おしらせ – 医療機関の医師の宿日直許可に関する取り扱いについて

 令和6年度からの医師に対する時間外労働の上限規制の適用に関連して,医療機関では,医師の宿日直許可の申請に向けた取組みが進められており,今後,医療勤務環境改善支援センターや労働基準監督署に対して,医師の宿日直許可申請に関する相談等が増加することが見込まれております。
 こうした状況を踏まえ,医療機関から医師の宿日直許可申請に関する相談があった場合には,医療機関の個別の状況に応じて丁寧な説明を心がけること,また,医療機関が安心して相談できるよう,よく医療機関の実情を踏まえて医療機関に寄り添った対応を行うよう厚生労働省から都道府県労働局雇用環境・均等部(室)長および労働基準部長宛てに事務連絡が発出され,この度,日医を通じて情報提供がありました。
 つきましては,以下に医療機関の宿日直許可申請に関するFAQを掲載いたします。

※全文は以下のURL・QRコードにアクセスしてください
 https://www.kyoto.med.or.jp/member/work/pdf/20220729work.pdf

医療機関の宿日直許可申請に関するFAQ
(2022年7月29日ver.)

相談窓口による支援について

Q.相談窓口で実際にされている支援の内容はどのようなものですか。

A.現在のところ,多くは宿日直許可の手続きや許可基準に関するお問い合わせですので,こうしたお問い合わせに対して個別に回答させていただいています。また,ある程度申請の準備は整っていて労働基準監督署に相談したいが踏み出せないという場合もありますので,このような場合には,医療機関の意向を踏まえて所轄の労働基準監督署の担当をご紹介するといった支援もさせていただいています。

Q.労働基準監督署や医療勤務環境改善支援センターに相談する前に,本省の相談窓口に相談した方がいいのでしょうか。

A.宿日直許可に関する相談については,実際の申請先である所轄の労働基準監督署にご相談いただくことが基本ですが,医師の働き方改革に関する動向も十分に把握し,医療機関を支援する立場から様々な助言を身近なところで実施できる各都道府県の医療勤務環境改善支援センターに相談いただくことも重要と考えています。いずれにしても本省の相談窓口への相談を先行していただく必要はありませんので,医療機関の実情に応じた相談窓口を活用いただければと思います。

相談窓口に寄せられた相談を通じて,宿日直許可の取得につながった事例はありますか。

A.例えば,以前に宿日直許可の取得を断念した医療機関が再度の申請を行い,許可に至ったような事例も出ています。許可事例については,引き続き整理の上で周知できるように努めていきます。

宿日直許可と医師の働き方改革について

Q.医療法第16条に基づく宿直を行う場合には宿日直許可が必要なのでしょうか。

A.医療法第16条では病院に医師を宿直させなければならないと規定されています。この医療法第16条に基づく宿直を医師に行わせること自体に労働基準監督署長による宿日直許可は必要ありません。

Q.では,なぜ,宿日直許可の取得を検討する医療機関が増えているのでしょうか。

A.宿日直許可を受けた場合には,その許可の範囲で,労働基準法上の労働時間規制が適用除外となります。今後,令和6年4月から医師の時間外労働の上限規制がスタートしますが,

(1) 宿日直許可を受けた場合には,この上限規制との関係で労働時間とカウントされないこと,

(2) 勤務と勤務の間の休息時間(勤務間インターバル)との関係で,宿日直許可を受けた宿日直(9時間以上連続したもの)については休息時間として取り扱えること,

など,医師の労働時間や勤務シフトなどとの関係で重要な要素になることが考えられます。

宿日直許可の許可基準等について

Q.「救急」や「産科」では医師の宿日直許可を得ることはできないと聞いたのですが本当でしょうか。

A.「救急」や「産科」だからという理由で許可を取得できないということはありません。「救急」や「産科」で宿日直許可を得ることはできますし,実際に,「救急」や「産科」で宿日直許可を取得している事例があります。

Q.大学病院やそれに準ずるような大きな医療機関でも宿日直許可は取得できるのでしょうか。

A.様々な工夫で許可を取得することも可能です。医療機関内での医師同士の役割分担やタスクシフト/シェア,宿日直許可を取る時間帯等の工夫により取得しているケースもあるようです。

Q.地域で夜間の診療について輪番制を採用している場合に,輪番日以外の日であることを前提とした宿日直許可申請を行うことはできるのでしょうか。

A.可能です。実際に輪番日以外の日であることを前提とした許可がなされた事例があります。なお,輪番日と非輪番日で業務に大きな差がない場合には,非輪番日を前提とすることなく許可がなされることもありますので,こうした場合も含めて相談いただければと思います。

Q.準夜帯は一定数の患者が来ることが多いので,準夜帯以外の宿直時間だけで医師の宿日直許可を申請しようと考えていますが,このような時間帯を限定した宿日直許可の申請も可能でしょうか。

A.可能です。このほか,所属診療科,業務の種類(病棟宿日直業務のみ等)を限った申請を行うことが可能です。

Q.宿日直許可の回数については宿直週1回,日直月1回の原則には例外があると聞いていますが,実際に例外は認められているのでしょうか。

A.実際に例外が認められています。例えば,宿直週2回や日直月2回といった形で認められたケースがあります。
 特に,医師不足の地域の医療機関において,いわゆる連直(例えば,週末に土曜日の夜の宿直から日曜日昼の日直,日曜日の夜の宿直まで連続して行うような宿日直)の体制を確保するために遠方から非常勤の医師を確保する場合があるという実態を踏まえた回数の例外などが認められています。

Q.同じ週に本務先で週1回,兼業先で週1回の宿直を行うことが想定されています。本務先でも兼業先でもそれぞれ週1回の宿日直許可を受けていますが,同一の医師の場合,どちらか1回しか宿日直許可を受けた業務に従事することはできないのでしょうか。

A.宿日直許可の回数の限度(P.28のURL・QRコード 別添①「ポイント3」参照)は,医療機関ごと(本務先と兼業先それぞれ)で認められた回数を示していますので,医療機関ごとに認められた回数の範囲内で宿日直許可のある業務に従事することが可能です。つまり,このケースの場合,同じ週に本務先で1回,兼業先で1回,宿日直許可のある宿直の業務に従事することが可能です。

Q.医師の宿日直許可の回数の例外の可否が判断されるに当たって,労働基準法の労働時間に関する規定が適用されない経営者等の医師はどの程度の頻度で宿日直の業務に従事することが求められるのでしょうか。

A.ご指摘のような労働基準法の労働時間に関する規定が適用されない医師については,宿日直許可の取得は不要であり,実際に従事する宿日直の回数にも制限はありませんが,こうした医師以外の医師の宿日直許可の回数の例外の可否を判断するに当たって,過度に宿日直の業務に従事していただくことが前提となるものではありませんので,労働基準法の労働時間に関する規定が適用されない医師がどの程度の頻度で宿日直に従事できるのかについては,個別の事情に応じてよく労働基準監督署とご相談いただければと思います。

宿日直許可の申請手続きについて

Q.宿日直許可の申請から許可を得るまでの流れについて教えてください。

A.医療機関が労働基準監督署に許可申請書と必要な添付書類(以下「申請関係書類」といいます。)を提出した後,①書面での確認,②労働基準監督官による実地調査,を経て,許可相当と認められる場合に許可書が交付されます。(P.28のURL・QRコード 別添②)
 申請から許可(不許可)までの期間は,申請関係書類の不備の有無,実地調査の日程調整の状況,追加の確認事項の有無など,個別の事情によって異なります。時間的余裕を持った事前の相談及び申請を心掛けてください

Q.宿日直許可申請に当たってどのような書類を用意する必要がありますか。

A.申請関連書類については,あらかじめ一度所轄の労働基準監督署に確認いただきたいと考えていますが,必要な書類の標準的な例としては以下のとおりです。なお,これらはあくまで標準的な例であって,調査に必要な範囲で追加資料の提出を依頼する場合がありますので,あらかじめご了承ください。

・対象労働者の労働条件通知書,雇用契約書の写し

・宿日直勤務に従事する労働者ごとの,一定期間(例えば1か月)の宿直または日直勤務の従事回数がわかるもの(宿日直の当番表,シフト表など)

・宿日直勤務中に行われる業務が発生する頻度,その業務の内容と従事した時間について,一定期間の実績が分かる資料(業務日誌等)

・対象労働者全員の給与一覧表(労働基準法第37条の割増賃金計算の基礎となる賃金)及び宿日直手当額計算書

・事業場等を巡回する業務がある場合は,巡回場所全体とその順路を示す図面等

・宿直の場合は宿泊設備の概要がわかるもの

Q.許可申請書の記載例はないのでしょうか。

A.P.28のURL・QRコード 別添③を参照ください。あくまで記載例ですので,医療機関の実態に応じた記載を心掛けてください。

Q.申請関連書類の中で,「宿日直勤務に従事する労働者ごとの,一定期間(例えば1か月)の宿直または日直勤務の従事回数がわかるもの(宿日直の当番表,シフト表など)」,「宿日直勤務中に行われる業務が発生する頻度,その業務の内容と従事した時間について,一定期間の実績(または見込み)が分かる資料(業務日誌等)」については,1か月分を求められる場合と3か月分などより長い期間分を求められる場合があると聞きました。なぜ取扱いが異なるのでしょうか。

A.1か月分の資料を提出いただくことが基本と考えていますが,申請内容や実態を確認していく上で更なる確認が必要となる場合,その1か月が突発的な業務などで多忙になっている場合,などについては,3か月などより長い期間分の提出を求めることがあります。個別事情となりますので,あらかじめご了承ください。

Q.申請関連書類の「宿日直勤務中に行われる業務が発生する頻度,その業務の内容と従事した時間について,一定期間の実績がわかる資料」として業務日誌等とされていますが,他にどのような資料が想定されるのでしょうか。特定の様式があるのでしょうか。

A.業務日誌のほか,電子カルテのログ,などを想定しています。上述の内容がわかる資料であれば,医療機関の状況に応じて,なるべく負担がかからない既存の資料を活用いただく形でご用意いただければ問題ありません。
 なお,特定の様式はありませんが,任意で活用いただける様式としてP.28のURL・QRコード 別添④がありますので,こちらを活用して準備いただくことも可能です。なお,この様式を使わなければならないわけではありませんので,重ねてとなりますが,ご注意ください。

Q.非常勤の医師については,宿日直許可の対象とならないと聞きましたが本当でしょうか。

A.非常勤の医師についても宿日直許可の対象となります。

Q.申請関連書類の「対象労働者全員の給与一覧表(労働基準法第37条の割増賃金計算の基礎となる賃金)」について,申請対象の宿直をすべて非常勤の医師で対応している場合には提出しなくてよいのでしょうか。

A.そのとおりです。割増賃金の計算の基礎となる賃金がない場合には提出いただく必要はありません。なお,このような場合の手当額の算定について,賃金構造基本統計調査報告の医師の賃金から算出した日額の3分の1の額を参考に評価した事例があります。

Q.相当昔に宿日直許可を取得したはずなのですが,許可証を紛失してしまいました。どのように対応すればよいでしょうか。

A.許可証を紛失してしまった場合は,原則的には許可を取り直していただく必要があります。ただし,労働基準監督署に記録等が残っていることもありますので,労働基準監督署にご相談いただくことも可能です。

その他(申請の際の医療勤務環境改善支援センターによる支援等)

Q.労働基準監督署に宿日直許可の相談や申請をする際に,都道府県の医療勤務環境改善支援センターの職員さんたちに一緒に行ってもらうことはできますか。

A.可能です。厚生労働省から各都道府県の医療勤務環境改善支援センターに対して,医療機関からそのような依頼があった場合には,基本的に同行の対応をしていただくようにお願いしています。各都道府県の医療勤務環境改善支援センターの体制などもありますので,まずは各都道府県の医療勤務環境改善支援センターに相談してみてください。

Q.労働基準監督署は怖いイメージがあります。担当職員に優しく対応してもらえますか。

A.労働基準監督署に対しては,宿日直許可申請に関する相談があった場合には,医療機関の実情を踏まえて,寄り添いながら丁寧な対応をするよう指示をしています。引き続き,安心してご相談いただけるように努めていきます。なお,お困りの際には,医療勤務環境改善支援センターや本省の相談窓口も活用いただくことが可能です。

2022年9月1日号TOP