2022年5月1日号
宇治久世医師会 阿部 純
コロナ禍の恋愛はどんな形をとっているのだろうとすでに恋愛から程遠くなった私は興味津々だ。新しい行動様式として距離をしっかりとった交流とか黙食とかおよそ恋愛にはほど遠い行動を強いられるのだが実際はどうなっているのだろう。でもコロナ前と比べると確かに街中での愛する二人の熱っぽいハグのシーンを見る機会は減っているようだ。あの感情表現の豊かなイタリアですらマスク越しのキスを強いられているようだ。
それで思い出したのだが2020年のTVドラマで“リモラブ”という番組が好きで毎週楽しみにしていた。産業医として赴任した波瑠演じる大桜美々がきっちりとマスク防御して会社のスタッフをコントロールしつつ,スマホ上では“草餅”に扮して,“檸檬”なる松下洸平演じる青林風一と恋愛関係に陥るドラマだった。COVID-19が猛威を振るい始めた頃で登場人物が皆マスク着用なのはこの時代にマッチしていて好感が持てた。面白かったのは大桜が心を寄せたのが会社の人事部のスタッフの青林と知ってLINEでリズミカルに交流しあうが,リアルにふたりで会うとなると変にドギマギしてうまく感情を表現できず,ふたたびSNSでの交流に戻ってしまうところだ。どちらの世界がリアルなのか?わからなくなるがこれなどはまさにマトリックスを地でいくようだ。これが進むとさらにメタバースの仮想空間で愛を交わすことになる。
ところでもう人間らしい人間には戻れないのだろうか?逆に他人と会ったり,会っても距離が近い会いかたではCOVID-19の餌食になるのだろうか?今後はAIロボットやアンドロイドが世を闊歩する荒涼とした世界に住むことになるのだろうか?このような世界は永遠の生を約束されるものの味気なくつまらない日々が続くだけだ。しかしこういった極端な世界が直ちに訪れるわけではないがその前兆はすでに毎日,巷に増えてきたようだ。東大医学部合格者数を増やして有名進学校として名を刻もうと学校関係者は血眼になり優秀な受験生はその犠牲者だ。そして,あろうことか大変な凶行に及んでしまう。はたまた2月に開催された北京オリンピックでも国威発揚のため思春期の選手が犠牲になってしまっているのだ。オリンピックは一体誰のものなのかを忘れてしまっている。競争社会の比喩で“サル化した世界”はすでに遠く,これからはまさしくロボット化が進んでしまうだろう。