2022年10月1日号
令和4年度診療報酬改定において,看護の処遇改善については,「看護職員処遇改善評価料」が新設され,令和4年10月1日より適用されるとともに,関係告示・通知およびQ&Aが下記のとおり示されましたので,お知らせします。
記
▷経緯
「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(令和3年11月19日閣議決定)等を踏まえた,地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員を対象とする,収入を1%程度(月額平均4,000円相当)引き上げるための措置として,令和4年2月から9月までの間,「看護職員等処遇改善事業補助金」事業が実施されているところ。
令和4年10月からは,同閣議決定等に基づき,収入を3%程度(月額平均12,000円相当)引き上げるための措置として,診療報酬において「看護職員処遇改善評価料」を新設するもの(令和4年8月10日中医協答申)。
▷概要
(1)対象となる医療機関
次のいずれかに該当する医療機関
ア 救急医療管理加算に係る届出を行っている医療機関であって,救急搬送件数が年間で200件以上であること。
イ 救命救急センター等を設置している医療機関であること。
(2)対象となる職種
ア 看護職員(看護師,准看護師,保健師,助産師)
イ 医療機関の判断により,看護補助者・理学療法士・作業療法士等のコメディカルの賃金改善に充てることが可能
(3)看護職員処遇改善評価料の要件等
入院日数に応じて支払われる入院基本料等に,それぞれの医療機関の看護職員数と延べ入院患者数に応じて,点数を上乗せする。
本評価料による収入の全額については,看護職員等の賃上げに充当することを求めるとともに,本評価料による収入の3分の2以上について,看護職員等の賃金のベースアップに使用することを求める。
また,本評価料を算定する医療機関に対し,看護職員等の賃金改善額と本評価料による収入額を記載した計画書及び実績報告書の提出を求める。
▷対象医療機関におけるスケジュール
9月 対象医療機関において届出・算定に向けた準備
10月1日~ 看護職員処遇改善評価料の算定開始
10月1日~10月20日 地方厚生(支)局へ施設基準に係る届出書を提出
▷看護職員の処遇改善に関するQ&A
【看護職員処遇改善評価料】
問1 「A500」看護職員処遇改善評価料については,入院基本料,特定入院料又は短期滞在手術等基本料(「A400」の「1」短期滞在手術等基本料1を除く。)を算定している患者について算定するとされているが,外泊期間中であって,入院基本料の基本点数又は特定入院料の15%又は30%を算定する日においても,算定可能か。
(答) 算定可。
問2 「A500」看護職員処遇改善評価料の施設基準における「看護職員等の数(保健師,助産師,看護師及び准看護師の常勤換算の数をいう。)」に,看護部長等(専ら,病院全体の看護管理に従事する者),外来勤務,手術室勤務又は中央材料室勤務等の保健師,助産師,看護師及び准看護師も含むのか。
(答) 含む。
問3 「A500」看護職員処遇改善評価料の施設基準における「看護職員等の数(保健師,助産師,看護師及び准看護師の常勤換算の数をいう。)」に,派遣職員など,当該医療機関に直接雇用されていない保健師,助産師,看護師及び准看護師も含むのか。
(答) 対象とすることは可能。
ただし,賃金改善を行う方法等について派遣元と相談した上で,「賃金改善計画書」や「賃金改善実績報告書」について,対象とする派遣労働者を含めて作成すること。
問4 「A500」看護職員処遇改善評価料の施設基準における「看護職員等の数(保健師,助産師,看護師及び准看護師の常勤換算の数をいう。)」について,育児・介護休業法第23条第1項若しくは第3項又は第24条の規定による措置が講じられ,当該労働者の所定労働時間が短縮された者の場合,常勤とみなしてよいか。
(答) 週30時間以上勤務している者であれば,常勤とみなすこと。
問5 「A500」看護職員処遇改善評価料において,看護職員等(保健師,助産師,看護師及び准看護師)以外の職種を賃金の改善措置の対象に加える場合,当該職種の職員についても,「看護職員等の数」に計上してよいか。
(答) 不可。
問6 「A500」看護職員処遇改善評価料において,「延べ入院患者数」については,どのように算出するのか。
(答) 延べ入院患者数は,第1節入院基本料,第3節特定入院料又は第4節短期滞在手術等基本料(短期滞在手術等基本料1を除く。)を算定している患者を対象として,毎日24時現在で当該医療機関に入院していた患者の延べ数を計上する。
ただし,退院日は延べ入院患者数に含め,また,入院日に退院又は死亡した患者も延べ入院患者数に含める。
問7 問6について,自由診療や労災保険による患者について,「延べ入院患者数」に計上するのか。
(答) 自由診療の患者については,計上しない。公費負担医療や労災保険制度等,診療報酬点数表に従って医療費が算定される患者については,計上する。
問8 問6について,救急患者として受け入れた患者が処置室,手術室等において死亡した場合,「延べ入院患者数」に計上するのか。
(答) 計上する。
問9 「A500」看護職員処遇改善評価料の施設基準における別表1のテ「その他医療サービスを患者に直接提供している職種」とは,具体的にどのような職種か。
(答) 診療エックス線技師,衛生検査技師,メディカルソーシャルワーカー,医療社会事業従事者,介護支援専門員,医師事務作業補助者等が想定される。
問10 「A500」看護職員処遇改善評価料の施設基準における別表1のテ「その他医療サービスを患者に直接提供している職種」について,医療サービスを患者に直接提供していない一般の事務職員は対象となるか。
(答) 対象とならない。
問11 「A500」看護職員処遇改善評価料において,看護職員処遇改善評価料による賃金の改善措置の対象に,薬剤師を加えることは可能か。
(答) 不可。
なお,看護職員処遇改善評価料によらずに賃金の改善措置を実施することは可能であるが,その場合には,当該評価料における「賃金改善計画書」及び「賃金改善実績報告書」における,賃金改善の見込額及び実績額に計上しないこと。
問12 「A500」看護職員処遇改善評価料において,賃金の改善については,算定開始月から実施する必要があるか。
(答) 貴見のとおり。
問13 「A500」看護職員処遇改善評価料において,基本給等について,常勤職員へは当月払いし,非常勤職員へは翌月払いしている場合,賃金の実績額及び改善実施期間はどのように判断すべきか。
(答) いずれについても,基本給等の支払われた月ではなく,対象となった月で判断する。
問14 「A500」看護職員処遇改善評価料による収入の全額について,賃金改善実施期間内に看護職員等の賃金の改善措置を行う必要があるか。
(答) 原則として,賃金改善実施期間内に賃金の改善措置を行う必要がある。
ただし,想定を上回る収入が生じたなど,やむを得ない場合に限り,当該差分については,翌年度7月に「賃金改善実績報告書」を提出するまでに賃金の改善措置を行えばよいものとする。
問15 「A500」看護職員処遇改善評価料において,ベア等による賃金改善を開始した後に,看護職員処遇改善評価料による収入が計画書作成時の見込額を上回り,ベア等に3分の2以上充てる要件を満たさなくなった場合,再度就業規則等を改正し,基本給又は決まって毎月支払われる手当を更に引き上げる必要があるか。
(答) 貴見のとおり。
問16 「A500」看護職員処遇改善評価料において,看護職員等(保健師,助産師,看護師及び准看護師)の賃金の改善措置を実施する具体的方法(金額・割合等)について,職員に応じて区分することは可能か。
(答) 可能。各医療機関の実情に応じて,賃金の改善措置の方法を決定すること。なお,その場合であっても,「看護職員等の数」は当該医療機関に勤務する全ての保健師,助産師,看護師及び准看護師を対象とすること。
問17 「A500」看護職員処遇改善評価料において,賃金改善の実績額の算出に当たって,賃金改善実施期間内における定期昇給や人事院勧告等に伴う給与変動は,どのように取り扱うべきか。
(答) 定期昇給や人事院勧告等に伴う給与変動については,当該評価料の算定の有無にかかわらず措置されるものであり,賃金改善の実施額に含まれないため,「当該評価料による賃金の改善措置が実施されなかった場合の賃金総額」及び「当該評価料を取得し賃金の改善措置が実施された場合の賃金総額」の双方において考慮すること。
問18 「A500」看護職員処遇改善評価料において,賃金改善に伴い増加する賞与,時間外勤務手当等,法定福利費等の事業者負担分及び退職手当についても,賃金改善の実績額とみなしてよいか。
(答) いずれについても,基本給等の引き上げにより増加した分については,賃金改善の実績額に含めてよい。ただし,ベア等には含めないこと。
なお,退職手当の増加分については,当該評価料による賃金改善実施期間に退職した者に係るものに限る。
問19 問18における,賃金改善に伴い増加する法定福利費等の事業者負担分について,どのような範囲を指すのか。
(答) 次の①及び②を想定している。
①健康保険料,介護保険料,厚生年金保険料,児童手当拠出金,雇用保険料,労災保険料等における,賃金改善に応じた事業者負担増加分
②退職手当共済制度等における掛金等が増加する場合の増加分
なお,算出に当たっては,以下の算式により算出した金額を標準とするが,対象医療機関の実情に応じて,以下の算式以外の合理的な方法に基づく概算によって算出しても差し支えない。
<算式>
「前事業年度における法定福利費等の事業者負担分の総額」÷「前事業年度における賃金の総額」×「賃金改善額」
問20 「A500」看護職員処遇改善評価料の対象職員について,看護職員等(保健師,助産師,看護師及び准看護師)を含めず,看護職員等以外の職種の職員のみ賃金の改善措置を行うことでも良いか。
(答) 看護職員の処遇改善を目的としている当該評価料の趣旨に鑑み,賃金の改善措置の対象者には,看護職員等(保健師,助産師,看護師及び准看護師)を含める必要がある。
問21 「A500」看護職員処遇改善評価料において,「決まって毎月支払われる手当」を支払う場合に,その金額を割増賃金(超過勤務手当)や賞与に反映させる必要はあるのか。
(答) 労働基準法第37条第5項及び労働基準法施行規則第21条で列挙されている手当に該当しない限り,割増賃金の基礎となる賃金に算入して割増賃金を支払う必要がある。当該評価料に係る「決まって毎月支払われる手当」については,その性質上,上記手当には該当しないことから,割増賃金の基礎となる賃金に算入して割増賃金を支払う必要がある。
なお,「決まって毎月支払われる手当」をいわゆる賞与の算定に際して反映させるか否かは,各医療機関の定めによる。
問22 「A500」看護職員処遇改善評価料において,区分変更を行う場合はどのような届出が必要か。
(答) 「基本診療料の施設基準等に係る届出書」及び「看護職員処遇改善評価料の施設基準に係る届出書添付書類」の届出が必要。
なお,「賃金改善計画書」については,更新する必要はない。
問23 「A500」看護職員処遇改善評価料の施設基準において,「対象医療機関は,当該評価料の趣旨を踏まえ,労働基準法等を遵守すること。」とあるが,具体的にどのような対応が必要か。
(答) 当該評価料による賃金改善を行うための就業規則等の変更について労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことや,賃金改善に当たって正当な理由なく差別的な取扱いをしないことなど,労働基準法やその他関係法令を遵守した対応が必要である。
その他,賃金改善を行うための具体的な方法については,労使で適切に話し合った上で決定することが望ましい。