効率が良く過去最大の供給量となった昨季と比べ7~8割程度であり,全体としては平成29・30年度と同水準の供給量が確保され,12月中旬まで継続的に供給がなされたことを報告した。
ワクチンは錠剤等の薬剤と異なり,株の変更による製造効率の相違,ロットごとの品質管理,国家検定など厳格な製造工程があることに加え,不足した場合の代替措置が困難であることが特徴であり,国として問題を認識していても対応が困難な状況であると説明。ワクチン製造に係るこれらの厳しい制約から,今後も供給時期が不安定となる可能性はあるものの,最終的には必要量が供給される可能性が高いとの見通しを示した上で,インフルエンザワクチンに関しては,その時の製造工程によって供給量にアンバランスが生じることを踏まえ,各医療機関においては患者に対して今後の見通し等を含めた説明が重要になるとした。
地区からは,医薬品の品質管理はもちろん,その安定供給は医療の根幹に関わる問題であり,新型コロナウイルス感染症によるものとは別の「医療崩壊」に繋がりかねないと指摘。インフルエンザワクチンについては,希望者が殺到する10~11月の供給量が重要であり,供給の遅延により接種をあきらめる患者もいるため,引続き安定供給に向けた取組みを推進することが要望された。
政府は「未来投資戦略2018」に基づいて2018年7月に「キャッシュレス推進協議会」を設置し,業界横断的にキャッシュレス化の検討を開始しており,経済産業省が積極的に関与して2025年までにキャッシュレス決算比率を40%,さらに将来的には80%にすることが目標として掲げられていることを説明。
当該協議会には,日医も団体会員(50団体)として参加するだけでなく,その中の「医療機関におけるキャッシュレス普及検討プロジェクト」に参画し,2019年には「医療機関におけるキャッシュレス決済に関するアンケート」が実施されたことを紹介した。
日医のORCA管理機構株式会社では,各医療機関がキャッチアップしやすく,患者の利便性向上に寄与する環境整備が必要であるとの考えの下,日医会員を対象として,医療機関の負担を最小限にした上で,医療機関向けのキャッシュレス決済サービスの提供が開始されていることを報告した。各種クレジットカードだけでなく,その他交通系ICカードやQR決済等のサービス提供が可能となっており,基本費用となる端末費用・設置工事・月額利用料は無料で,初期費用等としては,実質,振込手数料のみとなっていることを紹介した。
府医としては,キャッシュレス決済について推奨も抑止もせず,各医療機関においてメリットとデメリットを踏まえて十分に検討いただくよう呼びかけた。
支払基金と国保連合会双方における審査の平準化を図るために開催している「基金・国保審査委員会連絡会」の状況について解説するとともに,個別指導における主な指摘事項について資料提示した。
また,療養費同意書の交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書の発行に理解と協力を求めた。