かかりつけ医の制度化に対する府医の見解

 「かかりつけ医」のあり方については,日医においてワーキンググループが設置され,本格的な議論が開始されているところです。
 府医としても,6月の府医定時代議員会で採択された決議の内容(京都医報No.2225 7月15日号P.10参照)を踏まえ,改めて「かかりつけ医」のあり方に対する府医の考えを以下にお示しします。


 府医は,かかりつけ医は「制度化」するのではなく,その機能をより強化することで国民の信頼に応えることが重要であると考えています。

 財務省は,新型コロナウイルス流行当初にかかりつけ診療所が受け入れ困難であったことを捉えて,かかりつけ医機能が十分に機能しなかったと解釈し,かかりつけ医の制度化を図ろうとしています。ご承知のように,流行当初の国の方針は,感染拡大を防ぐために受診に一定の制限をかけたのですが,財務省はこれを医療機関側の問題にすり替えています。
 この狙いはかかりつけ医機能の要件を法制上明確化することによって,かかりつけ医を登録制とし,さらには患者一人あたりの定額制導入によって医療費を抑制することにあります。これは人頭払い制の導入にほかならず,国が医療費をコントロールすることが可能となり,包括払い制の拡大に拍車がかかります。
 このようにかかりつけ医の制度化はフリーアクセスや出来高払い制を柱としてきた国民皆保険制度を崩壊へと導きます。こういった事態を阻止するために,府医では,6月18日開催の定時代議員会において,かかりつけ医の制度化に反対する旨の決議を採択し,関係各所に送付したところです。

 また,財政制度等審議会において「(かかりつけ医の)制度的対応が不可欠であり,具体的には,①地域の医師,医療機関等と協力している,②休日や夜間も患者に対応できる体制を構築している,③在宅医療を推進している―といったかかりつけ医機能の要件を法制上明確化した上で,これらの機能を備えた医療機関をかかりつけ医として認定するなどの制度を設けること,こうしたかかりつけ医に対して利用希望の者による事前登録・医療情報登録を促す仕組みを導入していくことを,段階を踏んで検討していくべきである」と記しています。
 さらに,「必要な機能を備えたかかりつけ医の普及・定着の観点から,認定を受けたかかりつけ医による診療について定額の報酬も活用して評価していく一方で,登録をしておらず医療機関側に必要な情報がないにもかかわらずあえてこうしたかかりつけ医に受診する患者にはその全部または一部について定額負担を求めることを,かかりつけ医の制度化に併せて検討していくべきである」と主張しています。
 一方,政府は2013年8月にまとめた社会保障制度改革国民会議の報告書において「患者のニーズに見合った医療を提供するためには,医療機関に対する資源配分に濃淡をつけざるを得ず,しかし,そこで構築される新しい提供体制は,利用者である患者が大病院,重装備病院への選好を今の形で続けたままでは機能しない。さらにこれまで,ともすれば「いつでも,好きなところで」と極めて広く解釈されることもあったフリーアクセスを,今や疲弊おびただしい医療現場を守るためにも「必要な時に必要な医療にアクセスできる」という意味に理解していく必要がある。そしてこの意味でのフリーアクセスを守るためには,緩やかなゲートキーパー機能を備えた「かかりつけ医」の普及は必須である」とまとめています。
 また,本年6月には「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」ことが明記された骨太の方針2022が閣議決定されています。

 これらに対して日医は,4月20日付で中川日医会長(当時)からかかりつけ医のあり方を整理した「国民の信頼に応えるかかりつけ医として」を会員の先生方に直接送付するとともに,記者会見でもその内容を説明しています。
 本内容は6月1日号保険医療部通信にも掲載し,会員の先生方にお知らせしておりますので,今一度,ご確認ください。

2022年9月1日号TOP