各専門医会長との懇談会 8.27 Web開催

「診療報酬改定およびかかりつけ医機能」について議論

 8月27日(土)各専門医会長との懇談会がWebで開催され,専門医会15名,府医から22名が出席。松井府医会長の挨拶に続き,専門医会長からの自己紹介が行われた後に,「診療報酬改定およびかかりつけ医機能」をテーマとして,日医常任理事の城守国斗氏より講演が行われた。また,専門医会長から事前に提出のあった意見・要望について意見交換が行われた。

診療報酬改定およびかかりつけ医機能について

日本医師会常任理事 城守 国斗

 診療報酬改定の流れ,令和4年度診療報酬改定において異例の決定となった項目や問題点について,日医の見解を中心に説明された。

城守 国斗氏

~診療報酬改定の流れ~
 今回は,本体0.43%のプラス改定となったが,その中には看護師の処遇改善等の固定された経費が含まれているため,真水部分は0.23%(国費ベースで250億円)であり,いかに少ない金額で診療報酬改定をしているかということをご理解いただきたい。
 予算編成過程を通じて内閣で改定率が決まると,社会保障審議会の医療保険部会・医療部会において,改定の「基本方針」が策定され,この基本方針と改定率を所与の前提として,中医協において個別の診療報酬項目に関する点数設定や算定要件・施設基準に関する議論を行い,パブコメや公聴会を開催して最終的に答申を提出する。
 中医協では,有効性,安全性が確認された技術等については,速やかに保険収載することになる。有効性,安全性に関しては,エビデンスに基づいた評価を行うため,支払側と診療側の議論の中心となるところである。

~感染症対策~
 新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の特例について,「入院」は10月以降も継続予定である。「在宅」の「自宅・宿泊療養者への電話等による初再診(397点)」は,本来7月31日までの期限であったものが,9月30日まで延長となったが,現在のコロナの状況を勘案し,再延長すべきであると要望しているところである。「外来」の「疑い患者への院内トリアージ実施料の特例(300点)(※診療・検査医療機関の場合550点)」は,財務省の意向が強いが,厚労省とともに,残存できる形を交渉しているところである。
 今回新設された「外来感染対策向上加算(6点)」は,施設基準において,「年2回程度,感染対策向上加算1の医療機関,または,地域の医師会とカンファレンスをしなければならない」「年1回,新興感染症に対しての訓練を行わなければならない」「発熱外来でなければならない」などの要件が多く,「連携強化加算(3点)」や「サーベイランス強化加算(1点)」も,それぞれに要件が設定されているため,算定しにくいとの意見も多く,6月26日に開催された日医代議員会においても多くの要望が出された。

~日医代議員会での答弁~
 日医代議員会において,令和4年度改定に対する日医の見解が問われた。改定から5か月程度が経っているものの,総括するには早いが,今回の改定において,財務省は躊躇なくマイナス改定を主張しており,厚労省とともにできる限りのエビデンスや医学的見地を提示し続け,ギリギリの状況の中でなんとかプラス改定とはなったものの,改定財源が250億円程度しかなかったことが大変厳しいところであった。
 中医協においては今回の改定の影響を調査・検証し,次回改定で修正する流れが確立している。また,濱島府医副会長が委員として参画している日医社会保険診療報酬検討委員会は,各ブロックの代表者,各専門医会の代表者で構成された検討会で,今回改定によって受けた影響,問題点等を委員会で提示していただき,次回改定に向けて厚労省や中医協に提言していく。
 診療報酬改定の決定プロセスについて,本来,中医協の決定はエビデンスに基づいて,有効性,安全性を議論する場であるにもかからず,外からの圧力が激増してきており,これが医療現場に混乱を招いた大きな要因と理解している。

~リフィル処方~
 リフィル処方の導入に関しては,令和4年度の予算編成における厚生労働大臣と財務大臣の改定率折衝で異例の導入となり,中医協で本格的な議論は全く行われなかった。
 財政制度等審議会の2021年12月の答申では,医療機関への通院負担を軽減することをリフィル処方導入の狙いとしているが,不要な再診はなく,また,長期処方する場合も適切な期間を患者ごとに選択をしている。定期的に医学管理を行っており,そのためにあるのが再診料である。日医としては今後も繰り返し主張し続ける。
 中医協の答申書附帯意見として,「今回改定による影響の調査・検証を行うとともに,適切な運用や活用策について引続き検討すること」と明示されたので,次回診療報酬改定のテーマとなるであろう。

~オンライン診療~
 支払側は,「算定要件および施設基準は,見直しが行われた指針に基づいて設定すべきであり,指針を超える制限を設けるべきではない」と主張した一方で,診療側は,「指針を踏まえつつも,オンライン診療は対面診療の補完であり,しっかりと要件は設定すべき」と主張した。特に,対面診療の実効性が担保できるよう,時間要件や距離要件,また,地域の医療提供体制に悪影響を及ぼさないように実施割合の上限設定が必要と述べた。
 公益委員からは,「算定要件および施設基準については,指針に基づいて見直しを行うことが今回の検討の前提である」との発言があり,様々な要件が解除されたという経過である。
 中医協の答申書附帯意見に「今回改定による影響の調査・検証を行い,運用上の課題が把握された場合は速やかに必要な対応を検討する」と明示された。
 今後,オンライン診療が対面診療と適切に組み合わせた上で実施されるよう注視しつつ,患者の安心・安全が損なわれることや,地域医療の秩序を混乱させるような事象が生じた場合には,期中であっても,速やかに要件の見直しを要請していく。

~病診連携・外来機能分化~
 平成25年の社会保障制度改革国民会議の報告書に基づいて,外来と入院の機能分化が進められている。特に,令和元年の全世代型社会保障検討会議の中間報告では,病院・診療所における外来機能の明確化と地域におけるかかりつけ医機能の強化等について検討を進めるとされており,選定療養の対象範囲拡大についても記載されている。外来医療においては,かかりつけ医機能の強化とともに,外来機能の明確化・連携を図り,医療機関が都道府県に外来機能を報告する制度を創設して,新たに紹介受診重点医療機関を明確化することが令和元年度に構想のフレームワークとしてでき上がっている。ただし,外来機能の議論は,これまで厚労省の審議会や検討会において明確に行われたことは一切なく,外来機能そのものが具体的になっていない。
 機能分化を行っていない場合は,一般外来患者は大学病院や中小病院,診療所を受診するが,機能分化・強化を行うと,一般外来患者は主に診療所を受診し,専門性の高い疾患や検査が必要な場合は,紹介受診重点医療機関に紹介される。外来負担の軽減により医師の働き方改革に直結するということであるが,一般外来や専門外来の議論すらできていない中で進められた。
 厚労省は,専門外来に点数を付けてはどうかと考えていたが,外来の専門行為それぞれに点数が付いている上に,専門性の高いところに,そのことを以ってのみ,点数をさらに加算するというのは,一般外来と専門外来の差別化に繋がることから,外来に点数を付けずに入院に点数を付けた。

~機能強化加算,地域包括診療加算~
 地域包括診療加算は,対象疾患に慢性心不全,慢性腎臓病が追加されるとともに,予防接種に係る相談に対応することが要件に追加されるなどの見直しが行われた。
 かかりつけ医機能を評価する項目として,できるだけ診療所の先生方が算定できるように,新規届出の際に必要となる日医生涯教育の単位取得について,日医eラーニングでも可となった。なお,新型コロナウイルス感染症における臨時的な取り扱いは現在も有効である。
 機能強化加算の見直しにより,地域包括診療加算2の届出に基づき算定する場合は,実績要件を満たすことが求められ,年間3人以上算定しているか,在宅患者訪問診療料や往診料を年間3人以上算定しているという要件が付け加えられた。

~オンライン資格確認の導入~
 医療機関のメリットとして,カルテ作成時の入力の手間の軽減や,誤記リスクの減少が挙げられるが,高齢者の場合,事務員に説明を求められ,窓口対応の負担が増す懸念もある。その他,様々な情報が閲覧できるようになるため,災害時にはマイナンバーカードを持っていない患者であっても,患者データを閲覧できることが大きいと考えている。
 7月31日現在,カードリーダーの申し込み数は61%,運用開始が26%(医科診療所は17%)である。5月25日の社会保障審議会において,来年4月からシステム導入の原則義務化が検討され,6月7日に閣議決定されている。その中に「全国医療情報プラットフォームの創設」として,レセプト・特定健診等情報に加え,予防接種・電子処方箋情報,自治体検診情報,電子カルテ等の医療(介護)全般にわたる情報を共有・交換できる全国的なプラットフォームの創設が予定されており,日医としては医療情報基盤整備として推進すべきとしている。
 電子的保健医療情報活用加算は9月末で廃止となり,10月1日より医療情報・システム基盤整備体制充実加算に改められた。オンライン資格確認システムを導入した上で,初診に限りマイナンバーカードが無ければ4点,マイナンバーカードがあり,医師が情報を閲覧・取得すると2点という設定になっている。問診票の標準的項目を協議中であるが,各診療科に応じた項目は自由に追加可能であり,各自対応いただきたい。
 導入にあたっての補助金は,昨年3月までは42.9万円を上限に実費補助,4月から6月7日の閣議決定までは,32.1万円(3/4)を上限に補助,6月7日からは42.9万円を上限に実費補助となっている。6月7日までに稼働した医療機関は,補助金の性質上対象外となるが,導入はしたものの稼働せずに,6月7日以降に稼働した医療機関は,1/4を補助金として付加するということになっている。

~かかりつけ医機能について~
 新型コロナ流行当初は,感染拡大を防ぐために国の方針として,受診に一定の制限をかけていたにもかかわらず,かかりつけ医に診てもらえなかった,どこに受診していいか分からなかった,検査が受けられなかったなどの意見を受けて,財源省がかかりつけ医の制度化を図ろうとしている。
 それに対して,現在の国の検討会では,有事の場合と平時とは別に考える必要があるとのスタンスで議論を進めているところである。有事の場合の相談先や受診先は別途作れば良く,かかりつけ医の議論とは別であると主張している。
 現在,日医では,かかりつけ医についての議論が本格化する前にしっかりと議論しておく必要があることから,医療政策会議の下にワーキンググループを設置し,松井府医会長も副座長として参画している。
 かかりつけ医機能の明確化は難しく,明確化する必要もないと考えている。現在の日本の外来医療の体制はどのようなところにメリットがあり,どこを修正すればデメリットが直せるかを考えながら議論を進めれば良く,かかりつけ医の制度化の議論には及ばないと考えている。

専門医会長からの意見・要望

 各専門医会から,「会議室の使用」「府医から専門医会への助成金」「事務業務委託」「診療報酬改定」「HPVワクチン接種」「循環器病対策基本法」等に関する意見・要望が出され,各担当役員より回答した。

2022年10月1日号TOP